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書き出し

くも膜下出血後の症候性脳血管攣縮に対するナトリウム代謝ホルモンと血清ナトリウム値変動の影響

原田, 知明 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

The impact of hormonal dynamics and serum
sodium fluctuations on symptomatic vasospasm
after subarachnoid hemorrhage

原田, 知明
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8595号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482343
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)
学 位 論 文 の 内 容 要 旨

The impact of hormonal dynamics and serum sodium fluctuations
on symptomatic vasospasm after subarachnoid hemorrhage

くも膜下出血後の症候性脳血管攣縮に対するナトリウム代謝ホルモンと
血清ナトリウム値変動の影響

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
脳神経外科学
(指導教員:篠山隆司)
原田

知明

序文:
破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血(Subarachnoid hemorrhage; SAH)後に脳血
管 が 攣 縮 し 意 識 障 害や 様 々 な 神 経 脱 落 症状 を 呈 す る 症 候 性 脳血 管 攣縮
(Symptomatic vasospasm; SVS)は、SAH の予後を規定する重要な因子の 1 つ
である。SVS の発症予知は困難であるが、近年 SVS に先行して血清ナトリウ
ム値が低下し、これが SVS の発症予測につながることが指摘されている。し
かしその発生機序は解明されていない。血清ナトリウム値はナトリウム代謝
ホルモンの影響を受けるため、これらを測定すれば SAH 急性期に Na 値が変
動する病態を把握でき、SVS の発症予測に応用できる可能性があると考え多
施設コホート研究を実施した。
方法:
多施設コホート前向き研究を行い、SAH 発症急性期(2 週間)のナトリウム
代謝ホルモンを経時的に測定した。2017 年 9 月から 2020 年 8 月までの間に
神戸大学医学部附属病院,北播磨総合医療センター,公立豊岡病院,製鉄記
念広畑病院,兵庫県立姫路循環器病センターの 5 病院において、発症 24 時間
以内に開頭動脈瘤クリッピング術または血管内コイル塞栓術を行った脳動脈
瘤破裂 SAH 連続 133 症例を後方視的に検討した。患者情報,画像所見,入院
時 SAH の重症度を表す World Federation of Neurological Surgeons (WFNS) Grade,
CT でのくも膜下出血量を表す Fisher Group,SAH 発症 1 か月後時点での
modified Rankin scale (mRS)を調査した。発症日(Day 1),Day 7 および Day 13
の午前 7 時にナトリウム代謝関連ホルモンであるバソプレッシン(Arginine
vasopressin; AVP),副腎皮質刺激ホルモン(Adrenocorticotropic hormone; ACTH),
コルチゾール,脳性ナトリウム利尿ペプチド(Brain natriuretic peptide; BNP)
を測定し、SVS との関連を調査した。また発症日から 14 日間の血清ナトリウ
ム値と血清カリウム値,水分出納,1 日尿量,1 日ナトリウム摂取量,24 時
1

間の尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量を測定し、血清ナトリウム値は
SAH 発症後 14 日目まで 135mEq/L を下回らないよう補正した。
結果:
平均年齢は 63.8 歳、女性は 98 例で、WFNS Grade I, II が 95 例、治療は clipping
87 例/ coiling 46 例であった。133 人のうち、18 人(13.5%)はくも膜下出血発
症から 14 日以内に SVS を発症し(SVS 群)、115 人(86.5%)は SVS を生
じなかった(非 SVS 群)。SVS は SAH 発症後平均 9.67 ± 2.01 日で発症し
た。年齢、性別、WFNS Grade、Fisher Group、入院時の腎機能、動脈瘤の位置、
治療法は、SVS 群と非 SVS 群の間で差はなかった。1 か月後の転帰は、非 SVS
群の 58 人(50.4%)の転帰が良好(mRS スコア: 0 – 2)であった一方、SVS
群は 4 人(22.2%)が良好な転機を示し、SVS は1ヶ月後の予後を悪化させた
( p = 0.03)。SVS を生じた症例は SAH 発症日(Day 1)の血中 AVP,ACTH,
コルチゾールは非 SVS 群と比較して SVS 群で有意に高く、発症日以降低下
した。Day 1 の AVP,ACTH,コルチゾール値を用いて ROC 分析を行った結
果、AUC や p 値は ACTH で最も高い値が得られ(AUC = 0.75, p = 0.0014)、
SVS の発症予測に使用できる可能性が示唆された。また SAH 急性期 14 日間
の SVS 群の血清ナトリウム値の変動は、非 SVS 群より有意に大きく、Day 2
から Day 14 まで、血清カリウム値の推移はナトリウム値の推移と逆相関した。
Day1 の AVP,ACTH,コルチゾール値,SAH 急性期 14 日間の血清ナトリウ
ム値の変動幅,低ナトリウム血症( ≦ 135 mEq/L )などの単変量解析で有
意に異なる変数で、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて解析したとこ
ろ、血清ナトリウム値の変動幅が SVS の発生と有意に関連していた。
考察:
SAH 発症日の AVP,ACTH およびコルチゾール値は、SVS の発生の予測マー
カーと なりう るこ と が示さ れた。 現在 汎 用され ている WFNS Grade と
2

modified Fisher scale を組み合わせた VASOGRADE は遅発性脳虚血(狭義の
SVS)の予測スコアであるが、その AUC は 0.63 である。本研究における Day
1 の ACTH 値の AUC は 0.75 と過去の報告と比して劣っていない。また、多
変量ロジスティック回帰分析で血清ナトリウム値の変動幅が大きくなるほど
SVS 発症のリスクが高くなることが示された。ストレス下で AVP は下垂体前
葉 V1b 受容体を介して ACTH 分泌を促進する。本研究のホルモン及び血清
Na/K 値の推移から、動脈瘤破裂という過大なストレスにより過剰分泌された
AVP が視床下部下垂体副腎系(HPA axis; hypothalamic-pituitary-adrenal axis)の
過剰反応を誘導した結果、コルチゾールが過剰分泌され、高コルチゾール血
症が持つミネラルコルチコイド作用で血清 Na 値が一旦上昇し、コルチゾール
の低下とともにミネラルコルチコイド作用が低下、それに引き続き血清 Na 値
も低下したと考えた。SVS に先行する血清 Na 値低下は単に血清 Na 値が低下
するのではなく、コルチゾール過剰分泌によって上昇した血清 Na 値が血清コ
ルチゾール低下と並行して低下する血清 Na 値のダイナミックな変動の一部
をみている可能性が示唆された。
結語:
SAH 発症日に ACTH を測定することで SVS の発症を予測できる可能性が示
唆された。また SAH 急性期の血清ナトリウム値の変動幅が大きいほど SVS
を発症しやすいことが示され、その発生機序については HPA axis の過剰反応
が関与している可能性が示唆された。これらの結果により SVS の発症予測を
行うことで、SAH 患者の予後を改善することができると考えられる。
(2513 文字)

3

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

論文題目

T
i
t
l
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f
D
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s
s
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r
t
a
t
i
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受付番号

甲 第 3260号



原田知明

Theimpacto
fhormonaldynamicsands
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odiumf
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n
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onsymptomaticvasospasma
f
t
e
rsubarachnoidhemorrhag
e
くも膜下出血後の症候性脳血管攣縮に対するナトリウム代謝ホルモ
ンと血清ナトリウム値変動の影響

主 査

審査委員

Examiner

C
h
i
e
fExaminer
副 査

濱J 少ネ摩ニ


Aシ
v
1
c
e

e
x
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m
1
n
e
r
副 査

v
1
c
e・
exam
1
n
e
r



グン

ぐ化〗/ こ

(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)


背 景】
o
i
dhemorr
ha
g
e
; SAH) 後に脳血管が糊縮し意識障害や
破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血 (Subarachn
Symp
tomat
i
cvasospasm;SYS) は、SAHの予後を規定
様々な神経脱落症状を呈する症候性脳血管餓縮 (

する重要な因子の lつである。 SYSの発症予知は困難であるが、近年 SYSに先行して血清ナトリウム
値が低下し、これが SYSの発症予測につながる ことが指摘されている。しか しその発生機序は解明され
ていな い。血清ナトリ ウム値はナトリウム代謝ホルモンの影密を受けるため、これらを測定すれば SAH
急性期に Na値が変動する病態を把握でき 、SYSの発症予測に応用できる可能性があると考え多施設コ
ホート研究を実施 した



方 法】
201
7年 9月から 2020年 8月までの間に神戸大学医学部附属病院,北播磨総合医療センター,公立豊

岡病院,製鉄記念広畑病院,兵庫県立姫路循環器病センターの 5病院において、発症 24時間以内に開
頭動脈瘤クリッヒ°ング術または血管内コ イル塞栓術を行った脳動脈瘤破裂 SAH連 続 133症例を後方視
的に検討した。患者情報,画像所見,入院時 SAHの重症度を表す WorldF
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onofNeurologica
lSurgeon
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(WFNS)G
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,CTでのくも膜下出血砿を表す Fi
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rGroup,SAH発症 lか月後時点での mo
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iedRankin
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c
al
e(mRS)を調査 した。発症日 (
Day1
)
, Day7お よ び Day1
3の午前 7時にナトリウム代謝関連ホルモ
g
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n;AVP),副 喘 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン (
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ン で あ る バ ソ プ レ ッ シ ン (Ar
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p
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de;BNP
) を測定
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r
mon
e
;ACTH), コルチゾール, 脳 性ナトリウム利尿ペプチド( B




s
v
sとの関連を調査した。また発症日から

1
4 日間の血滑ナトリウム値と血清カリウム値,水分出


, 1 日尿絋, 1 日ナトリウム摂取量,24 時間の尿中ナトリウムおよびカリウム排泄品を測定し 、血
4 日目まで 135mEq
/
Lを下回らないよう補正した。
清ナトリウム値は SAH発症後 1


結 果】
平均年齢は 63.
8歳、女性は 98例で、 WFNSGradeI
,Iが 95例
、 治療は cl
i
p
pi
ng87例/c
o
il
i
n
g46例で
あった。 1
33人のうち 、1
8人 (
I
3.5%)はくも膜下出血発症から 1
4 日以内に SYS を発症し (
SYS 群


11
5人 (
86.
5%
) は SYS を生じなかった(非 SYS群)。年齢、性別、 WFNSGrade、 F
i
s
h
e
rGroup、入院

時の腎機能、動脈瘤の位置、治療法は、 SYS群と非 SYS群の間で差はなかった。 ]か月後の転帰は、
非 SYS群の 58 人 (
50.4%)の転帰が良好 (
mRS スコア :
0-2) であった一方
、 SYS群は 4人 (
22.2%
)
が良好な転機を示し、 SYSは 1ヶ月後の予後を悪化させた (p=0.
03)
。 SYSを生じた症例は SAH発症
日 (
DayI
) の血中 AVP, ACTH, コルチゾールは非 SYS 群と 比較して SYS 群で有意に高く 、発症日
以降低下した。 Day 1の AVP,ACTH, コルチゾール値を用いて ROC分析を行った結果、 AUCや p値
は ACTH で最も高い値が得られ (
AUC= 0
.
7
5,
p= 0.0014)、SYSの発症予測に使用できる可能性が示唆
された。また SAH急性期 ]
4 日間の SYS群の血清ナトリウム値の変動は、非 SYS群 より有意に大き く

Day 2 か ら Day 1
4まで、血清カリウム値の推移はナ トリウム値の推移と 逆相関した。 Da
ylの AVP,
ACTH , コルチゾール値, SAH 急性期 14 日間の血清ナ トリウム値の変動幅,低ナトリウム血症( ~ 1
3
5

mEq
/
L )などの単変最解析で有意に異なる変数で、多変蔽ロジスティック回帰モデルを用いて解析した

ところ、血清ナトリウム値の変動幅が SYSの発生と有意に関連していた。


考察 】
SAH発症日の AVP,ACTHおよびコルチゾール値は、 SVSの発生の予測マーカーとなりうることが

示された。現在汎用されている WFNSGrade と m
o
d
i
f
i
e
dFi
s
h
e
rs
c
a
l
eを組み合わせた VASOGRADEは遅
発性脳虚血(狭義の Svs) の予測スコアであるが、その AUC は 0
.
6
3である。本研究における Day1の
ACTH値の AUCは 0
.
7
5 と過去の報告 と比して劣っていない。 また 、多変量ロジスティック回帰分析で

血清ナトリウム値の変動幅が大きくなるほど svs 発症のリスクが高くなることが示された。 ストレス
下で AVPは下垂体前葉 Vl
b受容体を介して ACTH分泌を促進する。本研究のホルモン及び血清 Na
/K
値の推移から、動脈瘤破裂という過大なス トレスにより過剰分泌された AVP が視床下部下垂体副腎系
(
HPAa
xi
s
;hypotha
l
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m
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c
p
i
t
u
i
t
a
r
ya
d
r
en
a
laxi
s
) の過剰反応を誘迎した結果、コルチゾールが過剰分泌さ

れ 、高コルチゾール血症が持つミネラルコルチコイド作用で血清 Na値が一旦上昇し、コルチゾールの
低下とともにミネラ ル コルチコイド作用が低下、それに引き続き血清 Na値も低下したと考えた。 svs
に先行する血消 Na値低下は単に血清 Na値が低下するのではなく、コルチゾール過剰分泌によって上
昇した血清 Na値が血清コルチゾール低下と並行して低下する血清 Na値のダイナミックな変動の一部
をみている可能性が示唆された。


結 語】
SAH発症日に ACTHを測定することで SYSの発症を予測できる可能性が示唆された。また SAH急性

期の血清ナ トリウム値の変動福が大き いほど SYS を発症しやすいことが示され、その発生機序につい
ては HPAax
isの過剰反応が関与している可能性が示唆された。 これ らの結果により SYSの発症予測を
行うことで、 SAH患者の予後を改善することができると考えられる。

本研究は、くも膜下出血発症後のナ トリウム代謝ホルモンおよび血清ナトリウム値の動態と 、くも膜
下出血後の症候性脳血管煉縮発症との関連を 明 らかにし、ナトリウム代謝ホルモンの測定による症候性
脳血管蛾縮の発症予測の可能性を示した価値ある業績であると認める 。 よって本研究者は、博士(医学)
の学位を得る資格があるものと認める

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