インターフェロンγ-STAT1-ERK経路はドキソルビシン誘発性心筋細胞死に対するナチュラルキラーT細胞の保護効果を媒介する
概要
九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
IFN-γ-STAT1-ERK Pathway Mediates Protective
Effects of Invariant Natural Killer T Cells
Against Doxorubicin-Induced Cardiomyocyte Death
佐田, 政司
https://hdl.handle.net/2324/7165092
出版情報:Kyushu University, 2023, 博士(医学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Creative Commons Attribution-NonCommercial-NoDerivatives International
氏 名:
佐田 政司
論文名:
IFN-γ-STAT1-ERK Pathway Mediates Protective Effects of Invariant Natural
Killer T Cells Against Doxorubicin-Induced Cardiomyocyte Death
(インターフェロンγ-STAT1-ERK経路はドキソルビシン誘発性心筋細胞死に対す
るナチュラルキラーT細胞の保護効果を媒介する)
区 分:
甲
論 文 内 容 の 要 旨
ドキソルビシン(DOX)心筋症は予後不良な疾患で、現状では有効な治療法が存在しない。これまでこ
の疾患の病態に関して多くの分子的機序が報告されているが、その中で心筋の炎症が深く関与してい
る。そこで我々は炎症を制御するナチュラルキラーT (NKT) 細胞に着目した。NKT細胞の大部分を占め
る不変なT細胞受容体を有するNKT細胞をinvariant NKT (iNKT) 細胞という。iNKT細胞は抗原提示細胞
から提示された糖脂質を認識することで活性化し、多量のTh1およびTh2サイトカインを分泌し、さま
ざまなサイトカインを制御する。αガラクトシルセラミド (αGC) は特異的にiNKT細胞を活性化する
薬剤である。過去の研究では、αGCによるiNKT細胞の活性化が心筋梗塞後のリモデリングや虚血再灌
流後の梗塞サイズを抑制することが報告されたが、その保護的効果の分子的機序は解明されていな
い。我々はDOX心筋症に対するαGCによるiNKT細胞の活性化の有効性を検証し、有効であった場合に保
護的効果の分子的機序を解明することとした。DOX心筋症モデルマウスにαGCを投与すると、DOX心筋
でのiNKT細胞は増加し、DOXによる心機能障害と心筋細胞死が減弱した。我々の予想に反して、αGCは
DOX心筋での炎症を抑制しなかった。αGC投与によってDOX心筋でのiNKT細胞増加に伴ってインター
フェロンγ (IFNγ)の発現が増加しており、IFNγが保護的効果の中心的な役割を果たしていると考
え、IFNγの下流シグナルであるシグナル転写因子活性化因子1(STAT1)および細胞外シグナル制御キ
ナーゼ(ERK)のリン酸化が増加していた。IFNγ中和抗体を投与すると、αGCのDOX心筋症に対する有
益な効果が打ち消された。DOX誘発性心筋細胞において、IFNγはERK活性化を通して保護的であった。
これらの知見によって、IFN-γ-STAT1-ERK経路がiNKT細胞のDOX心筋症に対する保護効果を媒介するこ
とを示した。