リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Efficacy of new multimodal preventive measures for post-operative deep sternal wound infection」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Efficacy of new multimodal preventive measures for post-operative deep sternal wound infection

Konishi, Yasunobu 小西, 康信 名古屋大学

2020.08.19

概要

【緒言】
心臓血管外科術後の深部胸骨感染症は、0.5〜10%で発生する心臓血管外科手術後の最も重篤な合併症のひとつである。その死亡率は 8.1〜14.8%だが、標準的な予防策はない。本研究では術後深部胸骨感染症に対してわれわれが行った集学的予防策の有効性について検討した。

【対象と方法】
2008 年 1 月から 2012 年 12 月に行った胸骨正中切開による心臓血管手術 1240 例を対象とした。2010 年 12 月までの 686 例を前期、術後深部胸骨感染症に対する集学的予防策を開始した 2011 年 1 月以降の 554 例を後期とした。後期では冠動脈バイパス術の基本術式を人工心肺使用心拍動下から人工心肺非使用心拍動下に変更した。前期では胸部大動脈手術の際の目標再低体温を 20℃としていたが、後期では全弓部大動脈人工血管置換術で 28℃、上行大動脈人工血管置換術で 30℃に変更した。他の開心術の目標再低体温は 30℃または 32℃から後期において 34℃に変更した。後期において導入した予防策を明文化し心臓血管外科チームで共有した。予防策の導入には移行期が存在する。2011 年 1 月から予防策の見直しを開始し、2011 年 5 月から冠動脈バイパス術の基本術式と術中最低体温等を変更した。2011 年 6 月まではクリーンルームで行われた心臓血管手術は全体の 22.5%であったが、2011 年 7 月以降は 70.7%に増加した。これら集学的予防策の導入は 2011 年後半までに完了した。前期と後期における患者と手術結果に関するデータを収集し、比較検討した。次に術後深部胸骨感染症が発生した患者と、発生しなかった患者でグループを分け、術後深部胸骨感染症の因子を検討した。

【結果】
前期と後期の患者背景とデータを表 1 に示す。全 1240 例のうち術後深部胸骨感染症は 26 例(2.1%)であった。前期に発生した術後深部胸骨感染は 25 例(3.6%)であったが、後期は 1 例(0.2%)であった(p<0.0001)。後期の術後深部胸骨感染は、われわれが導入した集学的予防策の移行期のごく早期に発生し、その後の連続 531 例では発生しなかった。

患者背景は、年齢が前期のほうが低かったのみで(64.8 ± 13.4 vs 66.4 ± 13.8, p = 0.0394)、その他の項目に差はなかった。後期では大動脈疾患の割合が 8.6%から 16.6%に増加し(p <0.0001)、弁膜症の割合は 61.4%から 53.4%に減少した(p = 0.0049)。冠動脈疾患の割合に差はなかったが(25.2% vs 24.7%, p = 0.8431)、後期において両側内胸動脈の使用頻度が増加した(1.7% vs 10.6%, p <0.0001)。後期では、清浄度クラス 5(ISO 14644- 1)の手術室(バイオクリーンルーム)で行われた心臓血管手術の割合は 23.0%から 59.9%に増加した(P<0.0001)。冠動脈バイパス術の基本術式を人工心肺使用心拍動下から人工心肺非使用心拍動下に変更した結果、人工心肺の使用頻度は 95.9%から 83.7%に低下した(p<0.0001)。手術時間、大動脈遮断時間は後期において短縮したが、人工心肺時間に差はなかった。術中最低体温は後期が高かった(29.9 ± 5.1 ℃ vs 31.4 ± 3.2 ℃ , p<0.0001)。緊急手術の割合や複合手術の割合、術後人工呼吸器使用時間などに差はなかったが、後期の入院日数は短縮した(36.1±35.7 日 vs 28.1±34.4 日, p<0.0001)。

患者を術後深部胸骨感染症が発生した 26 例(A 群)と、発生しなかった 1214 例(B 群)にわけ、同様の因子について比較した(表 2)。BMI(24.3±4.5kg/m2 vs 22.6±3.4 kg/m2, p= 0.0100)、術前 NYHA III, V の割合(42.3% vs 24.6%, p = 0.0047)、喫煙歴(65.4% vs 45.1%,
p=0.0394)、バイオクリーンルームの使用率(19.2% vs 40.0%, p=0.0529)は、B 群が A 群より低かった。手術時間、人工心肺時間、大動脈遮断時間は A 群がより長く、術中最低体温は A 群がより低く、輸血の頻度は A 群がより多く、術後人工呼吸器使用時間、術後 ICU 滞在期間、入院日数は A 群がより長かった。これらの因子の多変量解析の結果、BMI≧ 25 kg/m2 と手術時間≧ 8 時間が術後深部胸骨感染症の危険因子となった (表 3)。

【考察】
術後深部胸骨感染症の死亡率は 14%という報告があるように、術後深部胸骨感染症は心臓血管手術後の死亡の最大の危険因子である。先行研究では、糖尿病、肥満、腎機能障害、狭心症、喫煙歴、慢性閉塞性肺疾患、両側内胸動脈の使用、手術時間の延長、術後人工呼吸器使用時間の延長が術後深部胸骨感染症の危険因子と報告されているが、本研究では BMI と手術時間が危険因子であった。長時間手術は SSI の危険因子である。本研究では手術時間の 75 パーセンタイル値は 8 時間で、術後深部胸骨感染症の危険因子あった。手術用の皮膚消毒剤の有効性の指標が消毒部位の細菌数が消毒後 6 時間でベースラインを超えないことであることを考慮すると、長時間手術が術後深部胸骨感染症の危険因子であることは合理的である。後期において冠動脈バイパス術の基本手技を人工心肺非使用心拍動下に変更した。また術中の目標最低体温を胸部大動脈手術は 28〜30℃に、他の開心術は 34℃に変更した。冠動脈バイパス術における人工心肺手技の省略と、術中の低体温と復温にかかる時間の短縮は、後期において平均手術時間の短縮につながり、術後深部胸骨感染症の予防に寄与したと考えられる。術中の低体温は免疫活性を低下させ、手術部位感染の危険因子となる。胸部大動脈手術において、臓器保護の観点から術中の低体温を避けることはできないが、後期では術中の目標最低体温を 27℃以上に設定した。本研究では 27℃未満の低体温は術後深部胸骨感染症の因子としてあがったが、多変量解析では術後深部胸骨感染症の危険因子とならなかった。しかしながら、術中の目標最低体温をより高く設定することが術後深部胸骨感染症を減少させることに寄与したと考えられる。本研究では BMI≥25kg/m2が術後深部胸骨感染症の危険因子となった。日本では BMI≥25kg/m2 は肥満と提起されており、肥満は手術部位感染の危険因子である。手術室の環境もまた手術部位感染の予防に重要である。手術室の清浄度と手術部位感染に関するコンセンサスや前向き研究はないが、ISO 14644-1 は医療施設の環境管理基準に広く使用されている。一般にバイオクリーンルームと呼ばれる ISO 14644-1 クラス 5 の空気清浄度は人工関節や心臓血管手術に推奨されている。本研究では、前期においてバイオクリーンルームで行われた心臓血管手術は 23.0%であり、術後深部胸骨感染症の 5 例(20%)はバイオクリーンルームで行われた手術後に発生したが、術後深部胸骨感染症とバイオクリーンルームの使用に有意差はなかった。本研究では後期においてバイオクリーンルームで行われた心臓血管手術の割合が 23.0%から 59.9%に増加しており、手術室の清浄度が術後深部胸骨感染症の減少に重要な役割を果たしたと考えている。

【結語】
手術時間の短縮や術中最低体温の上昇などの集学的予防策を導入することで、術後深部胸骨感染症を減少させることができた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る