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大学・研究所にある論文を検索できる 「Identification of Biomarkers for Non–small-cell Lung Cancer Patients Treated With an Immune Checkpoint Inhibitor」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Identification of Biomarkers for Non–small-cell Lung Cancer Patients Treated With an Immune Checkpoint Inhibitor

久保 創介 横浜市立大学

2022.03.25

概要

1. 序論
本邦において,原発性肺癌は悪性腫瘍の中で死亡者数が最も多く,予後不良な疾患である.その理由の一つは,原発性肺癌は診断時に既に進行期であることが多く,根治が期待出来る外科治療の適応外であることがあり,進行期肺癌の治療成績の向上が求められている.近年,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬(Immune checkpoint inhibitor : ICI)といっ た治療方法が保険承認となり,進行期の非小細胞肺癌(Non-small cell lung cancer : NSCLC) の治療成績は一部で改善した.

ICI による治療では,長期に病勢をコントロールできる症例も一部で認めるようになった. 一方で,ICIが全く奏効しない症例も多く存在する.また,免疫関連有害事象(immune related adverse event : irAE)と呼ばれる,自己に対する免疫の異常な活性化により発症する有害事 象が一定の割合で出現し,致命的になりうることや(Das et al., 2019),ICI の薬価が非常に 高額であることも臨床上大きな課題となっている.そのため,ICI の効果を適切に予測でき るバイオマーカーが求められている.既存のバイオマーカーとして,腫瘍組織における Programmed cell death ligand 1(PD-L1)が最も使用されている.しかし,PD-L1 高発現 (≧50%)の患者においてもペムブロリズマブ単剤の奏効率は 44.8%に留まっている(Reck et al., 2016).また,原発性肺癌の組織内において PD-L1 発現が不均一であることや,免疫 染色に使用する PD-L1 抗体試薬の種類により PD-L1 発現率の結果に違いが生じることも 問題点として挙げられる.

血液検査は日常診療で頻繁に行われる.腫瘍組織を用いた検体検査よりも侵襲性が低く,繰り返し採取できることや,腫瘍不均一性による結果の差異が生じにくいことが利点として挙げられる.とりわけ,特殊な機器や手法を用いない,日常診療で簡便に確認できる血液 検査項目を用いて予後予測が可能になると,より多くの患者が恩恵を得られる.

本研究では,ICI を投与した症例において,日常診療で収集する患者背景や血液検査項目 が新たなバイオマーカーとなりうるか検討を行った.

2. 方法
2016 年 1 月から 2018 年 12 月の間に,横浜市立大学附属市民総合医療センターおよび横 浜市立大学附属病院に入院した全ての再発・進行 NSCLC 患者を対象とした.その中で,ニ ボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブのいずれかの ICI を投与された 18 歳以上の 患者を解析対象とした.患者背景,ICI 投与前の血液検査,2 コース目投与日の血液検査を 解析対象とし,無増悪生存期間(Progression free survival : PFS)との関連を,単変量解析お よび多変量解析で検討を行った.本研究は横浜市立大学倫理委員会によって承認され(承認 番号:B191200044),ヘルシンキ宣言および人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 に準拠しておこなった.

3. 結果
解析対象となった 110 例において,年齢の中央値は 70 歳(範囲:34~82 歳),男性は 85 例,女性は 25 例であった.PD-L1 発現率 50%以上/1~49%/1%未満/不明の患者はそれぞ れ 36/18/16/40 例であった.ドライバー遺伝子変異陽性肺癌は 11 例(上皮成長因子受容体 (Epithelial growth factor receptor : EGFR)遺伝子変異陽性 10 例,未分化リンパ腫キナーゼ (Anaplastic lymphoma kinase : ALK)遺伝子転座陽性 1 例),ドライバー遺伝子変異陰性肺 癌は 99 例であった.PFS と関連する項目を検証するため,カプランマイヤー法により生存 曲線を作成し,ログランク検定を行った.その結果,Performance status (PS) 0-1(vs. 2-3, p < 0.0001),PD-L1 発現率 ≧ 50%(vs. 0-49%または不明,p = 0.0303),ドライバー遺 伝子変異陰性(vs. 陽性,p = 0.0002),喫煙歴(pack-year) > 20(vs. ≦20,p = 0.0403), 肝転移なし(vs. 肝転移あり,p = 0.0453),免疫関連有害事象(Immune-related adverse event : irAE)あり(vs. なし,p < 0.0001),乳酸脱水素酵素(Lactate dehydrogenase : LDH)低値(vs. LDH 高値,p = 0.0425),C 反応性蛋白(C-reactive protein : CRP)低値(vs. CRP 高値,p = 0.045),治療後好中球数低値(vs. 治療後好中球数高値,p = 0.0093),治療後好中球/リン パ球比(Neutrophil-lymphocyte ratio : NLR) 低値(vs. 治療後 NLR 高値,p=0.0121)であ ると PFS が有意に延長していた.また,PS,PD-L1 発現率,ドライバー遺伝子,irAE,治 療後好中球数の 5 項目を用いて,Cox 比例ハザード解析をおこなったところ,PS 0-1,ドラ イバー遺伝子変異なし,irAE あり,治療後好中球数低値が PFS と有意に関連していた(PS: HR 0.41,95%CI 0.19-0.88,p = 0.031,ドライバー遺伝子変異陽性:HR 0.29, 95%CI 0.12-0.67, p = 0.008,irAE あり : HR 0.43, 95%CI 0.24-0.76,p = 0.003, 治療後好中球数 ≤4800 : HR 0.54,95%CI 0.32-0.90,p = 0.018).

4. 考察
好中球は循環血液中に流れる白血球の中で最も豊富に存在している細胞であり,自然免 疫において重要な役割を果たすが,腫瘍免疫においても深く関わっていることが明らかに なってきている.特に,腫瘍関連好中球(Tumor-associated neutrophil : TAN)は,腫瘍微小 環境において腫瘍の血管新生や転移を促進する.また,腫瘍組織からは顆粒球コロニー刺激 因子(Granulocyte colony-stimulating factor : G-CSF)や顆粒球マクロファージコロニー刺激 因子(Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor : GM-CSF)が放出され,末梢血好 中球数の増加,および免疫抑制に深く関わる MDSC の産生を促すことが報告されている (Grecian et al., 2018).さらに,腫瘍微小環境に存在する TAN は,末梢血好中球数と相関 することが報告されている(Soda et al., 2019, Matsumoto et al., 2017).以上より,末梢血好 中球数の増加は,TAN の増加もしくは腫瘍組織からの G-CSF や GM-CSF 産生の増加と関 連することが示唆されるため,宿主免疫の低下を反映している可能性が考えられる.末梢血 白血球分画を用いたバイオマーカーとして,ICI 治療前の NLR や好中球数/(白血球数-好中 球数) (derived NLR : dNLR)が効果予測因子として有用であることが今まで報告されている (Li et al., 2020, Mezquita et al, 2018).一方で,ICI 投与後の NLR または好中球数単独が バイオマーカーとして報告されているものは極めて少ない.本研究では,100 例を超える NSCLC患者を対象とし,ICI投与後2 週または3週と早期に採取された血液検査において, 末梢血好中球数がバイオマーカーとして有用であることを新たに見出した.治療後の末梢 血好中球数を確認することで,ICI の奏効していない症例を早期に発見できる可能性が考え られ,日常診療において有用なバイオマーカーである可能性が示唆された.

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参考文献

Das S, et al. (2019), Immune-related adverse events and anti-tumor efficacy of immune checkpoint inhibitors, J Immunother Cancer, 7, 306.

Grecian R, et al. (2018), The role of neutrophils in cancer, Br Med Bull. 128, 5-14.

Li Y, et al. (2020), Pretreatment neutrophil-to-lymphocyte ratio (NLR) may predict the outcomes of advanced non-small-cell lung cancer (NSCLC) patients treated with immune checkpoint inhibitors (ICIs), Front Oncol, 10, 654.

Matsumoto Y, et al. (2017), The significance of tumor-associated neutrophil density in uterine cervical cancer treated with definitive radiotherapy. Gynecol Oncol, 145:469-75.

Mezquita L, et al. (2018), Association of the lung immune prognostic index with immune checkpoint inhibitor outcomes in patients with advanced non-small cell lung cancer. JAMA oncology, 4, 351-57.

Reck M, et al. (2016), Pembrolizumab versus chemotherapy for PD-L1–positive non–smallcell lung cancer, N Engl J Med, 375, 1823-33.

Soda H, et al. (2019), Dynamics of blood neutrophil-related indices during nivolumab treatment may be associated with response to salvage chemotherapy for non-small cell lung cancer: A hypothesis-generating study. Thoracic Cancer, 10, 341–6.

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