リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒト歯周組織由来間葉系幹細胞から作製した軸索様神経束の移植による脊髄再生促進」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

ヒト歯周組織由来間葉系幹細胞から作製した軸索様神経束の移植による脊髄再生促進

柴尾, 洋介 筑波大学

2022.11.24

概要

目的:
ヒト歯周組織由来間葉系幹細胞(歯肉上皮下層由来神経幹細胞)より作成した軸索様神経束の特性を明らかにし、脊髄損傷モデルラットへの移植により脊髄再生促進効果を明らかにすることである。

対象と方法:
通常はそのまま破棄される抜去歯であるが、研究に同意を頂いた患者から得た抜去歯に付着する歯肉または抜歯後にトリミングした歯肉を使用し、神経系細胞に分化誘導した後に、デバイスを用いて血管網を内在する軸索様神経束を作製した。この神経束の免疫組織学的評価を行うとともに、脊髄損傷モデルラットに移植し、生理学的評価として世界的Gold standardであるBBBスコアをもちいて下肢運動を評価した。6週間に渡り、毎週行動学的評価を行った。統計学的検討はTukeyのpost hoc testを用いた反復測定ANOVAを用いて行い、p<0.05を有意差ありとした。また、後肢機能回復が得られたラットのうちの一部に対し、移植片部分の再切断を行い、再切断にて回復した機能が失われることを確認した。さらに、移植後6週で神経束を移植した個体を4%パラホルムアルデヒドで還流固定した後に、脊髄を摘出し組織標本を作成し、組織学的・免疫組織学的評価を行った。特に再生・消失した軸索の表現型を明らかにするために、神経線維マーカーであるセロトニンの免疫組織染色を行った。セロトニン陽性神経線維の再生・温存を評価するために、6切片ごとに特異抗体を反応させ、各動物から少なくとも3つのサンプルについて、吻側(損傷部から3000μmの位置)、尾側(損傷部から3000μmの位置)の脊髄の中心軸に垂直な線を横切る免疫反応性線維の数を数え評価した。統計学的な検討はWilcoxonの順位和検定を用いて行い、P<0.05を有意差ありとした。

結果:
得られた軸索様神経束の長さは約3cm、径は約3mmであった。免疫染色による評価で本実施例の方法により作製された神経束は、軸索が伸長した神経系細胞に加えて、軸索に沿って存在する内皮細胞の管(血管)および軸索沿って存在するオリゴデンドロサイトの髄鞘を有することが確認された。6週の観察が可能であったラットで移植群15匹、切断群で10匹で評価を行った。BBBスコアの1週から6週における平均値の推移は、神経束移植群で0.5(±0.1)、1.5(±0.1)、2.0(±0.1)、4.0(±0.4)、4.7(±0.4)、5.4(±0.4)であった。切断群では0.8(±0.2)、1.3(±0.1)、1.9(±0.2)、2.1(±0.2)、2.2(±0.4)、2.3(±0.4)であった。統計学的検討を行うと4週、5週、6週において統計学的に有意に移植群で下肢運動機能改善が認められた。また、移植後6週目のラットの移植部再切断を行ったモデルではBBBスコアが6から1に下肢の運動が低下することを確認した。移植した神経束のヒト由来の細胞の存在を確認するため、STEM121抗体で移植後脊髄の染色を行ったが、非特異的に神経束、および周囲の反応組織全体が染色される所見であり、典型的な陽性細胞を確認することは困難であった。移植群のセロトニン陽性神経線維の平均数は、吻側で24.6(±1.5)個、尾側で3.8(±0.5)個であり、切断群のセロトニン陽性神経線維の平均数は吻側で20.4(±1.0)個、尾側で1.3(±0.4)個であった。セロトニン陽性神経線維の数は尾側での評価において、切断群と比較して移植群で有意に多かった(P<0.05)。

考察:
これまでにいくつかの研究で、ヒト成人歯髄幹細胞や剥離乳歯由来幹細胞の移植が、ラットの脊髄損傷後モデルにおいて、軸索の再生や下肢の運動機能を改善することが示されている。本研究では移植した神経束のヒト由来の細胞の存在を確認するため、STEM121抗体で移植後脊髄の染色を行ったが、移植神経束内のヒト細胞は確認できなかった。移植したヒト由来の神経束そのものは免疫拒絶反応のため、神経細胞が脱落していると考えた。しかし、生理学的、組織学的に軸索再生を促せており、軸索再生を促す土台となる素材であるscaffoldとしての役割を果たしたと考えている。自家細胞由来でないscaffoldは吸収時に炎症を惹起し、残存脊髄へ余分なダメージを与える可能性がある。比較的容易に採取可能な組織から自家細胞由来で作製可能な軸索様神経束は細胞移植治療のソースとなる可能性のある候補の一つである。

結論:
本研究では、ヒト歯周組織由来間葉系幹細胞から作製した神経束をラットに移植することで、脊髄損傷後のセロトニン陽性線維の温存や再生、機能回復が促進されることを明らかにした。このことから、軸索様神経束は移植細胞治療のソースとなりうる候補の一つである。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る