マウス腸内微生物由来膜小胞の機能解析
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
マウス腸内微生物由来膜小胞の機能解析
Functional analysis of membrane vesicles of mouse intestinal microbiota
産業技術総合研究所 生物プロセス部門 生物資源情報基盤研究グループ 森永 花菜
研究成果概要
本研究では、京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムを利用し、マウスの腸内細
菌が生産する膜小胞 (メンブレンベシクル・MV) の機能解明を目指す。細菌が生産する MV
は、細胞膜から構成されており、その内部に細菌由来の核酸やタンパク、毒素などが含まれて
いることが知られている。このことより、MV は、遺伝子の水平伝播や、細菌間、さらには細菌宿主間の情報伝達など、多様な機能を有することが近年明らかとされている。しかしながら、こ
れらの明らかとされた機能の多くが、一種類の細菌を試験管内で培養して得られた知見であ
る。多様な微生物が存在するような環境における MV の機能については、未解明な部分が多
い。本研究では、近年宿主の健康や疾患に寄与することが明らかにされつつある腸内細菌叢
に着目し、腸内細菌が生産する MV に含まれるゲノム情報を元に、マウス腸内における MV の
機能を解明することを目的とした。
マウス糞便及び糞便由来 MV から DNA を抽出し、シーケンシングした。シーケンスデータよ
り、マウス糞便及び MV に含まれる細菌ゲノムを構築し、比較することで、マウス腸内において
どのような細菌種が MV を生産しているのかを推定した。その結果、マウスの腸内細菌叢には、
MV を生産する特徴的な細菌種が存在することが明らかとなった。今後、さらなる解析によって、
腸内で MV がどのような機能を有するのかを明らかにする予定である。 ...