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大学・研究所にある論文を検索できる 「小中学生の運動器障害・外傷に対する運動器検診の構築と予防の取り組み」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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小中学生の運動器障害・外傷に対する運動器検診の構築と予防の取り組み

都丸, 洋平 筑波大学

2020.07.27

概要

目的:
 小中学生の運動器疾患の予後改善のために効率的で効果的な運動器検診を構築し、運動器検診を通した運動器疾患の早期治療、予防に対する提言を行うこと。

対象と方法:
 筑波大学では2016年度より、つくば市、常陸大宮市の全小・中学生に対して問診票を用いた運動器検診を開始した。生徒・保護者が問診票に記入をし、それを参考にした学校医による内科検診を1次検診とした。K学校など一部モデル校では学校医による内科検診を介さずに全生徒に対して整形外科医が2次検診として直接検診を行なった。1次検診で学校医が必要と判断した生徒は2次検診へ、2次検診で整形外科医が必要と判断した生徒は3次検診として医療機関受診を推奨した。問診票は運動器の10年日本委員会の公式の問診票をもとに筑波大学独自に作成したものを使用した。また、2017年度初頭に運動器直接検診から取得した生徒の身体所見と、2018年問診票から取得した、2017年度中に発生した運動器障害・外傷に関して比較し身体所見と運動器障害・外傷に関するコホート研究を行なった。2017年度中の運動器障害・外傷全体の有無、足関節捻挫の有無、骨折の有無でそれぞれ2群に分け、性別、年齢、体育以外の運動時間、身体所見、運動競技に関して単変量解析を行った。また、運動器障害・外傷、足関節捻挫、骨折それぞれを目的変数とし、性別、年齢、体育以外の運動時間、身体所見、運動競技を説明変数として多変量解析を行なった。

結 果:
 2016年度モデル校においては、1844名が整形外科医による直接検診を受診した。問診票はつくば市・常陸大宮市全体で22, 494名から回収する事ができ、回収率は99.9%だった。側弯症の直接検診/問診票における異常率は18.7%(344/1842)/5.1%(1094/21, 441)だった。立位体前屈の直接検診/問診票における異常率は20.2%(372/1841)/26.3%(5817/22, 078)だった。しゃがみこみの直接検診/問診票における異常率は全体6.2%(114/1832)/6.9%(1516/22101)だった。関節間弛緩性の問診票における異常率は全体7.5%(1673/22, 252)だった。片脚立位の問診票における異常率は全体5.0%(1100/22, 077)だった。斜頸の直接検診/問診票における異常率は2.2%(41/1844)/1.3%(272/21687)だった。扁平足の直接検診/問診票における異常率は全体12.5%(231/1842)/8.6%(1785/20871)だった。
 問診票の感度は、側弯症、立位体前屈、しゃがみ込み、斜頚、扁平足でそれぞれ、16.8%(53/316), 67.9%(250/368), 48.2%(55/114), 18.9%(7/37), 32.2%(65/202)だった。問診票の特異度は側弯症、立位体前屈、しゃがみ込み、斜頚、扁平足でそれぞれ、95.4%(1375/1442), 90.2%(1300/1442), 98.0%(1674/1709), 98.8%(1731/1789), 94.3%(1425/1511)だった。
 体育以外の運動時間は全体の平均で3.1時間/週だった。56%の生徒の運動時間は週2時間未満だった。これに対して13%の生徒の運動時間は週10時間以上だった。全体でみると、スポーツ障害・外傷(骨折、脱臼、オスグッド病、野球肘、腰椎分離症など)は運動時間が長くなると増加する傾向がみられ、正の相関を認めた。
 足関節捻挫あり群/なし群間では年齢、足・肘関節可動域制限、立位体前屈、運動種目に有意差がみられた(p<0.05)。運動種目では、足関節あり群ではサッカー、バスケットボールが有意に多く、なし群では運動従事なしが有意に多かった(p<0.05)。足関節捻挫を目的変数とした多変量解析では足関節可動域制限が有意な関連がみられた(p<0.05)。

考 察:
 現状、人的資源の観点から、生徒全員に対して整形外科医が直接検診を行うことは困難である。そのため、運動器検診を行うにあたり、スクリーニングが不可欠であるが、本報告での問診票の感度は不十分だった。
 本研究では、運動器障害・外傷は運動時間が5-9時間以上となる生徒で多く発生していた。概ね1日1時間以下の運動であれば運動器障害のリスクは少ないと推察できる。World Health Organization(WHO)およびCenters of Disease Control and Prevention(CDCP)は、5-17歳の子供に対して身体機能の向上と健康のため1日1時間以上の運動を推奨しており、本研究と概ね合致する内容であった。身体所見と足関節捻挫の関連では、本研究では足関節可動域制限と足関節捻挫に関連がみられた。距骨下関節の回外変形が足関節の背屈制限との関連がみられ、距骨下関節の回外が足部の外側荷重、足関節内反捻挫につながる可能性があると報告がある。これらの2つの報告から、足関節の背屈制限のある生徒は距骨下関節の回外変形を生じておりこれが足関節捻挫につながった可能性もあると考えられる。

結論:小中学生を対象とした運動器検診は、運動器疾患の早期発見、早期治療を行うことができ一定の成果があったものと考えられる。しかしながら問診票の精度は低く、問診票の改善や啓発活動などの改善の余地がある。運動器検診により得られた結果より、小中学生の運動時間には適切な時間があると考えられ、おおよそ1日1時間程度であると思われた。
運動器検診で得られた身体所見により、運動器疾患発生予防活動に結びつける可能性があることが示唆された。

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