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大学・研究所にある論文を検索できる 「動的な自家熱型高温好気消化プロセスに関与する細菌群の機能に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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動的な自家熱型高温好気消化プロセスに関与する細菌群の機能に関する研究

石田, 夏美 ISHIDA, Natsumi イシダ, ナツミ 九州大学

2022.03.23

概要

自家熱型高温好気消化(ATAD)は好気条件下でし尿を含む排水から有機液体肥料を製造する排水処理方法で、循環型社会構築への貢献が期待されている。我々は先行研究で ATAD プロセスの理化学的特性や菌叢の解明に成功している。本研究では ATAD プロセスで特異的な菌叢と理化学的特性の相互作用を解明することを目的とし、次世代シーケンサーを用いた機能性遺伝子解析を行った。

第 1 章では序論として排水処理を取り巻く国際情勢や 3 つの主要な排水処理方法の特徴について論じ、ATAD プロセス研究の現状や当研究室で発表した研究の知見や課題について考察を行った。

第 2 章では、ATAD プロセス中の細菌の包括的な機能解明を目的とし、ショットガンメタゲノミ クス法を用いた細菌の機能性解析を行った。その結果、消化期間中で大きく変動する機能遺伝子カテゴリ(芽胞形成、二次代謝、ファージ)は物理化学的特性や菌叢変化と相互に関連することが示唆された。液肥の品質に影響するアンモニアに関し、グルタミン酸からの合成経路を各段階の優占菌がコードしていることが確認された。また初期段階での有機酸の分解において、初期優占菌が完全な酢酸、酪酸分解経路をコードし、迅速に消費されることが示唆された。以上の結果から、ATADプロセスの理化学的特性や菌叢には細菌の機能が相互に影響しあうことが示唆された。

第3章では、初期段階で優占である Arcobacter trophiarum の機能解明を目的とし、基準株のドラフトゲノムシーケンシングを行った。その結果窒素代謝では完全な脱窒経路が検出されたが実機では硝酸と亜硝酸が検出されず、脱窒経路は機能していないと考えられた。またグルタミン酸からのアンモニア合成酵素が確認され、初期段階におけるアンモニア濃度維持に寄与したと考えられた。有機酸代謝に関し酢酸の完全な代謝経路が検出され、初期段階における有機酸消費への関与が示唆された。一方二次代謝産物では flexirubin 合成酵素が確認され、Mycobacterium 属の増殖抑制の他に環境ストレスへの適応能力が示された。以上の結果から、Ar. trophiarum は初期段階においてユニークな特徴の形成に一部関与し、環境変化への適応能力を持つことが示唆された。

第4章では、初期段階のもう一つの優占菌である Ac. towneri の機能性解明を目的とし、分離株 2 株と基準株を用いて機能性解析を行った。その結果、全菌株がグルタミン酸からのアンモニア合成酵素をコードしており、初期段階においてアンモニア濃度の維持に寄与していると考えられた。有機酸消費では、酢酸と 2-methylcitrate を経由したプロピオン酸代謝経路が検出された。菌叢変化への影響因子として、3 種類の二次代謝産物合成酵素遺伝子と菌株特異的な薬剤耐性遺伝子のコードが確認された。以上の結果から、Ac. towneri のは ATAD プロセスの初期段階において理化学的特性に影響を与え、菌叢変化に関連する物質生産を行うことが示唆された。

第5章では本論文の総括として、各章での研究結果から ATAD プロセスにおける細菌の機能や理化学的特性との関連に関する考察、および今後の展望を示した。ATAD プロセス中の細菌の機能が解明されることは、排水処理の動態を微生物生態学の観点から明らかにするだけでなく、耐性菌の拡散を防ぐための医学分野の研究など、今後の研究の発展により様々な分野への応用が期待される。

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