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大学・研究所にある論文を検索できる 「可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の開発と効果検証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の開発と効果検証

内藤, 紀代子 筑波大学

2022.11.22

概要

1.目的
 女性の骨盤底筋群は、妊娠・出産による負担や損傷を受けることにより弛緩をきたす。この骨盤底弛緩は、尿失禁や骨盤臓器脱を引き起こし生活の質の低下につながっている。症状の予防や改善策として骨盤底筋体操が推奨されているものの、正しい方法での実施がなされず、継続率が低いという問題がある。その理由として、骨盤底筋が骨盤内の深層部に位置する筋群のため自覚しにくいことと、自覚が難しい筋群の体操であるため継続が困難であるという点が挙げられる。そこで、骨盤内を可視化することにより骨盤底筋の収縮が自覚できれば、正しい骨盤底筋体操の実施や継続につながるのではないかと考えた。よって、本研究の目的を①可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の開発と、②開発した指導媒体の効果検証の2つとした。

2.対象と方法
1) 研究1:可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の開発
 対象者は、自然分娩で出産した産後女性5名とした。まず、女性の骨盤底筋体操時の骨盤内をMRで撮像した動画からアニメーションへの変換を行い、アニメーション指導媒体を作成した。その後、この指導媒体を用いて3カ月間の縦断的介入研究を行った。指導媒体の妥当性の評価は、介入前後の骨盤底筋力(骨盤底筋訓練の評価機器で測定した最大収縮力(kgf)、最大収縮時間(秒)、総合スコア(点)、および超音波画像診断装置で測定した骨盤底挙上量(㎜))の変化と、指導媒体を使用した感想により検証した。
2) 研究2:可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の効果検証
 対象者は、健診と育児サークルでリクルートした産後女性201名とした。開催月毎に、開発したアニメーション指導媒体での骨盤底筋体操指導群(以下、A指導群)と、リーフレット指導媒体での骨盤底筋体操指導群(以下、L指導群)に割り振り、3カ月間の介入を行った。新型コロナウイルス感染症拡の影響を受けて脱落した者、個人的要因により脱落した者、体操実施回数が不足していた者を除き、最終的な対象者は、A指導群36名とL指導群30名であった。仮説は、①介入後、A指導群の方がL指導群よりも骨盤底筋力が高まる、②介入後、A指導群の方がL指導群よりも自覚的な尿失禁症状(尿もれの有無、ICIQ-SF日本語版)が改善する、③介入後、A指導群の方がL指導群よりも体操の継続性(継続者と脱落者の割合)が高いと設定した。介入前後の上記変数を群間比較し評価した。

3.結果
1) 研究1:可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の開発
 介入前後の骨盤底筋力の変化では、1名のみ骨盤底挙上量は増加しなかったが、それ以外の項目においては5名とも高くなった。すなわち、作成した仮アニメーション指導媒体は骨盤底筋力の強化が期待できる指導媒体として妥当性があると判断できた。仮アニメーションを使用した感想のヒアリングでは、全員が育定的な意見を述べた。アニメーションの骨盤内臓器と骨盤底筋の配色に関しての意見に対しては、再度アニメーションを編集し、骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体として完成させた。
2) 研究2:可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体の効果検証
 対象者の平均年齢はA指導群30.2(SD=4.9)歳、L指導群32.0(4.9)歳であった。A指導群とL指導群における基本属性と産科的属性の等質性を検討するため介入前の群間比較を行ったところ、全ての項目で有意な差は認めなかった(p=.051~.923)。また、介入前の骨盤底筋力(p=.264~.988)、ICIQ-SF評点(p=.428)においても等質性が確認できた。介入後の骨盤底筋力の群間比較においては、骨盤底筋力の評価項目の全てにおいて両群に有意な差が認められた(p<.001)。すなわち、介入後はA指導群の方がL指導群に比べて骨盤底筋力が高くなったことが示された。ICIQ-SF評点の群間比較においても有意な差が認められ(p=.010)、介入後ではA指導群の方がL指導群よりも自覚的な尿失禁症状が改善されたことが示された。体操の継続性を評価するため、継続者と脱落者の比率の比較を行ったところ有意な割合の差が認められた。(p=.007, Φ=.242)。すなわち、A指導群の方がL指導群よりも体操の継続性が高いことが示された。

4.考察
 研究1では、骨盤底筋力である最大収縮力、最大収縮時間、総合スコアは、全ての対象において介入後に高まった。骨盤底挙上量については。1名のみ上昇を認めなかったが、1.0mmの差であり誤差の範疇と考えられた。よって、アニメーション指導媒体は骨盤底筋力と骨盤底挙上量を高める指導媒体として妥当性があると判断できた。
 研究2では、介入後はA指導群の方がL指導群に比べて骨盤底筋力が高くなったことが示され、仮説①が検証された。骨盤内を可視化した指導媒体を用いることにより、骨盤底筋の収縮が自覚でき、それにより正しい骨盤底筋体操の収縮と意識的な骨盤底筋挙上が可能になったと考えられる。また、介入後ではA指導群の方がL指導群よりも自覚的な尿失禁症状が改善されたことが示され、仮説②が検証された。骨盤内を可視化した指導媒体を用いることにより正しい骨盤底筋の収縮と意識的な骨盤底挙上が可能になり、骨盤底筋力の強化と尿失禁症状の改善につながったと考える。さらに、A指導群の方がL指導群よりも体操の継続性が高く、仮説③が検証された。骨盤内を可視化した指導媒体を用いることにより骨盤底筋の収縮が自覚でき、さらにいつでも繰り返して見ることが出来たため、継続性にも繋がったと推測される。今後は、大規模なランダム化比較試験とデータの蓄積、対象範囲を広げた効果検証を行うことが課題となった。

5.結論
 可視化を特徴とする骨盤底筋体操のアニメーション指導媒体を用いた体操を3ヶ月間継続実施した場合、リーフレット指導媒体を用いた場合よりも、骨盤底筋力が高まり、自覚的な尿失禁症状が改善され、体操の継続性が高まることが検証された。指導媒体の効果が検証されたことから、産後女性への骨盤底筋ケアツールとしての有用性が示されたといえる。

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