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大学・研究所にある論文を検索できる 「NEP25マウス移植モデルにおける病的自己腎の残腎機能に対する健常移植腎の影響について」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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NEP25マウス移植モデルにおける病的自己腎の残腎機能に対する健常移植腎の影響について

坂本, 和雄 筑波大学

2022.10.21

概要

目的:
一般的な慢性腎臓病が両側に等しく病変あるいは病態が生じて進展するのに対して、尿管狭窄など物理的に片側性の腎障害が生じた場合には、対側の正常な腎臓に代償性の肥大と機能亢進が生じる。この場合、対側の正常な腎臓は病側の腎臓を補完するように働くと考えることができる。一方、腎障害が生じた病側の腎臓に着目すると、ラットに片側の腎摘出術を施行後、対側の腎臓に虚血再灌流障害を加えると、腎摘出術を行わない群と比べて、虚血再灌流障害後の腎機能低下が抑制されることが報告されている。片側性の尿管狭窄でみられる対側の代償性変化はホメオスタシスの維持という観点では重要と考えられるものの、後者の動物実験は、正常な腎臓が対側の障害を受けた腎臓の腎障害を促進するという、障害を受けた腎臓にとっては正常の腎臓の存在が不利益となることを示唆している。つまり、正常な腎臓と障害をうけた腎臓が個体内で血流を介して共存する場合、障害のある腎にとっては正常腎の存在が不利益となる可能性がある。1つの個体内に正常の腎臓と障害を受けた腎臓が共存するというのは、片側性腎動脈狭窄症や正常な移植腎と障害のある自己腎が患者の体内で共存している先行的腎移植(preemptive kidney transplantation:PEKT)の設定においてみられる。この正常の腎臓と障害を受けた腎臓の互いに及ぼす影響については正常な腎臓にフォーカスがむけられた代償性変化以外に知られたものはなく、また障害を受けた腎臓の病態生理については不明である。これらを明らかにするためマウス移植モデルによって正常の腎臓と障害を受けた腎臓が共存する状態を作成した。

本研究の目的は、正常な腎臓と障害を受けた腎臓の間に存在する病態生理に関わる因子を解明するため、および障害を受けた腎臓の病態生理、組織学的変化を明らかにすることである。

材料および方法:
実験 1. ポドサイト特異的にヒト CD25 を発現させた NEP25 マウスにイムノトキシン LMB2 を尾静注投与する。ポドサイトを特異的に傷害されることでネフローゼ症候群を呈する NEP25 マウスに野生型(WT)マウスの腎臓を移植し、NEP25 マウスの腎臓と WTマウスの腎臓をもつマウス(2 kidney 1 nephrotic model: 2K1N)を作成した。対照群として NEP25 マウスに NEP25 マウスの腎臓を移植し、NEP25 マウスの腎臓のみをもつマウス(2 kidney 2 nephrotic model: 2K2N)を作成した。LMB2 を投与し、血清・尿所見、組織学的所見、腎血流、レニン・アンギオテンシン II について検討した。

実験 2. LMB2 を投与した 2K1N マウスに対して vehicle、Angiotensin II、ACE 阻害薬(ACEI)をそれぞれ投与し、尿所見、組織学的所見、腎血流について検討した。

結果:
結果1. 2K2Nではネフローゼ症候群を呈し、尿蛋白が経時的に増加し、血清総蛋白が低下した。一方で2K1Nでは尿蛋白はday8をピークに減少し、血清総蛋白は保たれていた。腎血流は2K2Nでは病気の移植腎・自己腎ともにday12まで血流が保たれていた が、2K1Nの自己腎では経時的に減少し、day12ではほぼ血流はなく腎廃絶していると考えられた。組織学的所見では、2K2Nは病気の移植腎、自己腎ともに糸球体の主病変がヒアリン形成を伴うFSGS(Focal Segmental glomerulosclerosis)病変を示したのに対し、2K1Nでは移植された移植腎(WT腎)は正常所見であり、病気の自己腎の糸球体の主病変は虚脱性糸球体硬化であった。糸球体血流を調節する因子としてレニン・アンギオテンシン系について着目し、検討したところ2K2Nでは移植腎・自己腎ともに腎 Ang IIの上昇があったが、2K1Nでは病気の自己腎のみに腎Ang IIの上昇がみられ、移植腎との不均衡が観察された。

結果2. 実験1と同様にvehicle投与群では尿蛋白がday8にピークとなりその後低下し、 Ang II投与群ではネフローゼレベルの蛋白尿が持続し、ACEI投与群では蛋白尿のピークが低く抑制された。腎血流は、vehicle群の自己腎では結果1と同じく経時的に減少 し、day12ではほぼ血流は消失した。Ang II投与群の自己腎では腎血流の低下は抑制され、ACEI投与群では腎血流が維持された。2K1Nの病気の自己腎はvehicle投与群では 結果1と同じく糸球体の主病変は虚脱性糸球体硬化を示し、Ang II投与群では糸球体の主病変がヒアリン化FSGSを示し、ACEI投与群では糸球体病変の有意な改善がみられた。

考察:正常な腎と病気腎が共存する場合には腎 Ang II の差が生じ、これが病気の自己腎の腎血流と尿蛋白が消失し、組織にて虚脱性糸球体変化を来す原因と考えられた。臨床的にも先行的腎移植後に間もなく、病気の自己腎は腎機能が廃絶することや尿蛋白が消失することが知られており、この結果と合致するものであり、同様の機序がヒトにおいても起こる可能性が示唆された。

結論:NEP25 マウス移植モデルの、正常な腎臓と腎臓病の腎臓が共存する状況においては腎 Ang II の不均衡によって腎臓病の腎臓は早期に血流が低下し、残腎機能は早期に廃絶する

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