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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effects of endolymphatic hydrops on acoustic energy absorbance」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effects of endolymphatic hydrops on acoustic energy absorbance

小林, 万純 名古屋大学

2022.07.01

概要

【背景と目的】
内耳は側頭骨の迷路骨包に包まれており、蝸牛、前庭、三半規管の3部があり、互いに交通し外リンパを満たし、その中に膜迷路がある。膜迷路の中は内リンパで満たされている。内リンパ水腫とは、何らかの原因によって内リンパの過剰産生または吸収障害が生じ、内リンパ腔の腫大を認める状態であり、めまい・難聴などの症状をきたすことで知られている。内リンパ水腫の存在は、ガドリニウム造影4時間後の3テスラ内耳MRIによって、可視化が可能となり評価されてきた。

メニエール病の本態は内リンパ水腫である。難聴はメニエール病の主症状の一つであり、著明内リンパ水腫例においては250Hzに気骨導差を認めることがあると報告されている。内リンパ水腫の存在が内耳への音響エネルギーの伝達に影響を与えることで難聴の一因となっている可能性がある。

Wideband Tympanometry(WBT)はプローベを外耳道に挿入し広帯域の周波数のクリック音を放出し、放出した音響エネルギーと鼓膜で反射した音響エネルギーを測定することで、中内耳方面への音響エネルギーの吸収率(アブソーバンス)を算出することができる検査である。

特に前庭の内リンパ水腫に着目し、WBTを使用して音響エネルギーのアブソーバンスを測定し、内リンパ水腫が音響エネルギーの耳内への伝達に与える影響について評価した。

【方法】
2017年4月から2018年3月までに名古屋大学医学部附属病院耳鼻咽喉科を受診した、難聴・めまい症状を繰り返す16人(32耳)を対象とし、MRIにて前庭の内リンパ水腫の程度(なし・軽度・著明)を評価し、グリセロール点滴治療前後の聴力と、WBTを使用して測定したアブソーバンスを比較した。

対象患者には経静脈的にガドリニウム造影剤を0.1ml/kg投与し4時間後にHYDROPS法にて内耳3テスラMRIの撮影をおこない内リンパ水腫の程度を評価した。前庭の内リンパ水腫は、名古屋大学では内リンパ腔が前庭の内外リンパ腔の1/2以上を占める場合著明前庭内リンパ水腫、1/2-1/3を軽度水腫、1/3以下を水腫なしと評価分類されている。(Fig.1)

WBTはInteracoustic社のTitan WBTを使用して、peak pressureとambient pressureにおける250~8000Hzにおける音響エネルギーのアブソーバンスを測定した。WBTは同一検者によって最低2回以上プローベを挿入し直して検査し、結果が同一であることを確認した。

グリセオール200mlを2時間かけて静脈内注射し、その前後での標準純音聴力検査とWBTによるアブソーバンスを測定した。

【結果】
16症例の年齢は35歳から81歳、中央値は56歳であった。病名の内訳はメニエール病(確実例・疑い例)10例、遅発性内リンパ水腫2例、前庭水管拡大症2例、特発性両側性感音難聴1例、変動する一側性感音難聴1例であった。

鼓膜所見およびCT・MRIにて中耳腔に異常所見はなく、Tympanogram A Typeであり、peak pressureとambient pressureにおいてアブソーバンスに差はなかった。前庭に著明な内リンパ水腫を持つ群(19耳)は、内リンパ水腫なし、もしくは軽度の非著明内リンパ水腫群(13耳)よりも有意に気導聴力閾値と骨導聴力閾値、250、500Hzの気骨導差が高く、低音域(560〜600Hz)でアブソーバンスが有意に高く、中音域では低かった。(p<0.05)(Fig.2)

グリセオール点滴前後で自覚症状に変化があった症例は16例中5例であった。著明前庭内リンパ水腫群は非著明内リンパ水腫群よりもより気導聴力閾値が変化し、500Hz、2000、4000Hzの気骨導差が変化した。著明内リンパ水腫群は非著明内リンパ水腫群よりもアブソーバンスが点滴前後で変化し、特に低音域(400~440Hz)や中音域(3100~3200、3500~3600Hz)でアブソーバンスが変動した。(p<0.05)(Fig.3)グリセオールの点滴前後では純音聴力検査に変化を認めなかった症例でもアブソーバンスの変化が観察された。

【考察】
著明前庭内リンパ水腫群が非著明内リンパ水腫群と比較して聴力閾値、特に低音域での気骨導差が大きいものの、低音域のアブソーバンスが高いことから、前庭の著明な内リンパ水腫により効果的な内耳への音響エネルギーの伝達が妨げられている可能性がある。内リンパ水腫による外リンパ圧の亢進や、肥大した球形嚢が卵円窓に接触することで、底板の可動性が減弱し気骨導差が上昇することや、隣接する膜迷路を介して音響エネルギーが蝸牛に伝達するために骨導閾値が低下することによると考えられた。

内リンパ水腫の治療に用いられ効果を及ぼすと考えられるグリセオールの点滴にともない著明前庭内リンパ水腫群において特に聴力閾値やアブソーバンスの変動が観察され、また症状・聴力閾値には表れない治療効果も捉えることができたことから、WBTを用いて容易に短時間で内リンパ水腫の経時的な変化を評価することができる可能性がある。グリセオール点滴を行ったにもかかわらず、聴力閾値・アブソーバンスの変動のない症例には二次的な変成に伴う内リンパ水腫症例も含まれていると考えられる。

【結論】
著明前庭内リンパ水腫症例では、内リンパ水腫によって音響エネルギーの中内耳への伝導障害が起こると考えられ、特に低音域の気骨導差が生じている可能性がある。また内リンパ水腫に対する治療にともなうアブソーバンスの変動は、内耳への伝導障害の改善を示していると考えられ、聴力検査では捉えられない変化もWBTにより音響エネルギーの変動として捉えることができると考えられる。

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