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大学・研究所にある論文を検索できる 「A study on geographical characteristics of respiratory metabolism of chub mackerel (Scomber japonicus) and its effect on early life history based on modelling approaches」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A study on geographical characteristics of respiratory metabolism of chub mackerel (Scomber japonicus) and its effect on early life history based on modelling approaches

郭, 晨穎 東京大学 DOI:10.15083/0002006884

2023.03.24

概要























晨穎

本研究論文は、太平洋沿岸域に広く分布するマサバ(Scomber japonicus)に
着目し、黒潮の影響を受け比較的温暖な日本近海に生息する北西太平洋系群と、
湧昇の影響を受け比較的寒冷なカリフォルニア海流域に生息する北東太平洋系
群の二つの系群について、遊泳能力および呼吸代謝特性を室内実験から調べ、
その呼吸代謝特性をもとにマサバの成長-回遊モデルを構築して、マサバの成
長と海洋環境との比較を行った研究である。
マサバは、多獲性小型浮魚類の一種であり、重要な水産資源であるとともに
低次栄養段階生態系と高次捕食者を繋ぐ重要な役割を担っている。一方で、多
獲性小型浮魚類においては、数十年規模で優占する魚種が入れ替わる魚種交替
現象があり、そのメカニズムの解明が求められている。水温、海流、餌料環境
などの海洋環境の重要性に加え、種間競合や高次捕食者による捕食圧や漁業に
伴う漁獲圧などの関連性が指摘されているものの、各要因の定量的な対比を行
った研究は限定的でメカニズムは不明な点が多い。マサバは、成長段階に伴い
プランクトン食から魚食性になり、他の小型浮魚類などの捕食者に変化する特
徴も持つ。また、前述の通り太平洋沿岸地域に広く分布し、同じ緯度帯でも異
なる水温帯に生息する。マサバは外温動物であり、水温環境が異なることで、
呼吸代謝を通じて成長が変化し、両海域での環境変動に対する成長応答様式が
異なる可能性がある。本論文ではこの点に注目し、両海域におけるマサバの呼
吸代謝特性を測定し、モデルに組み込み、数値実験を展開することで、マサバ
の環境に対する応答特性を調べ、以下の主要な成果を示した。
第一の主要な成果は、室内実験によるマサバ両系群の遊泳能力および呼吸代
謝特性の解明である。先行研究として、北東太平洋系群について生息水温のう
ち比較的高水温環境における遊泳能力および呼吸代謝特性が測定されていたが、
低水温環境における知見が不足していた。これに対し、カリフォルニア海流域
で捕獲した北東太平洋系群の天然個体を用いた室内実験を実施し、先行研究の
データとあわせ、遊泳能力および呼吸代謝特性を明らかにした。さらに、北西

太平洋系群についても、三陸沿岸で天然個体を捕獲し、室内実験を実施した。
初期生活史段階の天然個体の捕獲は極めて困難であったため、九州西方および
瀬戸内海にて飼育している養殖個体を使用した実験を実施し、世界で初めて初
期生活史段階の呼吸代謝特性の測定に成功した。マサバは、外的刺激に敏感に
反応するため、室内実験中に混乱し、測定が失敗に終わることも多い。このた
め、両系群で共通した水温、体長範囲を網羅した実験は実施できなかったもの
の、小型浮魚類としては世界最高位の試料数の呼吸代謝測定を実現した。両系
群の比較から、遊泳能力には顕著な差異はない一方、北西太平洋系群は北東太
平洋系群よりも呼吸代謝の体重および水温依存性が低く、高水温下でも呼吸代
謝によるエネルギー消費を抑制できることを示した。異なる水温環境下に生息
する小型浮魚類の系群間で、呼吸代謝特性に差異があることを示した重要な知
見である。
第二の主要な成果は、両海域の個体が成魚になるまでに必要とする呼吸代謝
エネルギーの比較である。成長段階において回遊経路上で経験する水温環境を
上述の呼吸代謝特性に当てはめ、両系群が必要とする呼吸代謝量の比較を行っ
た。その結果、北西太平洋系群の方が高水温を経験するものの、低い水温依存
性によって呼吸代謝を抑制するため、両系群とも成魚までに必要とする呼吸代
謝エネルギーは同等であることがわかった。後述する成長-回遊モデルを用い
た比較実験からも同様の結論が導かれた。この結果は、マサバが生息水温にあ
わせて呼吸代謝特性を変化させ、消費エネルギーを抑制している可能性を示す。
第三の主要な成果は、マサバ成長-回遊モデルの構築である。様々な環境要
因の影響を定量的に比較するため、初めてマサバの成長-回遊モデルを構築し
た。北西太平洋系群について 15 年間に渡る数値実験を実施し、黒潮流軸の沿岸
側あるいは北側に位置することが高成長に重要な条件であることを示した。ま
た、仔魚期には水温と餌料の両方が成長に重要であるのに対し、成長が進むと
餌料の重要性が増大することを定量的に示した。この結果は、断片的な野外観
測結果を支持するもので、マサバ北西太平洋系群の成長変動、ひいては加入量
変動への理解を高めるものである。
これらの研究結果は、学術上応用上寄与することが少なくない。よって、審
査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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