Hepatitis C virus enhances Rubicon expression, leading to autophagy inhibition and intracellular innate immune activation
概要
〔目的(Purpose)〕
2011年にDirect Acting Antivial (DAA)製剤が開発されて以降、内服によるC型肝炎(HCV)の治療が進み、90%以上の症例でSVRが達成されるようになった。しかし、DAA製剤による治療は薬剤耐性が出現する可能性があり、治療不成功例では更に治療困難な状況に陥ってしまうため、DAA製剤以外の治療法の開発は重要である。オートファジーは細胞分解系の一つであり、細胞の恒常性を維持する細胞保護的な作用が近年報告されている。オートファジーはHCV生活感の様々な段階で何らかの関与をしているという報告があり、また肝細胞にHCVが感染することでLC3-IIが増加すると言った報告があるが、HCVウイルス感染が肝細胞オートファジーとHCV複製に与える影響は不明な点が多いため、本検討を行った。
〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
肝癌細胞株にHCVウイルスを感染させると、オートファジーは後期段階で抑制され、Rubiconの発現が亢進した。また、HCV感染細胞でRubiconをノックダウンするとオートファジーが亢進したため、HCV感染によるオートファジー抑制にはRubiconが関与していることが示唆された。次に、HCVレプリコンでRubiconをノックダウンするとI型インターフェロン(IFN)関連遺伝子の発現が抑制され、HCV複製が亢進した。また、HCVレプリコンでRubiconを過剰発現するとIFN関連遺伝子の発現が亢進し、HCV複製が抑制された。HCVレプリコンに後期オートファジーの阻害剤であるBafilomycinA1またはクロロキンを投与すると、オートファジーが抑制され、1型IFN経路が活性化し、HCV複製が抑制された。一方、HCVレプリコンでAtg7をノックアウトするとオートファジーが前期段階で阻害され、HCV複製は抑制されるが、1型IFN経路は活性化しなかった。ヒト化肝臓キメラマウスにHCV患者由来血清を投与し、HCVを感染させると、肝細胞でのRubiconの発現が亢進し、1型IFN経路が活性化した。また、HCV治療薬でマウスのHCVを排除すると、HCV感染によるRubiconの増加が軽減し、I型IFN経路の活性化が軽減された。C型慢性肝炎患者の肝臓ではRubicon及びIFN刺激遺伝子の発現レベルは非B非C型肝炎患者の肝臓より高かった。
〔総括(Conclusion)〕
HCV感染はRubiconを増加させ、肝細胞のオートファジーを後期段階で抑制し、細胞内免疫を活性化させた。Rubiconの誘導は細胞内免疫応答の活性化を介してHCV複製に関与している。