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Evolution reducing downstream displacement in juvenile salmonids [an abstract of entire text]

山田, 寛之 北海道大学

2023.03.23

概要

Title

Author(s)

Citation

Issue Date

Doc URL

Evolution reducing downstream displacement in juvenile salmonids [an abstract of entire text]

山田, 寛之

北海道大学. 博士(水産科学) 甲第15250号

2023-03-23

http://hdl.handle.net/2115/89849

Type

theses (doctoral - abstract of entire text)

Note

この博士論文全文の閲覧方法については、以下のサイトをご参照ください。

Note(URL)

File Information

https://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/copy-guides/

Hiroyuki_Yamada_summary.pdf

Instructions for use

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

学位論文内容の要約
博士の専攻分野の名称:博士(水産科学)

氏名:山







学 位 論 文 題 目
Evolution reducing downstream displacement in juvenile salmonids
(サケ科魚類の稚魚における流下を抑制する進化)
【背景】
生物は自身の生息地から能動的あるいは受動的に移動し、分散することがある。生物の移動・分散は動
物だけではなく植物でも見られる極めて普遍的な現象である。そして、生物の移動・分散における距離
や頻度を決定する要因には、各個体の行動・形態形質も含まれる。例えば、大胆な行動傾向をもつ個体
は臆病な個体よりも新奇環境に対する探索性が強いので、その生涯の内により長い距離を移動・分散す
るかもしれない。また、小型個体は遊泳力や基質への定着力が弱いため、大型個体よりも水流に流され
長距離分散しやすいという可能性も想定できる。このような表現型依存的な移動・分散は、例えば分布
域の縁辺部に位置する局所個体群における、長距離分散しやすい形質を持つ個体の頻度を高めるだろう。
そしてそのような局所個体群では、同類交配が発生し、従来以上に移動・分散に長けた新たな形質が進
化するかもしれない。このような移動距離や分散の発生率の差によって生じる小進化メカニズムを空間
的選別 (spatial sorting) という。生物の移動・分散は、生物の適応度(生存率および繁殖成功度の積算値)
とは独立した概念である。したがって空間的選別は、適応度の差に基づいて作用する自然淘汰とは本質
的に異なる。空間的選別は、生物個体がその生息地に長期存続するための機能形質の進化を引き起こす
可能性があるが、移動・分散に特段の方向性がない場合は、空間的選別による進化は自然淘汰による進
化ほど長期間持続しないと考えられてきた。
流下とは、河川生物が水流によって自身の生息流域から下流域へと受動的に移動・分散する現象であ
る。流下はしばしば表現型依存的に発生するため、水流に対する抵抗力が低い個体を選択的に下流域へ
除去する空間的選別を生む可能性がある。流下による空間的選別は、流下した個体とそれらの子孫の遡
上行動によって打ち消される場合もある。しかし、生物が遡上できないほど高い滝や堰堤などの上流域
に存続している個体群では、流下による空間的選別の効果が長期的に累積するため、流下を回避・抑制
する機能形質 (流下回避形質) の獲得に繋がる進化が期待できる。
サケ科魚類は移動障壁の上流域に隔離個体群を存続させることが知られている代表的な魚種であり、
流下に影響を与える行動・形態形質とその遺伝基盤に関する基礎的知見が蓄積している。本研究では、
サケ科魚類の隔離個体群を対象に、流下による空間的選別の進化圧、および流下回避形質の個体群間変
異を検証した。本研究では、遊泳力が未発達であり、水流に対して脆弱な稚魚を研究対象とした。
【方法・結果】
本論文では、日本各地に隔離個体群を形成する 2 種のサケ科魚類 (アマゴ Oncorhynchus masou ishikawae,
イワナ Salvelinus leucomaenis) を対象に研究を行った。いずれの研究でも、流下による空間的選別の実
験的検証・記載、および隔離個体群と隔離を受けていない個体群 (開放個体群) の間における、流下回
避形質の個体群間比較を行った。
第 2 章では多雨で増水が頻発する紀伊半島南部のアマゴを対象に、野外での個体群間比較、自然増水
を活用した野外実験、遺伝基盤を検証するための共通環境実験を行った。この研究では、魚類の瞬発的

な遊泳力を高める体高 (魚体の高さ) に注目した。野外調査の結果、一部の隔離個体群の稚魚が高い体
高を持つことが分かった。また、共通環境で育成した稚魚にも同様の個体群間変異が観察され、体高の
遺伝基盤が示唆された。さらに、増水前に標識魚を障壁上流域へ放流し、増水後に障壁の上下の流域で
回収する野外実験を行った結果、体高が高い稚魚ほど増水時の流下を回避し、障壁上流域へ残存する確
率が高いことがわかった。これらの結果から、増水時の流下による空間的選別が、アマゴの稚魚の流下
回避形質の進化に寄与しうることが一貫して支持された。
第 3 章では、北海道南部に生息するイワナの稚魚を対象に、平常時の水流による流下の進化圧を検証
した。一般に遊泳力が低い河川動物では、活動性が高い個体ほど偶発的な流下リスクが高いことが知ら
れている。そのため、ここでは稚魚が水底に着底し不動状態となる station-holding 行動 (SH 行動) に注
目した。この研究では、実験日の早朝に野外採捕した稚魚を人工水路に放流し、5 時間後に回収する屋
外実験を行った。水路内の流量は、本種の生息地のものと同程度に設定されおり、平常時の水流が再現
されていた。実験日の翌日に、各個体を個別に行動観察・体サイズ測定し、SH 行動と体サイズが稚魚
の流下に与える影響を解析した。その結果、SH 行動を示す稚魚では、その行動を示さない稚魚よりも
放流地点から流下する確率が低いことが分かり、SH 行動の流下回避機能が示唆された。一方、流下し
た稚魚では、SH 行動を示す稚魚では大きい個体ほど、逆に SH 行動を示さない稚魚では小さい個体ほど
流下距離が長くなることがわかり、流下距離を短く抑える稚魚のパフォーマンスが、行動と形態の形質
間相互作用によって規定されることが示唆された。またこの結果は、小型の稚魚では SH 行動をとるこ
とで流下距離を短く抑えられることも意味している。したがって、SH 行動の流下回避機能は、小型の
稚魚で特に重要であることが示唆された。
第 4 章では、北海道南部に生息するイワナの稚魚を対象に、SH 行動の個体群間変異を 2 つの地域で
検証した。この研究では堰堤上流の隔離個体群と開放個体群から野外採捕された稚魚を対象に、第 3 章
と同様の方法で行動観察および体サイズ測定を行い、体サイズを統計的に考慮した上で SH 行動を個体
群間比較した。その結果、両地域の隔離個体群の稚魚は、一貫して SH 行動をとる時間が長く、小型の
稚魚ほどより長時間の SH 行動を示す傾向を持つことが判明した。これらの結果は、第 3 章の実験結果
と整合性があり、観察された個体群間変異が、流下による空間的選別の進化圧によって生み出され維持
されていることを示唆するものであった。
【総合考察】
本論文は流下が空間的選別を引き起こし、流下回避形質の進化・維持に寄与しうることを、野外調査と
野外実験から多面的に実証したものである。空間的選別の先行研究では、主に陸域動物の能動的な移
動・分散に基づくメカニズムに目が向けられてきた。具体的には、生息域を拡大させている種において、
分布域の縁辺部に分散力の高い個体が能動的に集合・同類交配することで、高度な分散形質が進化する
というものである。水圏生物の流下による空間的選別を検証したのは、本研究が初めてである。
水圏生物の流下回避形質は、従来、流下した個体が被る適応度上のコスト (流下時の死亡など) に起
因する自然淘汰の産物であると考えられてきた。これに対して本論文は、流下による空間的選別もそれ
らの機能形質を進化させ維持しうるという新たな代替仮説を提案している。この進化仮説は、海洋生物
の海流や波による受動的な移動・分散を回避するための機能形質などにも適用できる可能性があり、河
川系以外の様々な水圏生物の進化を理解する上で役立つ可能性がある。
流下による空間的選別は、自身の生息地に留まる能力が高い個体の頻度を高めるように作用する。そ
のため、このメカニズムが進化を駆動した場合、生物は、個体の適応度ではなく、個体の生息地への存
続性を高めるための機能形質を獲得することになる。このような究極的説明は、従来の進化生態学が想
定してこなかったものであり、注目に値すると私は考えている。近年の理論研究では、流下による空間
的選別が移動障壁のない流域においても、河川生物の進化を駆動しうることが示されており、空間的選
別によって進化した機能形質の存在は十分に期待できる。今後、この可能性を検証する更なる研究が求
められる。 ...

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