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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dilatation of the endolymphatic space in the ampulla of the posterior semicircular canal: A new clinical finding detected on magnetic resonance imaging」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Dilatation of the endolymphatic space in the ampulla of the posterior semicircular canal: A new clinical finding detected on magnetic resonance imaging

森岡, 優 名古屋大学

2021.04.23

概要

【緒言】
 蝸牛および前庭の内リンパ水腫は、3-テスラ造影MRIを使用して可視化されるようになった。内耳症状のある患者に造影MRIを施行すると、後半規管膨大部の内リンパ腔の拡張が検出されることがあるが、このような拡張所見は通常、前庭あるいは蝸牛の内リンパ水腫が著明な耳でも見られない。メニエール病患者の内耳の組織学的研究を含む、後半規管膨大部における内リンパ腔拡張に関連する臨床症状の報告は過去にない。本研究では、そのような後半規管膨大部内リンパ腔拡張に関連する臨床症状に焦点が当て、この病因の特定を試みた。

【対象および方法】
 2013年8月から2018年12月の間に名古屋大学附属病院耳鼻咽喉科で内リンパ水腫の精査目的でMRIを受けた患者934人(男性381人、女性553人、年齢範囲11〜90歳)の1,842耳を対象とし、めまいの有無を含んだ詳細な問診と鼓膜所見の評価および聴力検査を行った。純音聴力検査はRION社製AA-79Sを用い、250、500、1000、2000、4000Hzの5周波数の気導および骨導聴力を測定した。MRIは、3テスラのSiemens社製TrioまたはVerioを使用し、標準用量のガドジアミド水和物の静脈内注射の4時間後、または8倍希釈のガドペンテト酸ジメグルミンの鼓室内注射の24時間後に撮影した。Hybrid of reversed image of positive endolymph signal and native image of positive perilymph signal(HYDROPS)のシークエンスを用いて、内リンパ水腫を特定した。臨床情報を知らされていない放射線科医が、中島らの判定基準に従って、前庭と蝸牛の内リンパ水腫の程度を3つのグレード(なし、軽度、著明)に分類した。内リンパ水腫の程度は画像をトレースすることによって測定され、膨大部内リンパ腔が拡張した症例は、放射線科医の読影に基づいて特定された。代表的な画像として後半規管膨大部内リンパ腔の正常例をFigure1に、拡張例をFigure2に示す。
 長期間の経過もしくは病脳感の強いめまい患者には、頭位的眼振検査やビデオ眼球運動検査を行った。メニエール病および遅発性内リンパ水腫の診断は、中島らの基準通りに行った。本研究の除外基準は鼓膜の異常、中耳炎の既往歴、中耳・内耳の術後症例、およびMRI撮影前後3か月で聴力測定が施行されていない症例とした。
 統計分析は、IBM SPSS Statistics 25を使用して実施し、P値<0.05を有意とした。マンホイットニーのU検定を用いて、グループ間の年齢と聴力閾値を比較した。性差はχ2検定を用いて比較した。

【結果】
 1842耳のうち、48耳(男性24名、女性24名、平均年齢49.9歳)で後半規管膨大部内リンパ腔の拡張を認めた。うち14耳が片側、34耳が両側であった。これらの耳の比較データをTable1に示す。診断は10耳でメニエール病、5耳で変動性難聴、5耳で急性感音難聴、11耳で慢性感音難聴、5耳で耳硬化症、7耳で急性感音難聴またはメニエール病の対側例(メニエール病4例および感音難聴3例)。片側拡張群にはメニエール病3例(片側メニエール病の1例と両側メニエール病の2例)があり、両側性拡張群にはメニエール病7例(片側メニエール病の3例と両側メニエール病の4例)が含まれた。耳硬化症の症例は、両側群でのみ見られた。
 内リンパ腔拡張の片側群と両側群を比較すると、平均年齢および慢性感音難聴の割合は、両側群よりも片側群で有意に高かった(それぞれ57.6対47.0y、42.9対14.7%)が、性別分布、蝸牛または前庭内リンパ水腫グレード、および平均聴力閾値は、両群間で有意差はなかった。急性感音難聴と耳硬化症は両側群でのみ見られたが、有意差はなかった。
 めまいの訴えは、48耳中23耳にあり、両群間に有意差はなかった。6人の患者はさらに前庭検査を受け、4人の患者は自発性または定位眼振を示したが、特定の傾向はなかった。後半規管膨大部内リンパ腔の両側性拡張があり、仰臥位で頭位性眼振を示した代表的な症例をFigure3に示す。この患者の頭を左右に45度回転させると、右成分のより速い眼振が誘発された。潜時や疲労性減弱はなかった。エアカロリックテスト、頸部前庭誘発筋電位、および眼前庭誘発筋電位を評価したが左右の耳の間に有意差はなかった。

【考案】
 内リンパ水腫はメニエール病の耳の組織学的に特徴的な所見であるが、MRI評価の最近の進歩により、生きている人の内リンパ水腫を視覚化でき、半規管の内リンパ水腫を含む多くの調査が報告されている。本研究では、体系的に調査された病変ではない、後部半規管の膨大部の内リンパ空間の拡張に焦点が当てられた。私たちの予備調査では、そのような位置特定の理由は不明だったが、そのような拡張がある耳のほとんどすべてが後半規管に限られていることがわかった。
 各半規管の一端には、膨大部と呼ばれる嚢状の部位が存在し、膨大部は厚いゼラチン状のクプラと多くの有毛細胞で構成されている。MRIの調査結果は、内リンパの蓄積が後部半規管の膨大部の内リンパ空間の拡張を引き起こしたことを示唆している。解剖学的には、後半規管の卵形嚢と膨大部の間には、卵形嚢-膨大部管があり、これは線形ではなく側頭骨標本では歪んでいる。半規管の狭窄は、膨大部から卵形嚢への内リンパの流れを悪化させ、後半規管膨大部の内リンパ腔拡張に発展する可能性がある。耳石が後半規管膨大部のクプラと卵形嚢の間に発生するshort-arm型後半規管良性発作性頭位めまい症は、卵形嚢に向かう内リンパ流を変化させ、拡張を引き起こす可能性がある。反対に、拡張自体が病変の膨大部とクプラの機能に影響を与えて、めまいを引き起こす可能性も考えられる。
慢性感音難聴の割合は、両側群よりも片側群で有意に高かった。難聴を引き起こすいくつかの要因は、後半規管膨大部の内リンパ腔拡張につながった可能性がある。一部の患者は、自発的または頭位性眼振を示したが、特定の傾向は認めなかった。前庭水腫の存在は、後半規管膨大部の内リンパ腔拡張を伴う耳では稀であった。
 後半規管膨大部の内リンパ腔拡張と後半規管への前庭内リンパ水腫ヘルニアは混同されることがある。MRIで検出された後半規管へのヘルニアの画像所見は通常、前庭に明瞭な黒い領域として示される。杉本らは、そのようなヘルニアのあるほとんどの耳は重度の蝸牛および前庭水腫を有し、後半規管へのヘルニアのほとんどは総脚側に位置していたと報告した。さらに、聴力閾値の上昇および蝸牛または前庭の内リンパ水腫の程度は、後半規管膨大部拡張例よりもヘルニア例でより顕著である。

【結論】
 病因は明らかではないが、膨大部の内リンパ腔の拡張が後半規管で選択的に観察された。この所見は通常、前庭水腫とは関連がなく、別のタイプのめまいの原因となる可能性がある。

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