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関節軟骨細胞におけるGDF5の役割の解明

大川, 真季 大阪大学

2021.03.24

概要

変形性関節症は、関節軟骨が変性、破壊され、関節構造の変形と機能障害を引き起こす非可逆的な運動器疾患 で、歯科領域では顎関節症IV型が属するとして知られている。変形性関節症は、加齢・外傷・体重負荷などの環境要因と遺伝的要因が関与して発症することが氺唆されているものの、その発症機序は未だほとんど明らかになっていない。そのため変形性関節症の治療法は、消炎鎮痛剤投与等の対症療法や人工関節置換術に限られている。したがって、より有効で侵襲性の少ない原因療法の確立が求められている。関節軟骨組織は、生体のほとんどの組織と異なり、関節軟骨組織には血管、リンパ管および神経がない。関節軟骨細胞は、細胞外マトリックスを産巾する が、細胞の代謝は非常に緩やかで関節軟骨細胞の分化段階を維持している。そのため、関節軟骨組織は再生能力が極めて低く、一旦損傷すると線維軟骨に置換され、関節軟骨の機能低下が引き起こされる。関節軟骨細胞に特異的 に発現するサイトカインとしてgrowth and differentiation factor 5 (GDF5)が知られている。GDF5はbone morphogenetic protein (BMP)ファミリーメンバーの一員で、軟骨および歯などの様々な組織の発生に重要である ことが知られている。またGd历遺伝子に変異を有するマウスが、変形性関節症に対して高い感受性を示すことが明らかにされている。ヒト変形性関節症の遺伝子解析研究より、GDF5の遺伝子多型が変形性関節症に密接に関係し ていることが示されている。これらの遺伝学的研究は、GDF5が変形性関節症の発症に抑止的に機能している可能性を示している。ヒトiPS細胞から軟骨分化させる実験系で、BMP2に加えてGDF5が必要であることが示されている。この研究報告は、GDF5が関節軟骨の発生や維持においては、同じファミリーであるBMP2と異なる作用を有している可能性を示唆している。しかしながらGDF5が軟骨細胞分化誘導作用を有する一方で、関節軟骨を石灰化させずに細胞の恒常性を維持するメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では、変形性関節症の発症機序の解明と新規治療法の開発に貢献することを目的として、関節軟骨細胞におけるGDF5の役割および作用メカニズムの解明を目指した。

まずBMPファミリーメンバーの一員であるGDF5がBMP2と同様にSmadシグナル経路を活性化するか否かを検討したところ、GDF5はBMP2と同様にSmad1/5のリン酸化を促進した。GDF5とBMP2の生物学的作用の違いの有無を明らかにするために肢芽細胞と関節軟骨表層(SFZ)細胞におけるGDF5とBMP2の標的遺伝子をMicroarray解析により検索した。その結果、GDF5は、肢芽細胞およびSFZ細胞において、共通の標的遺伝子を多く有することが明らかとなった。一方GDF5は、BMP2と異なる標的遺伝子も多数有しており、GDF5特異的なシグナル伝達経路が深く関与していると推察される。さらに、GDF5に特異的な標的遺伝子は、肢芽細胞およびSFZ細胞で異なっていたので、GDF5特異的な標的遺伝子は、細胞種に依存しており、その発現の制御には、細胞それぞれによって異なるシグナル伝達あるいは転写制御機構が関与している可能性が考えられた。次に肢芽細胞およびSFZ細胞における GDF5とBMP2の生物学的作用の有無を検討した。GDF5はBMP2と同様に肢芽細胞およびSFZ細胞の双方に対して軟骨細胞への分化誘導作用を有したが、興味あることに、BMP2がSFZ細胞の石灰化を誘導したことに対し、GDF5は石灰化の誘導に対して効果を示さなかった。正常な関節軟骨細胞は肥大化・石灰化せずに分化段階を維持する。しかし変形性関節症では、関節軟骨細胞は肥大化し、石灰化し骨棘を形成することが明らかにされている。関節軟骨細胞が石灰化せずに、その分化段階を維持することは、変形性関節症の抑止に非常に重要な生物学的作用であ る。したがって、GDF5が軟骨細胞分化誘導作用を有するにも拘らず、石灰化機能を示さないことは、重要な知見であると示唆される。さらに、肢芽細胞とSFZ細胞の軟骨細胞分化に対するGDF5の効果を検索するために、軟骨分化マーカー遺伝子発現を指標にその結果をRT-qPCR解析にて検討した。その結果、GDF5がBMP2と同様に、肢芽細胞においてアルカリフォスファターゼ、インディアンヘッジホッグおよび10型コラーゲンの遺伝子発現を増加させたが、GDF5はBMP2と異なり、Mmp13、OsterixおよびRunx2の発現を増加させなかった。さらにSFZ細胞においては軟骨分化マーカー遺伝子に対して効果を示さなかった。この結果からも、GDF5はBMP2と異なり、関節軟骨細胞の肥大化および石灰化には関与しないことが示され、その作用はSFZ細胞でより顕著であることが遺伝子レベルでも確認された。さらにGDF5が関節軟骨細胞の恒常性を維持するメカニズムを検討するために、Gcff5-KOマウスを作製した。Gdf5-KOマウス由来SFZ細胞を用いてRNA-シークエンス解析を行った結果、Gdf5-KOマウス由来SFZ細胞では、マウス肢芽組織およびSFZ細胞で高発現しているPax1の発現が顕著に減少していた。この結果より、Pax1がGDF5の標的遺伝子として、下流で関節軟骨細胞の恒常性の維持に関与している可能性が示唆された。 本研究で作製したGdf5-KOマウスは関節の構造はほぼ正常であったものの、野生型のマウスより四肢や指が短縮しており、関節頭の縮小化を示した。Gdf5A伝子の欠失にも拘らず関節が形成された要因として、他の因子が代償的に機能している可能性が推察される。

以上の結果より、GDF5はBMP2と同じく、Smadシグナルを介して、軟骨細胞分化を促進させる機能を有するが、GDF5は関節軟骨のSFZ細胞においては、BMP2と異なり、石灰化を誘導せず、関節軟骨細胞の恒常性を維持するために重要な役割を担っていると考えられた。またそのメカニズムの一端として、GDF5により発現が制御されるPAX1が関与している可能性が示唆された。

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