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大学・研究所にある論文を検索できる 「低腫瘍量濾胞性リンパ腫における遺伝子発現に基づく新規予後予測モデルの構築」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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低腫瘍量濾胞性リンパ腫における遺伝子発現に基づく新規予後予測モデルの構築

渡邊 正太郎 東北大学

2022.03.25

概要

濾胞性リンパ腫は年単位に進行する低悪性度リンパ腫の代表的な病型であり、再燃を繰り返し未だ治癒が困難な難治性疾患である。臨床的に不均一な疾患群であり、診断時に直ちに化学療法を必要とする高腫瘍量群から無治療経過観察が標準治療である低腫瘍量群まで幅広い病態をとる。臨床医は病態に応じて過不足なく治療を行うことが求められているが、どのタイミングで治療を開始するかは、臨床的予後予測モデルでは判断できない。近年分子病態に基づいた予後因子が必要と考えられ、高腫瘍量群では遺伝子変異・発現をベースとした予後モデルが提唱されているが、低腫瘍量群では報告がない。低腫瘍量群は一般的に年単位で進行せず、約 2 割は自然退縮を認めることから、腫瘍細胞の免疫微小環境が病態に深く関わっていると考えられている。以上から、本研究では低腫瘍量濾胞性リンパ腫を対象に、腫瘍免疫に関連した遺伝子発現をベースとした新規予後モデルを構築することを目的とした。

2010 年 1 月から 2020 年 3 月の間に宮城県内の 3 施設において診断された低腫瘍量濾胞性リンパ腫 55 例のホルマリン固定パラフィン包埋標本から RNA を抽出し、Nanostring デジタルカウント遺伝子発現解析により主に腫瘍免疫に関連する 730 遺伝子の発現量を測定した。単変量 Cox 解析から 5 つの予後良好因子として autophagy related 10 (ATG10)、cathelicidin antimicrobial peptide (CAMP)、cluster of differentiation 1D (CD1D)、interleukin 27 (IL27)、killer cell immunoglobulin like receptor, three Ig domains and long cytoplasmic tail 1 (KIR3DL1)および1つの予後不良因子として interleukin-1 receptor-associated kinase 2 (IRAK2)が抽出され、L2 正則化回帰分析によりこれら 6 遺伝子の発現量を基にした予後予測モデルを作成した。この 6 遺伝子発現モデルは、低腫瘍量群を治療成功期間から Low risk 群と High risk 群の 2 群に有意に層別化し(P<0.0001)、検証コホートにおいても同様の傾向が認められた(P = 0.2)。6 遺伝子発現モデルは、低腫瘍量濾胞性リンパ腫において長期間にわたり無治療経過観察が可能な症例の同定に有用であることが示唆された。

抽出した 6 遺伝子の免疫組織化学染色を行い、Nanostring デジタルカウント遺伝子発現解析により測定した RNA 発現量と組み合わせて解析を行った。その結果、CD1D と IL27 において、RNA 高発現かつ免疫染色が陽性(CD1D においては強陽性)を示した群は有意に予後良好であった(CD1D:P=0.0003、IL27:P=0.0004)。免疫組織化学染色単独では、CD1D 強陽性群で有意に予後が良好であり(P=0.03)、IL27 陽性群においては予後良好の傾向を認めた(P = 0.2)。免疫組織化学染色は、多くの施設で利用可能な手法であり、予後良好群をより簡便に同定できる可能性が示唆された。

本研究では、腫瘍免疫に関連した遺伝子発現をベースに 6 遺伝子発現モデルを構築した。この新規発現モデルは、低腫瘍量濾胞性リンパ腫において長期間進行せず無治療経過観察が最適な一群を同定することが期待される。また、本解析で抽出された CD1D の免疫組織化学染色所見に変換可能な可能性が示唆され、臨床現場においてより簡便に長期の無治療経過観察が可能な症例の予測に有用と期待される。

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