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大学・研究所にある論文を検索できる 「血清ナトリウム濃度に着目したがん化学療法の安全性向上に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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血清ナトリウム濃度に着目したがん化学療法の安全性向上に関する研究

畠山 史朗 山形大学

2020.03.31

概要

【背景】低ナトリウム(Na)血症は重篤な中枢神経症状を惹起する可能性があり,適切な血清Na 濃度のマネジメントは安全な医療を提供する上で重要である.がん患者は低 Na 血症を高頻度に併発することが知られており,一部の抗がん薬は低 Na 血症の原因となる.しかし,個々の薬剤のリスクは十分に分かっていない.また,低 Na 血症は抗がん薬の副作用発現に影響を及ぼす可能性があるが,その関連性は未だ不明である.本研究では,がん化学療法の安全性向上を目的として,白金系抗がん薬を対象に薬剤疫学的な解析を実施し,がん化学療法と低 Na 血症の関連性を検討した.

【方法】本邦の有害事象自発報告データベース(Japanese Adverse Drug Events Reportdatabase:JADER)を用いて,白金系抗がん薬投与による低 Na 血症関連有害事象シグナルを検討した.また,シスプラチン(CDDP)投与後の低 Na 血症の危険因子をケース・コントロール研究により検討した.対象は 2012 年 1 月から 2017 年 12 月の期間中に,山形大学医学部附属病院で CDDP が静脈内点滴投与された患者とし,Grade 3 以上の低 Na 血症が生じた症例をケース群,それ以外の症例をコントロールとして解析した.さらに,治療前の血清 Na 濃度が白金系抗がん薬投与後の悪心・嘔吐に与える影響を,コホート研究により検討した.2014 年 5 月から 2016 年 3 月の期間中に山形大学医学部附属病院産科婦人科および公立置賜総合病院消化器外科において,カルボプラチン(CBDCA)またはオキサリプラチン(L-OHP)の初回投与が予定された患者を対象とした.対象患者を血清 Na 濃度が中央値以上の高 Na 群と,中央値未満の低 Na 群に分類し,二群間で悪心・嘔吐事象の発現を比較した.

【結果】有害事象自発報告データベース解析結果より,CDDP と CBDCA に低 Na 血症関連有害事象シグナルが検出された.CDDP の reporting odds ratio は 4.75(95%信頼区間:4.30−5.25),CBDCA は 1.57(95%信頼区間:1.27−1.94)であった.ケース・コントロール研究の解析対象は 472 例であり,Grade3 以上の低 Na 血症が認められた 50 例をケース群,422 例をコントロール群とした.多変量ロジスティック回帰分析の結果,小細胞肺がんと治療前の低 Na 血症(<138 mEq/L)が独立した危険因子として同定された.それぞれの調整オッズ比は 3.26(95%信頼区間:1.07−10.00),6.18(95%信頼区間:3.21−11.90)であった.コホート研究での対象症例は 34 例であった.血清 Na 値の中央値は 141 mEq/L であったため,141 mEq/L 以上を高 Na 群(n=18),141 mEq/L 未満を低 Na 群(n=16)として解析した.遅発性悪心の発現は高 Na 群 27.8%,低 Na 群 62.5%(p = 0.042),completecontrol 率は高 Na 群 77.8%,低 Na 群 43.8%であり(p = 0.042),低 Na 群で悪心・嘔吐事象の発現が有意に高かった.

【結論】本研究により,低 Na 血症のリスクを有する抗がん薬,重篤な低 Na 血症の患者関連因子,治療前の血清 Na 濃度が抗がん薬の副作用に及ぼす影響が解明された.これらの新知見に基づいた血清 Na 濃度の管理は,がん化学療法の安全性向上に資すると考える.

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