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大学・研究所にある論文を検索できる 「木材輸送におけるドライバーの労働環境に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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木材輸送におけるドライバーの労働環境に関する研究

中田 知沙 三重大学

2021.06.07

概要

林業における輸送は,重量や体積の大きい原木や木材を扱うことから危険であり,労働負担も大きいことが予想される。そのため,他の輸送に比べ特異な労働負担の課題が生じている可能性があるが,ほとんど現状が明らかにされていない。本研究では,木材輸送の中でも重量や体積の大きい原木を扱い,整備されていない林道を輸送することが多く,特に危険や負担があると考えられる原木輸送について,Web マップサービスを用いて労働負担の視点を加えた過剰伐採が懸念される人工林を推定し(1,2),さらにアンケートおよびインタビュー調査により原木輸送におけるドライバーの労働負担とヒヤリハット経験について明らかにした(3,4)。

(1) Web マップサービスを活用した人工林と木質バイオマス発電所間の輸送距離と時間の推定
本研究の目的は,人工林と木質バイオマス発電所を例に,Google Maps の経路検索機能を用い,森林内を含めた輸送距離と時間の推定システムを構築することであった。三重県を対象に解析を行った結果,林道の迂回係数を用いて森林内を含む輸送距離と時間の推定を行うシステムを構築することができた。三重県内の人工林から津市の木質バイオマス発電所までの輸送距離は 15.54~173.30km で,輸送時間は 0.54~5.86 時間であった。本システムで計算された距離と時間をもとに,しきい値(コストを考慮した 50km 以内,ドライバーの労働時間を考慮した往復 5 時間以内)を設定して推定した収穫可能面積は,以前の研究で使用された木質バイオマス発電所から 50km 半径内および輸送距離 8 時間以内で計算された結果よりも小さかった。本システムは,Google Maps の経路検索機能を用いて実際に近い状況の輸送距離と時間を推定でき,効率的な木材輸送とドライバーの労働管理に貢献すると考えられた。

(2) 木質バイオマス発電所の資源供給のために過剰伐採されやすい人工林の探索
本研究の目的は,Google Maps を活用して得た輸送距離と時間にもとづき,木質バイオマス発電所に資源を供給する際に過剰伐採の影響を受けやすい人工林を探索し,それらを可視化することであった。Google Maps の経路検索の目的地は三重県の 3 つのバイオマス発電所であり,出発地は 484 流域に分割された三重県内の人工林の重心とした。過剰伐採されやすい人工林は,コストを考慮した片道 50km 以内,ドライバーの労働時間を考慮した片道 2.5 時間以内の 2 つのしきい値にもとづいて探索した。その結果,人工林の多くが激しい収穫競争の対象となる可能性があることが示唆された。人工林の 55.07%は,2 または 3 つのバイオマス発電所から 50km 以内にあり,87.11%はそれらから片道 2.5 時間以内であった。木質バイオマス発電所から遠い南部から資源を調達することを検討する必要が考えられた。その際に,関係者は伐採計画を共有し,過剰伐採を監視することも必要である。

(3) 原木輸送ドライバーの労働環境と労働負担の現状
本研究の目的は,労働環境が大きく異なると考えられる専業ドライバーと非専業のドライバーの比較を通し,原木輸送を担うドライバーの労働環境と労働負担について明らかにすることであった。アンケートおよびインタビュー調査の回答者は,運送会社所属の専業ドライバーが 24 名,森林組合や林業会社所属のドライバーが 21 名であった。専業ドライバーの方が少し年齢は高く,原木輸送の経験が長かった。休憩日や時間に有意差は無かったが,専業ドライバーは,長距離(最大 700km/日)・長時間運転(18 時間/日)するドライバーがいた。専業ドライバーの方が大型のトラックを運転し,往復共に荷物の積載があり,積み降ろしともに行っていたドライバーが多かった。非専業のドライバーの方が大型車両の運転に対する疲れを感じている人が多かった。運転以外の仕事が主な仕事で,原木の輸送を難しいと感じていることが影響していると考えられた。両ドライバーともに休憩は十分と思っているが,車を止めて休憩する場所を探すのに苦労していることが明らかとなった。

(4) 原木輸送におけるドライバーのヒヤリハット経験の発生要因
研究の目的は,原木輸送を行っているドライバーのヒヤリハット経験について,アンケートおよびインタビュー調査を行い,その特徴とヒヤリハット経験の回数に影響を与える要因を明らかにすることであった。45 名から回答を得られ,原木輸送のドライバーの多くはヒヤリハット経験があり,ヒヤリハットの経験をしたことのあるドライバーの約 7 割は 3 年の間に 3 回以上のヒヤリハット経験があった。林道,直進中,カーブ,飛び出し,原木を運んでいるときにヒヤリハット経験をするドライバーが特に多かった。また,ヒヤリハット経験が増加する要因として,合流・分岐点,スピード超過,一般道(市街地),原木を運んでいるときが選択された。林道だけでなく,一般道においてもヒヤリハット経験をしたり,回数が増加する要因となっていたりすることから,原木輸送では林道と一般道を行き来することを考慮した注意喚起の看板の設置やドライバーの休息場所を確保するなどの安全対策が必要と考えられた。

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