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大学・研究所にある論文を検索できる 「A simple method for the determination of glyphosate, glufosinate and their metabolites in biological specimen by liquid chromatography/tandem mass spectrometry (LC/MS/MS): An application for forensic toxicology」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A simple method for the determination of glyphosate, glufosinate and their metabolites in biological specimen by liquid chromatography/tandem mass spectrometry (LC/MS/MS): An application for forensic toxicology

大原, 倫美 名古屋大学

2021.07.16

概要

【緒言】
 グリホサート(GLYP)およびグルホシネート(GLUF)は含リンアミノ酸系除草剤であり、世界中で広く使用されている。近年、日本においては、農薬である有機リン剤やパラコートによる中毒死亡例が著名に減少してきている一方で、GLYP や GLUF による中毒死亡例は、ほぼ横ばいが続いており、中毒起因物質としての重要性は大きい。 GLYP 及び GLUF とその代謝物は、高極性で揮発性が低いため、法医実務で汎用されている液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いた場合、通常の LC 条件では分離が困難であり、何らかの誘導体化が必要である。また、精製も含め、煩雑な前処理を必要とする。これらの点を勘案すると、生体試料中より簡便かつ迅速に分析する方法が求められる。また、内部標準(IS)として用いる GLYP13C215N 等の同位体標識化合物は高価であるため、より安価な代替品が使用できることが望ましい。本研究では、GLYP、GLUF およびこれらの代謝物を、少量の生体試料から比較的簡便かつ迅速に分析できる分析法を開発し、2-amino-4-phosphonobutyric acid (AP-4)及び DL-2-amino-5-phosphonopentanoic acid (AP-5)の IS としての適性を、GLYP13C215N と比較し検討した。

【対象及び方法】
 GLYP とその代謝物 aminomethyl phosphonic acid (AMPA)、GLUF および代謝物である 3-methylphosphinicopropionic acid (MPPA)を分析対象とした。IS の候補として GLYP 13C215N, AP-4, AP-5 を用いて比較した。
 今回、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を含む分析条件を最適化するため、我々は以下の 3 種類の条件を検討した。簡潔に述べると、条件 1:Waters社製 LC-MS/MS、カラムは ACQUITY UPLC BEH C18、条件 2:Waters 社製 LC-MS/MS、カラムは Imtakt 社製 SM-C18、条件 3:島津製作所製 LC-MS/MS と、カラムは Imtakt社製 SS-C18 という組み合わせで、他の詳細な条件は Table 1 に示した。なお、最終的に採用した条件は、条件 3 である。
 分析対象物質の標準品および IS を添加した希釈血漿または希釈尿を蒸発乾固後、酢酸/無水酢酸とオルト酢酸トリメチルにより誘導体化を行った。誘導体化終了後、再度蒸発乾固し、アセトニトリル/10 mM ギ酸アンモニウム水溶液に再構成した。この試料のうち 5 l を LC-MS/MS に注入し、検量線の直線性、マトリックス効果、日内・日間における正確度および精度を評価した。また、誘導体化後の化合物の安定性を評価するため、誘導体化後 3 日、1 週間または 2 週間静置した後に分析を行った。
 最後に本法の実用性を示すため、何らかの薬毒物による中毒が疑われた事例から得られた血漿および尿試料を用い、対象化合物を分析した。

【結果】
 誘導体化の反応温度および反応時間を検討した結果、120℃、30 分において、対象化合物のピーク面積値が最大であった。
 また、LC-MS/MS に用いるカラムを検討したところ、条件 1 では全イオンクロマトグラム上で、各化合物のピークは分離不可能であった。次に条件 2 の場合は、化合物がある程度分離できたため、GLYP 、GLUF、AMPA および IS として 2-amino-3- phosphonopropionic acid (APPA) について、選択反応モニタリング(selective reaction monitoring, SRM)モードでピークの検討を行った。しかし、GLYP と APPA のピークはほぼ同時に溶出しており、APPA のフラグメントイオンのパターンは GLYP のフラグメントイオンのパターンと区別できなかった。よってこの条件は定量分析には適していないと考え、条件 3 で分析を行った。その結果、十分なピーク分離が得られ、ピーク形状も良好だった (Fig. 1)。
 検量線は 50 ng/mL~5 μg/mL の範囲で良好な直線性を示した(R2>0.98)。また、マトリックス効果は血漿において 95%~140%であり (Table 2)、尿においては 65%~90%であった (Table 3)。さらに、正確度は血漿で 80.5%~121%、尿では 80.2%~121%であり、精度は血漿において 1.5%~26%、尿において 1.3%~24%であった (Table 4-7)。誘導体化後の化合物の安定性は、血漿中ではいずれも 1 週間安定であった。また尿 中では、GLYP, GLUF, MPPA は 2 週間安定だったが、AMPA は 1 週間安定という結果だった (Fig. 2)。
 解剖より得られた試料を分析した結果、GLYP とその代謝物である AMPA が検出された。3 種類の IS それぞれで補正した結果、GLYP は血漿中より 3.1~3.5 mg/mL、尿中から 3.3~4.5 mg/mL 検出され、AMPA は血漿中より 18~20 μg/mL、尿中から 44~54 μg/mL検出された (Table 8)。

【考察】
 以上の結果より、今回我々は、血漿または尿中の GLYP, GLUF, AMPA, MPPA を簡便に分析する方法を確立した。抽出操作を省略し、試料の希釈のみで誘導体化反応へ移行する本法を用い、各化合物のピークが特異的に検出されることを確認した。抽出操作の省略は、時間の短縮だけでなく、抽出操作による分析対象物のロスを防ぐことができると考えられる。また、誘導体化の反応時間も最小限に抑えるために反応条件を検討し、既報に比べ温度を高く設定することとした。加えて、誘導体化後の化合物は、少なくとも 1 週間は安定であることを明らかにした。さらに、今回の対象化合物のように親水性の高い化合物を分析するために適した、Scherzo SS-C18 カラムを用いることにより、各化合物について良好な分離が得られた。最後に、実試料より致死量の GLYP とその代謝物が検出されたことから、本法が対象化合物の定量分析に有用であることが示された。

【結論】
 今回の研究から GLYP 13C215N , AP-4, AP-5 はいずれも内部標準として適しており、高価な同位体標識内部標準を用いなくとも定量が可能であることが分かった。また本法により、GLYP, GLUF, AMPA, MPPA を少量の生体試料から検出可能であることが示された。さらに、中毒死亡例における定量分析が可能であったことより、実試料における有用性も示された。

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