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大学・研究所にある論文を検索できる 「18F標識フルオロデオキシグルコースPET-MRIによるメトホルミンによる腸管壁および内腔へのグルコースの用量依存的集積の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

18F標識フルオロデオキシグルコースPET-MRIによるメトホルミンによる腸管壁および内腔へのグルコースの用量依存的集積の解析

伊藤, 潤 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Dose-dependent accumulation of glucose in the
intestinal wall and lumen induced by metformin
as revealed by 18F-labelled fluorodeoxyglucose
positron emission tomography-MRI

伊藤, 潤
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8504号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482252
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Dose-dependent accumulation of glucose in the intestinal wall
and lumen induced by metformin as revealed by 18F-labelled
fluorodeoxyglucose positron emission tomography-MRI

18F

標識フルオロデオキシグルコース PET-MRI によるメトホルミンによる
腸管壁および内腔へのグルコースの用量依存的集積の解析

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
糖尿病・内分泌内科学
(指導教員:小川 渉 教授)
伊藤 潤

1. 導⼊
メトホルミンの⾎糖降下作⽤は、主に肝臓での糖新⽣の抑制によって得られると考えられ
ているが、近年では腸管に対しても複数の薬理作⽤を有することがヒトや実験動物を対象と
した研究で明らかにされてきた。それらの中には⼩腸からのグルコース吸収の阻害作⽤、嫌気
性代謝を介した腸管でのグルコース利⽤亢進作⽤、腸内細菌叢の変化などが含まれる。
⼀⽅、⾮代謝性グルコース誘導体である 18F 標識フルオロデオキシグルコース(
[18F]FDG)
を⽤いた PET-CT において、メトホルミン服⽤者では[18F]FDG の腸管への集積が促進す
ることが明らかになっており、本剤がヒト腸管のグルコース処理に影響を与えることが⽰唆
されている。
PET-MRI は、PET-CT と異なり、PET と MRI の画像を同時に取得できる、最近開発され
た画像診断法である。PET-MRI は、PET-CT と⽐較して、特に腸管のような運動性のある臓
器の場合、合成画像をより正確に解釈することができる。また、軟組織の分解能を有する。
PET-MRI のこれらの特徴を利⽤して、最近我々は、ヒトの腸管におけるメトホルミンによる
[18F]FDG の集積部位を、腸管壁と内腔を区別して検討し、腸管内腔に集積が⽣じていること
を発⾒した。このことから、メトホルミンは⾎液から腸管細胞へのグルコースの移⾏を促進す
るだけでなく、グルコースの腸管内腔への排泄も促進することが⽰唆された。
本研究では、我々が⾒出したメトホルミンの新規作⽤の臨床的意義を明らかにするために、
18

[ F]FDG PET-MRI を実施したメトホルミン投与中の 2 型糖尿病患者を対象に、様々な臨床
的変数とメトホルミンによる腸管への[18F]FDG 集積の関係を、腸管壁と内腔を区別して検討
した。
2. ⽅法
本研究はヘルシンキ宣⾔およびその修正条項に従って実施され、神⼾⼤学医学部附属病院
倫理委員会の承認を得た(承認番号:B190023)
。2016 年 4 ⽉から 2018 年 8 ⽉に神⼾⼤学医
学部附属病院で腫瘍の検出を⽬的として[18F]FDG PET-MRI を受けた 1246 ⼈のうち、244 ⼈
が 2 型糖尿病であり、この 244 ⼈のうち 50 ⼈が、メトホルミンによる治療を受けていた。こ
の 50 ⼈中、PET-MRI の反復で 5 ⼈、医療情報の不備で 1 ⼈、メトホルミン投与量に関する
情報の⽋損で 1 ⼈が本研究から除外された。さらに、PET-MRI の 48 時間以上前にメトホル
ミンを中⽌すると、腸管の[18F]FDG 集積に対するメトホルミンの効果が著しく低下すること
から、17 ⼈が除外された。したがって、26 ⼈が対象となった。
6 時間以上絶⾷した被験者に 2-[18F]fluoro-2-deoxy-D-glucose(3.5 MBq/kg)を静脈内投与
した 60 分後に全⾝ PET-MRI(Signa PET/MR; GE Healthcare, Waukesha, WI, USA)を撮像
した。PET 画像は定法により取得した。画像解析は、消化管における[18F]FDG の取り込みの
範囲と位置を評価するために、Advantage Workstation 4.7(GE Healthcare)を⽤いた。縦隔
と肝臓の⽣理的な[18F]FDG の取り込みに基づく Deauville 5 点スケールを参考に、5 点の視
覚的スコアリングシステムを⽤いた。すなわち、(a)背景⽔準、(b)⽣理的な縦隔の取り込み(⾎

液プール)より少ない、(c)縦隔の取り込みより⾼いが肝臓の取り込みより低い、(d)肝臓の取
り込みより若⼲から中程度⾼い、(e)肝臓の取り込みよりかなり⾼い、である。[18F]FDG の取
り込みの半定量的解析は、SUV (g/mL)=組織活性(Bq/mL)/[注⼊量(Bq)/体重(g)]として、
MRI で⽣成された関⼼領域のセグメント化した最⼤標準化取り込み値(SUVmax)の測定によ
り実施した。得られたデータは、領域 1 を低 T1 強調画像(T1WI)と低 T2 強調画像(T2WI)

領域 2 を低 T1WI と⾼ T2WI または⾼ T1WI と低 T2WI に分類し、SUVmax は腸管の各部位に
おいて、腸管壁と内腔の両⽅を評価した。⼩腸と⼤腸の[18F]FDG 集積は、回腸と空腸、右半
結腸と左半結腸でそれぞれ解析した。
データは平均値±標準偏差(SD)で⽰した。2 つの連続変数の相関は、ピアソンの相関解
析で評価した。⼤腸の壁または内腔の SUVmax とメトホルミン服⽤量の関係を調べるために、
潜在的交絡因⼦を補正して多変量線形回帰モデルを構築し、偏回帰係数と 95%信頼区間を⽰
した。統計解析にはすべて SPSS(バージョン 26、IBM Statistics)を⽤いた。P 値 0.05 未満
を統計的に有意とした。
3. 結果
被験者は、腫瘍の検出を⽬的として[18F]FDG PET-MRI を受けた。年齢 69.4±9.8 歳、肥満
度(BMI)24.2±4.0 kg/m2、HbA1c 値 7.5%±1.3%、推定⽷球体濾過量(eGFR)64.6±16.7mL
min-1 1.73 m-2 、検査当⽇の⾎糖値(BG)148.9±33.7 mg/dL、メトホルミン 1 ⽇服⽤量
759.6±335.3 mg であった。
まず、臨床的変数と、特定部位における[18F]FDG 集積の指標として頻繁に採⽤されている
SUVmax で評価した腸管の[18F]FDG 集積の関係を分析した。年齢、BMI および HbA1c 値は、
⼤腸の[18F]FDG 集積と相関しなかった。静脈内投与された[18F]FDG は⼤部分が尿中に排泄
され 、eGFR は⼤腸の[18F]FDG 集積と負の相関の傾向があった(r =−0.363, P = 0.069)。
検査時 BG は、⼤腸の[18F]FDG 集積と有意な負の相関を⽰し、BG が⾼いと⼀部の組織で
[18F]FDG の集積が抑制されるという知⾒と⼀致した。メトホルミン服⽤量は、⼤腸での
[18F]FDG 集積と有意な正の相関を⽰した( r = 0.552, P = 0.003)。⼀⽅、⼩腸における
[18F]FDG の集積は、検討したどの変数とも有意な相関がなく、メトホルミンによる[18F]FDG
の集積は主に⼤腸で起こるというこれまでの知⾒と⼀致した。
また、臨床的変数と経験豊富な 2 名の放射線科医が判定した⽬視スコアによる[18F]FDG 集
積の関係も検討した。両評価者による[18F]FDG の⼤腸への集積スコアは、検査時 BG および
メトホルミン投与量とそれぞれ負の相関(Ex1: r =−0.507, P = 0.008; Ex2: r =−0.425, P =
0.030)および正の相関(Ex1: r = 0.419, P = 0.033; Ex2: r = 0.460, P = 0.018)があった。年
齢と eGFR は、それぞれ⼀⽅の放射線科医だけが判定したスコアと負の相関があった。⼩腸
のスコアは検討したどの変数とも相関がなかった。
腸管壁と内腔を区別して解析すると、⼤腸の壁と内腔の両⽅の SUVmax とメトホルミン投与
量および eGFR はそれぞれ正の相関(r = 0.419, P = 0.033; r = 0.432, P = 0.027)および負の

相関(r =−0.407, P = 0.039; r =−0.448, P = 0.022)があった。検査時 BG は、壁の[18F]FDG
集積量とのみ負の相関があった。
最後に、多変数で補正した多変量解析を⾏った。モデル 0 ではメトホルミン投与量を唯⼀
の変数とし、モデル 1〜5 ではそれぞれ年齢、BMI、HbA1c 値、eGFR、検査当⽇の BG も変
数に含めた。すべてのモデルにおいて、メトホルミン投与量は、⼤腸の壁および内腔の両⽅で
[18F]FDG(SUVmax)集積の有意な説明因⼦であった。BMI、eGFR、検査時 BG も、それぞれ
壁と内腔の[18F]FDG 集積に対して有意な説明因⼦であった。
4. 討論
本研究では、⼤腸の壁および内腔における[18F]FDG の集積が、メトホルミン投与量と相関
することを明らかにした。また、多変量解析により、メトホルミン投与量は、潜在的な交絡因
⼦で調整後も、[18F]FDG 集積の説明因⼦であることが明らかになった。⼀⽅、検査時の BMI、
eGFR および BG は、壁の[18F]FDG 集積、eGFR と BG は内腔の集積に影響を与えると考え
られた。PET-CT 画像によりメトホルミン服⽤者の[18F]FDG の腸管への集積が亢進している
ことが明らかになってから 10 年以上が経過しているが、この現象とメトホルミン投与量の関
係についてはこれまで⾔及されていない。このような[18F]FDG 集積の⽤量依存的な性質は、
主にメトホルミンの薬理作⽤に起因するという考え⽅を⽀持する。
メトホルミンによる[18F]FDG の⼤腸内腔への⽤量依存的な集積を明らかにしたが、このこ
とは、内腔に排泄されたグルコースがすべて便として体外に出ることを必ずしも意味しない。
以前の研究で、放射性標識されたグルコースを⼤腸に投与しても、⾎液から分離したグルコー
ス中の放射活性は増加しないが、呼気中の⼆酸化炭素中の放射活性は増加し、この効果は抗⽣
物質の同時投与により阻⽌された。この結果は、⼤腸のグルコースが腸内細菌叢により代謝さ
れ、その結果⽣じた代謝物がある程度体内に吸収されることを⽰唆している。メトホルミンに
よって⼤腸内腔に排泄されたグルコースが、どの程度、どのような形で再吸収されるかはまだ
分かっていない。
結論として、我々はメトホルミンによる[18F]FDG の⼤腸の壁および内腔への集積の⽤量依
存的な性質を明らかにした。メトホルミンに反応して内腔へ排泄されるグルコースの絶対量、
および排泄されたグルコースの腸内細菌叢による代謝の解析は、メトホルミンの新規作⽤に
ついてのさらなる洞察をもたらすものと思われる。

神戸大学大学院医学(
系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
甲第

3248 号





受付番号

伊藤潤

18F標識フルオ ロデオキシグルコー ス P
ET-MRIによるメ

論文題 目

トホルミ ン

による腸管壁および内腔へのグルコースの用量依存的集積の解析

T
i
t
l
eo
f
Dose-dependentaccumulationo
fg
l
u
c
o
s
ei
nthe
D
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s
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e
r
t
a
t
i
o
n
i
n
t
e
s
t
i
n
a
lwallandlumeninducedbymetforminas
revealedby1
8
F
l
a
b
e
l
l
e
df
l
u
o
r
o
d
e
o
x
y
g
l
u
c
o
s
ep
o
s
i
t
r
o
n
emissiontomography-MRI

主 査
審査委員

Examiner

C
h
i
e
fExamin
e
r
副 査

1
c
e
e
x
a
m
1
n
e
r
V
i
副 査

1
c
e
-e
x
a
m
1
n
e
r
V
i


ら□
魯ニ

ー}柑度—

反が青}

(要旨は 1, 0 0 0字 ∼ 2, 0 0 0字程度)

1
.導 入
メ トホ ルミンの血糖降下作用は、主に肝臓での糖新生抑制により得られると考えられる
が、腸管に対しても薬理作用を有することが明らかにされてきた。 PET
MRI は、腸管の
ような運動性のある臓器の場合、合成画像をより正確に解釈することができる。本研究で
は、メトホルミンの新規作用の臨床的意義を明らかにするために、 [18F]FDGPET-MRI
を実施したメトホルミン投与中の 2型糖尿病患者を対象に、様々な臨床的変数とメトホル
ミンによる腸管への [18F]FDG集積の関係を 、腸管壁と内腔を区別して検討した。
2
. 方法

2016年 4 月から 2018年 8 月に神戸大学医学部附属病院で腫瘍の検出を目的として
[
1
8
F
]FDGPET-MRIを受けた 244人 の 2型糖尿病患者のうち 、50人がメトホルミンによ
る治療を受けていた。 PET-MRI の反復、医療情報の不備、メトホルミン投与量に関する
情報の欠損 、PET-MRIの 48時間以上前のメトホルミンを中止を除外した 26人 が対象と
なった。画像解析は 、縦隔と肝臓の生理的な [18F]FDGの取り込みに基づく D
e
a
u
v
i
l
l
e5
点スケールを参考に 、5点の視覚的スコアリングシステムを用いた。 [18F]FDGの取り込
みの半定量的解析は、 MRIで生成された関心領域のセグメント化した最大標準化取り込み
SUVmax) の測定により実施し、データは平均値土標準偏差 (
SD) で示した。 2つの
値 (
連続変数の相関は、 ピアソンの相関解析で評価した。大腸の壁または内腔の SUVmax と
メ.トホルミン服用量の関係を調べるために、潜在的交絡因子を補正して多変量線形回帰モ
デルを構築し、偏回帰係 数と 95
%信頼区間を示した。統計解析にはすべて SPSS (バージ

t
a
t
i
s
t
i
c
s)を用いた。 P値 0
.
0
5末満を統計的に有意とした。
ョン 26、IBMS
3
. 結果
被験者は、年 齢 6
9
.
4土9
.8歳 、肥満度 (
BMI)24.
2士 4
.
0kg/m2、HbAlc値 7
.
5%土 1
.
3%、
推定糸球体濾過量 (
eGFR
)6
4
.
6土16.7mLmin-I1
.
7
3m-2、検査当日の血糖値 (
BG)148.
9
土3
3
.
7mg/dL、メトホルミン 1日服用量 7
5
9
.
6土3
3
5
.
3mgであった。
まず、 SUVmaxで評価した腸管の [
18F]FDG 集積の関係を分析した。年齢、 BMIおよ
び HbAlc値は、大腸の [
18F]FDG集積と相関 しなかった。eGFRは負の相関の傾向が (
r=

-0
.
3
6
3
,P=0
.
0
6
9
)、検 査 時 BGは有意な負の相関を示した。メトホルミン服用量は、大
腸での [18F]FDG集積と有意な正の相関を示した (
r=0
.
5
5
2,
P=0
.
0
0
3)
。一 方、小腸にお
ける集積とは有意な相関がなかった。
また 、 目視スコアによる [
18F]FDG 集積の関係も検言寸した。両評価者による 大腸への集
積スコアは、検査時 BGおよびメトホルミン投与量とそれぞれ負 の相関 (
Exl:r=-0
.
5
0
7,

P=0
.
0
0
8;
Ex2:r=-0
.
4
25
,P=0.
03
0
) および正の相関 (
Exl:r=0
.
4
1
9,
P=0
.
03
3
;Ex2:r
=0
.
4
6
0,
P=0
.
0
1
8)があった。年齢と eGFRは、それぞれ一 方の放射線科医だけが判定し
たスコアと負の相関があった。小腸のスコアは検討したどの変数とも相 関がなかった。

腸管壁と内腔を区別して解析すると 、大腸の壁 と内腔の両方の SUVmax とメ トホル ミ
ン投与量および eGFRはそれぞれ正の相関 (
r=0
.
4
1
9,P=0
.
0
3
3
;r=0
.
4
3
2,P=0
.
0
2
7
)
および負の相関 (
r=-0
.
4
0
7
,P=0
.
0
3
9
;r=-0
.
4
4
8,
P=0
.
0
2
2
) があった。検査時 BGは

壁の [18F]FDG集積量とのみ負の相関があった。
最後に、多変数で補正した多変量解析を行った。モデル 0ではメトホルミン投与量を唯
、 e
GFR、検査当日の BG
ーの変数とし 、モデル 1 5ではそれぞれ年齢、BMI、HbAlc値
も変数に含めた。すべてのモデルにおいて 、メトホル ミン投与量は 、大腸の壁および内腔
の両方で [18F]FDG (SUVmax) 集積の有意な説明因子であった。 BMI、e
GFR、検査時

BGも、それぞれ壁と内腔の [18F]FDG集積に対して有意な説明因子であった。
4
. 考察および結論
本研究では 、大腸の壁および内腔における [18F]FDGの集積が、メトホルミン投与量と
相関することを明らかにした。また 、多変量解析により、メトホルミン投与量は 、潜在的
な交絡因子で調整後も、 [18F]FDG集積の説明因子であることが明らかになった。一方、
検査時の BMI、eGFRおよび BGは、壁の [18F]FDG集積、eGFRと BGは内腔の集積に
影孵を与えると考えられた。 このような [18F]FDG集積の用量依存的な性質は、主にメト
ホルミンの薬理作用に起因するという考え方を支持する。これらの観察は、内腔に排泄さ
れたグルコースがすべて便として体外に出ることを必ずしも意味しない。以前の研究で 、
放射性標識されたグルコースを大腸に投与すると呼気中の 二酸化炭素中の放射活性は増加
し、こ の効果は抗生物質の同時投与により阻止された。 この結果は、大腸のグルコースが
腸内細菌叢により代謝され、その結果生じた代謝物がある程度体内に吸収される ことを示
唆している。メ トホルミンによって大腸内腔に排泄されたグルコースが、どの程度、どの
ような形で再吸収されるかはまだ分かっていない。
本研究はメトホルミンによる [18F]FDGの大腸の壁および内腔への集積の用量依存的な
性質を明らかにした。メトホルミンに反応して内腔へ排泄されるグルコースの絶対量、お
よび排泄されたグルコースの腸内細菌叢による代謝の解析は、メトホルミンの新規作用に
ついてのさらなる洞察をもたらすものと思われる。
本研究は、メトホルミンが用 量依存的に大腸内腔への [
18F
]FDG 集積を誘導することを
明らかにし 、メトホルミンの新い薬理作用としての腸管内腔へのグルコース排泄作用、さ
らには新規のグルコース代謝経路の可能性を示した価値ある業績であると認める 。 よって
本研究者は 、博士(医学)の学位を得る資格があるものと認める 。

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