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大学・研究所にある論文を検索できる 「ジャボチカバ(Plinia cauliflora(Mart.) Kausel)'Sabara'の生殖生理に関する基礎的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ジャボチカバ(Plinia cauliflora(Mart.) Kausel)'Sabara'の生殖生理に関する基礎的研究

大穂 清隆 東京農業大学

2022.09.01

概要

地球温暖化に伴う気温の上昇に対する対応策として,また食の多様化に伴う国内需要の拡大に伴い,日本においても熱帯果樹の栽培地域が増加している。ブラジル原産のジャボチカバ(Plinia cauliflora (Mart.) Kausel)は,食味や機能性成分だけでなく,収穫の容易さなどのメリットがある。加えて,ジャボチカバ‘Sabara’は周年生産・収穫ができるため,農家の安定した収入が見込まれる。日本では関東以南,特に静岡県,鹿児島県,沖縄県で商業的な栽培が始められた。しかし,ジャボチカバの安定した持続的な生産に資するための生殖生理の調査はいまだ少ない。そこで本研究では日本において最も普及しているジャボチカバ‘Sabara’を用いて開花から果実成熟までの生殖生理の基礎的知見を得ることを目的とし,1)開花および受粉受精に関する研究,2)花粉発芽に及ぼす温度の影響,3)果実および種子の発達と胚珠の退化,4)果実成熟に伴う生化学的変化の解明について検討を行った。

1. 開花および受粉受精に関する研究
 開花は午前1時から5時頃にかけて行われ,また年間を通じて開花時刻に大きな変化はないことが明らかとなった。しかし,気温が下がると開花時刻は遅くなる傾向にあった。葯は花弁が開ききる以前に破裂し,その際に柱頭に花粉が付着する。その後花粉は柱頭で発芽し,花柱内に花粉管を侵入させ,午後2時頃には花粉管が子房に到達することが明らかとなった。

2. 花粉発芽に及ぼす温度の影響
 人工培地を供試して花粉発芽に対するショ糖濃度と温度の影響を調査した。花粉の発芽に好ましいショ糖濃度は10%であった。温度に関しては,花粉発芽率および花粉管長は25℃で最も高くなった。また花粉の発芽に好ましい温度は,20-30℃であった。次に日本においてジャボチカバ栽培の制限要因となりうる低温(10-15℃)および高温(35-40℃)の曝露時間が花粉の発芽に及ぼす影響について検討した。花粉は,低温処理によって影響を受けなかったが,高温処理では35℃で2時間以上,40℃で1時間以上経過すると,花粉管の伸長が抑制された。このことから開花当日における日中の気温には十分注意する必要があることが明らかとなった。

3. 果実および種子の発達と胚珠の退化
 一つの果実に含まれている種子数は一つの果実が48%,二つの果実が42%,三つの果実が8.7%,四つの果実で1%であった。しかし,いずれの場合も胚珠の数は四つであったことから,ほぼすべての果実において発達段階のいずれかで胚珠が退化することが明らかとなった。胚珠の退化時期を調査した結果,退化パターンには二種類があり,開花2~3日目に生じる場合と開花10~12日目に生じる場合があった。また胚発生の過程を顕微鏡観察した結果,果実肥大が顕著になる以前に珠心で複数の胚が同時に発生していた。

4. 果実成熟に伴う生化学的変化の解明
 ジャボチカバ果実の成熟メカニズムの解明と成熟指標の探索を目的とし,メタボローム解析を行った。初めに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて,3つの成熟段階における一次代謝産物に着目したメタボローム解析を行った。その結果,果実の成熟過程における個々の代謝物の消長やトリカルボン酸サイクル(TCAサイクル),嫌気性呼吸,シキミ酸経路,γ-アミノ酪酸経路などの代謝経路の変動が明らかになった。ジャボチカバ果実は,成熟適期の見極めが難しいことが課題となっているが,成熟ステージから過熟ステージに移行する直前にアセトアルデヒドの生成が顕著に高まり,過熟ステージに移行した後はエタノールの生成が始まることから,アセトアルデヒドの生成が収穫の目印になることが示唆された。メロンの熟期判定のために開発された発色シールを実用化しうると期待される。
 本研究の成果は日本におけるジャボチカバ栽培に資するのみならず,熱帯の途上国におけるジャボチカバ栽培や収穫,貯蔵,輸送などに関して有益な情報を提供するものと考えられる。

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