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大学・研究所にある論文を検索できる 「軽度認知障害患者の脳アミロイド沈着に対するフェルガード100Mの有効性」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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軽度認知障害患者の脳アミロイド沈着に対するフェルガード100Mの有効性

Matsuyama, Kenichi 神戸大学

2021.03.25

概要

目的:アルツハイマー型認知症(以下、AD)の発症については、認知症発症以前からアミロイドβタンパク(以下、Aβ)が大脳皮質に沈着し始めて、神経細胞を障害して徐々に認知機能の低下を招くという仮説が一般に信じられている。この仮説を前提にすれば、AD の前段階である軽度認知障害(以下、MCI)の段階でAβ の沈着を止めることができれば、AD の進行を抑えられる可能性がある。

フェルラ酸(以下、FA)は米や小麦の種子に含まれるポリフェノール類の一種であり、抗酸化作用や神経保護作用を有するとされている。また、ガーデンアンゼリカ(以下、AA)は、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持つとされる食用ハーブである。いくつかの動物実験や臨床研究において、FA がマウスの脳内Aβ 沈着を減少させたり、FA と AA が MCI患者の認知機能低下を改善したという報告がある。しかし、FA や AA がヒトの脳内Aβ 沈着に与える影響を調査した研究はこれまでにない。

本研究では、MCI 患者にFA100mg と AA20mg を含む健康補助食品フェルガード 100Mを 48 週間経口で投与し、フェルガード 100M のヒトの脳内Aβ 沈着に対する治療効果を評価し、臨床的有用性を検討することを目的とした。脳内 Aβ 沈着の評価には、[11C]PiB を標識薬として用いるアミロイドPET を用いた。

方法:本研究は神戸大学大学院医学研究科精神医学分野と先端医療センターとの多施設共同非盲検比較介入研究である。

神戸大学医学部附属病院精神科神経科外来において MCI と診断された患者を、患者の希望に基づいて介入群または対照群に割り付けた。スクリーニングテストとして、アミロイド PET、頭部 MRI、5 種類の認知機能検査(MMSE, ADAS-J cog, FAB, WMS-R 論理記憶の IA,IB)を行い、参加基準を満たさない患者は除外した。介入群にはフェルガード 100M を 48 週間投与し、非介入群にはフェルガード 100M の投与は行わず、経過観察のみとした。投与 24 週後に認知機能検査、48 週後にアミロイドPET、頭部MRI、認知機能検査を行 い、これらの検査結果の経時的変化を両群で比較した。評価項目は以下のとおりである。

主要評価項目:
・アミロイドPET における[11C]PiB の集積度の変化
[11C]PiB の集積度は、7つの興味領域(後部帯状回、前頭葉、側頭葉外側、頭頂葉外側、後頭葉、線条体、小脳を除く脳全体)における SUVR 値で示される。

副次的評価項目:
・頭部MRI における脳萎縮度の変化
脳萎縮度の評価には、Voxel を用いた統計解析ソフトウェアVSRAD を用いた。VSRADでは4つの指標(VOI 内萎縮度、全脳萎縮領域の割合、VOI 内萎縮領域の割合、萎縮比)が脳萎縮度を示す結果として出力される。ここで、VOI は側頭葉内側の関心領域を表す。
・認知機能の経時的変化
認知機能の評価には、5 種類の認知機能検査(MMSE, ADAS-J cog, FAB, WMS-R 論理記憶のIA,IB)の得点を用いた。

結果:最終的に 17 名の被験者が研究に参加し、内訳は介入群 10 名、対照群 7 名であった。すべての被験者が 48 週目の検査を完了した。両群で、年齢、男女比、ApoEε4 の保有率、スクリーニングテストの値等において有意差はなかった。

アミロイドPET の7つの関心領域すべてにおいて、両群の SUVR 値のベースラインから 48 週目までの平均変化量に有意差はなかった。

頭部MRI における脳萎縮度を示すVSRAD の4つの指標すべてにおいて、両群の指標値のベースラインから 48 週目までの平均変化量に有意差はなかった。

5 種類の認知機能検査の得点についてはベースラインから 24 週目までと、ベースラインから 48 週目までの平均変化量を両群で比較したが、いずれも有意差はなかった。

考察:本研究では、主要評価項目、副次的評価項目のいずれにおいても両群で有意差を認めなかった。

アミロイドPET の SUVR 値は、両群ともに大部分の被験者で軽度の増加傾向となり、これは FA と AA が脳内 Aβ の沈着に影響を及ぼさないことを示している。なお、凝集した Aβよりも神経毒性が強いと報告されているAβ オリゴマーはアミロイドPET では検出できないため、その影響について本研究では不明である。

SUVR 値に差がつかなかった理由として、すでにすべての被験者で Aβ 沈着がほぼ最大値に達していた可能性が考えられる。その場合に FA と AA の効果を調べるためには、より早期の段階の被験者を研究対象として、さらに長期間フォローアップする必要があるだろう。

先行研究では、FA を 6 か月間投与した遺伝子改変マウスで脳内Aβ が有意に低下したという報告があり、本研究の結果と一致しない。その理由としては、種の違い(ヒトとマウス)や測定法の違い(アミロイドPET と免疫学的測定)が考えられる。

VSRAD の指標値に関しては、群の違いによらず一部の被験者で改善が見られた。 VSRAD はもともとAD の早期診断のために開発されたソフトウェアであり、高い正確度、感度、特異度で早期AD 患者と健常者を鑑別することができる。しかし、その再現性については十分な検証がされておらず、本研究のように脳萎縮の経時的変化をみるのには適さない可能性がある。

本研究では 5 種類の認知機能検査の得点変化のいずれにおいても両群で有意差を認めなかった。しかし、先行研究ではFA と AA を 96 週間内服したMCI 患者でADAS-J cog の得点が改善したという報告があり本研究の結果と一致しない。その理由として、サンプルサイズの違い(本研究では 17 例、先行研究では 28 例を対象としている)や研究期間の違い(本研究では 48 週間、先行研究では 96 週間)が考えられる。さらに、いくつかの抗アミロイド薬の治験では、脳内Aβ 沈着の減少と認知機能の改善が必ずしも一致しないことが示されていることから、FA と AA が認知機能改善に効果がないと結論付けるのは早計である。
本研究の限界として、非盲検であること、計画したサンプルサイズに達しなかったことが挙げられる。

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