リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on the immunotherapy targeting immune checkpoint molecule CTLA-4 in veterinary medicine [an abstract of entire text]」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Studies on the immunotherapy targeting immune checkpoint molecule CTLA-4 in veterinary medicine [an abstract of entire text]

渡, 慧 北海道大学

2022.03.24

概要

免疫応答は、ウイルスや細菌などの微生物を排除することや、腫瘍などの非自己を攻撃することで生体にとって危険とされる異物を取り除き、生体内の恒常性を維持する反応である。しかし、免疫反応が活性化した状態で維持されると、正常な細胞や組織が攻撃の対象となるなど生体にとって悪影響を及ぼすことになる。このような状態に陥らないために重要な役割を果たしているのが、Cytotoxic Tlymphocyte antigen-4(CTLA-4)である。CTLA-4は、制御性T細胞や活性化したエフェクターT細胞に発現しており、CD80/CD86をリガンドとする免疫チェックポイント因子であり、T細胞の活性化に必要な共刺激シグナルを伝達するCD28とCD80/CD86の結合を阻害することが知られている。慢性疾患ではCTLA-4の発現が上昇し、宿主の免疫反応を抑制することがヒトやマウスの研究で明らかとなっている。また他の免疫チェックポイント因子であるprogrammed death-1(PD-1)やPD-ligand1(PD-L1)などの発現も慢性疾患で上昇することが知られている。PD-1はT細胞に発現し、そのリガンドであるPD-L1と結合することでT細胞の免疫応答を抑制する。獣医領域においては、ウシの慢性感染症であるbovine leukemia virus(BLV)感染症でPD-1およびPD-L1の発現が上昇し、病態進行に関与することが報告されている。また、イヌの腫瘍疾患である悪性黒色腫においては、がん細胞上のPD-L1の発現が上昇していることも明らかになっている。このように免疫チェックポイント因子は動物の慢性疾患の病態進行にも深く関与している。

この免疫チェックポイント因子とそのリガンドの結合は、特異的な抗体により阻害することが可能である。ヒトでは免疫チェックポイント因子を標的とした抗体が臨床応用されており、有意な治療効果が認められている。獣医療では、PD-L1を標的とした抗体療法が報告されており、BLV感染症およびイヌ悪性黒色腫に対して有意な治療効果が認められている。しかし一方で、治療効果が認められない場合も報告されており、これは慢性疾患において、病態進行とともに複数種類の免疫チェックポイント因子の発現が上昇することに起因する。BLV感染症では病態進行とともに制御性T細胞数が上昇し、CTLA-4が高発現していることが明らかとなっている。ヒトにおいて、悪性黒色腫に対する抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体を併用した抗体併用療法は単剤よりも高い治療効果を示すことが報告されている。しかし、ウシやイヌではCTLA-4に関する研究は乏しく、治療に応用可能な抗体が存在しない。そこで本研究では、ウシおよびイヌCTLA-4に対する特異的な治療用抗体を樹立して、その抗体の詳細な機能解析を行った。

第1章:ウシのCTLA-4の免疫抑制機能を明らかにするためにウシCTLA-4組換えタンパク質(CTLA-4-Ig)を作製した。CTLA-4-Igは健康なウシから分離した末梢血単核球(PBMCs)からのIFN-γ産生を有意に低下させ、ウシCTLA-4がヒトやマウス同様に免疫抑制機能を有していることが明らかとなった。次にCTLA-4-Igをマウスに免疫して、抗ウシCTLA-4モノクローナル抗体4G2-A3及び4C2-D9を樹立した。4G2-A3はCTLA-4とCD80/CD86との結合を阻害し、PBMCsを用いた実験ではIFN-γの産生量を有意に上昇させた。しかし、抗PD-L1抗体との併用では、単剤よりも有意な免疫活性化能が認められなかったため、より強い結合阻害能を有するクローン4C2-D9を別のスクリーニング法を用いて樹立した。4C2-D9と抗PD-L1抗体との併用は、単剤群と比較して、有意にPBMCからのinterleukin-2(IL-2)産生を上昇させ、BLV抗原特異的なTh1応答を誘導して抗ウイルス効果も認められた。4C2-D9はマウス抗体であるため、臨床への応用には、アナフィラキシーショックなどの副作用を誘発することや抗体の血中半減期が短くなるなどの問題点がある。そこで4C2-D9可変領域とウシ由来の定常領域を組合わせたキメラ抗体(4C2-D9chAb)を樹立した。4C2-D9chAbはもとの4C2-D9と同様の結合阻害能を有しており、抗PD-L1キメラ抗体との併用では、単剤群と比較して、健康なウシ由来PBMCからのIL-2産生を有意に上昇させた。以上より、4C2-D9chAbと抗PD-L1抗体の併用は、単剤よりも免疫応答を活性化させることで、免疫チェックポイント因子が関与しているウシの慢性感染症の新規治療法となりうることが示唆された。

第2章:第1章で用いたスクリーニング法により、抗イヌCTLA-4モノクローナル抗体1C5-E5及び2G2-G8を樹立した。樹立した抗体を用いて悪性黒色腫罹患犬におけるCTLA-4の発現解析を行った結果、罹患犬ではCTLA-4+CD4+/CD8+細胞の割合が上昇しているが明らかになった。次に高い結合阻害能を示した1C5-E5を用いて抗イヌCTLA-4イヌ化抗体(ca1C5)を樹立した。樹立したca1C5は1C5-E5と同様の結合阻害能を有しており、イヌPBMCからのTh1サイトカインの産生を有意に上昇させた。次にca1C5安定発現細胞を樹立して大量培養を行った結果、ca1C5-c50を得た。ca1C5-c50は1C5-E5と同程度の結合能や結合阻害能を有しており、単剤ではイヌのPBMCからのTh1サイトカインの産生量を有意に上昇させた。またca1C5-c50は抗イヌPD-L1キメラ抗体との併用により、抗イヌPD-L1キメラ抗体の単剤と比較して、IL-2およびtumor necrosis factor-αの産生を有意に上昇させた。さらにca1C5-c50はAntibody Dependent Cellular Cytotoxicity活性を示し、標的細胞の生存率を有意に低下させた。最後にca1C5-c50をビーグルに投与して、抗体の安全性を検討した。血中抗体濃度はヒトの臨床研究と同程度の濃度が維持されており、抗体による副作用は認められなかった。以上より、ca1C5-c50は抗イヌPD-L1キメラ抗体との併用はイヌの腫瘍疾患の新規治療法となりうることが示唆された。

本研究では、獣医領域の慢性疾患におけるCTLA-4の関与を明らかにし、結合阻害能を有する特異的な抗体を樹立して、免疫応答を活性化させることを示した。このことから獣医療において、CTLA-4経路とPD-1/PD-L1経路を標的にした抗体併用療法は、新規治療法となりうることを示した。今後はウシやイヌの慢性疾患におけるCTLA-4の発現解析を行うとともに、慢性疾患に罹患しているウシやイヌに抗体併用療法を行うことで治療効果を検討することが必要である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る