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大学・研究所にある論文を検索できる 「小胞体とミトコンドリアにおけるホスファチジルセリン脱炭酸酵素量の調節」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

小胞体とミトコンドリアにおけるホスファチジルセリン脱炭酸酵素量の調節

藤井, 悟 FUJII, Satoru フジイ, サトル 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Regulation of phosphatidylserine decarboxylase
abundance in the ER and mitochondria
藤井, 悟

https://hdl.handle.net/2324/6787417
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(理学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)







論 文 名









藤井



Regulation of phosphatidylserine decarboxylase abundance in the
ER and mitochondria
(小胞体とミトコンドリアにおけるホスファチジルセリン脱炭酸酵素
量の調節)















本論文は、出芽酵母におけるホスファチジルセリン脱炭酸酵素の細胞内存在量の調節メカニズム
を明らかにしたものである。以下にその概要を示す。
生命の基本単位とも呼ばれる細胞は、その内外を生体膜によって隔てられている。生体膜の基本
骨格は脂質二重層でありその多くはリン脂質から構成されている。また生体膜の脂質組成は膜の物
性や機能に大きな影響を与えるため、細胞膜や細胞小器官ごとに適切に制御されている。そして生
体膜の脂質組成は、真核細胞においてリン脂質合成酵素の細胞内局在と脂質の輸送に非常に依存し
ている。従って、リン脂質合成酵素の細胞内局在および脂質の輸送を含む細胞内リン脂質代謝機構
の詳細解明は、非常に意義のあるものである。
リン脂質はその極性基の違いにより様々なクラスに分類され、そのクラスごとに細胞内で担う役
割が異なると考えられている。例えばホスファチジルエタノールアミン(PE)はオートファジーや
膜融合などの細胞内プロセスや、ホスファチジルコリン(PC)生合成の前駆体として細胞の生存に
必須である。また、PE 生合成の異常は、哺乳動物における脂質代謝異常症との関連や胚性致死と
なることが報告されており、細胞内での PE 生合成機構の解明は生理的に重要である。本研究では
遺伝学的解析が容易で、ヒトと同じ真核生物の最も単純なモデルである出芽酵母を用いた。出芽酵
母では、PE は大きく 2 つの経路によって生合成されている。培地中のエタノールアミン(Etn)を
前駆体とするケネディ経路と、細胞内に存在するホスファチジルセリン(PS)の脱炭酸による PS
脱炭酸経路である。PS 脱炭酸経路には、ミトコンドリアに局在する PS 脱炭酸酵素 1(Psd1)とエ
ンドソームに局在する PS 脱炭酸酵素 2(Psd2)の 2 つの経路が存在するが、大部分の PS 脱炭酸
は Psd1 が担っている。また興味深いことに、近年 Psd1 が小胞体膜上にも局在することが報告され
た。先述した通り、生体膜の脂質組成は、リン脂質合成酵素の細胞内局在と脂質の輸送に非常に依
存している。従って、現在までに考えられてきた細胞内 PE の生合成や代謝についても再考し検証
する必要がある。
そこで本研究では、Psd1 依存的な PE 生合成機構の解明を試みた。その結果、小胞体膜上に局在
する Psd1 の重要性を明らかにし、さらに細胞内での様々な機能が小胞体とミトコンドリアに局在
する Psd1 量を調節していることを明らかにした。以下に詳細を示す。
まず初めに、Psd1 依存的な PE 生合成に関与する因子を、遺伝学的スクリーニングにより約 4,800
種類の因子の中から検索した。その結果、小胞体膜タンパク質 Ice2 を同定した。Ice2 欠損酵母で
は①生育の低下②Psd1 依存的な PE 合成の低下③小胞体およびミトコンドリアに局在する Psd1 量
の低下が示された。一方で、Psd1 がミトコンドリアのみに局在する変異酵母では、Ice2 の欠損に
よる生育低下及び Psd1 依存的な PE 合成低下は示されなかった。このことから、Ice2 が小胞体に

局在する Psd1 を介した PE 生合成に関与し、小胞体での PE 合成が生育に重要であることが示唆さ
れた。
Ice2 はホスファチジン酸(PA)量を調節しているタンパク質であり、その欠損により PA からジ
アシルグリセロール(DAG)への変換が促進される。一方で、Ice2 欠損酵母とは反対に、その欠損
により PA から DAG への変換を抑制する因子として小胞体膜タンパク質 Nem1 が存在する。従っ
て、Nem1 欠損酵母についても Psd1 依存的な PE 合成及び細胞内 Psd1 量について検証した結果、
Psd1 依存的な PE 合成と小胞体に局在する Psd1 の量が著しく増加していた。また Ice2 及び Nem1
欠損酵母では、Psd1 の遺伝子発現量や分解速度について変化は示されなかった。さらに、
PA と Psd1
の関係について解明するため、Psd1 のリコンビナントタンパク質を用いて PA との結合の有無を検
証した結果、PA と Psd1 の結合が示された。このことから、生体膜上の PA に Psd1 が結合するこ
とが強く示唆された。従って以上の結果より、小胞体に局在する Psd1 量が、PA と DAG の変換に
よる PA 量の増減によって調節されていることを明らかにした。
Psd1 はミトコンドリアターゲティングシグナルが内在し、本来はミトコンドリアのみに局在する
タンパク質であり、小胞体膜上での安定化の詳細なメカニズムについては未解明な点が多く存在す
る。例えば小胞体に局在する Psd1 は生理的に重要である一方で、ミトコンドリア内膜に局在する
Psd1 と比較して、定常状態におけるタンパク量が極めて少ない。その原因として、小胞体膜上の
Psd1 は代謝回転が非常に速いことが考えられる。本研究では、小胞体に局在する Psd1 はミトコン
ドリアに局在する Psd1 と比較して分解速度が著しく速いことを見出している。小胞体において異
常タンパク質が分解される機構として小胞体関連分解(ER associated degradation:ERAD)が存
在する。これら ERAD 関連因子について検証した結果、小胞体に局在する Psd1 が小胞体膜タンパ
ク質 Hrd1 依存的な ERAD を介して分解されていることを明らかにした。
さらに Psd1 のミトコンドリアへの取り込みには、ミトコンドリア局在タンパク質のミトコンド
リア内への取り込みに関与する因子 Djp1 が必要であり、さらに Djp1 の欠損により小胞体に局在す
る Psd1 が増加することを明らかにした。また、遺伝子発現と小胞体に局在する Psd1 量についても
検証した。その結果、遺伝子発現が著しく増加する条件下において、小胞体に局在する Psd1 量に
影響は与えないが、前述した Psd1 の小胞体局在に関連する因子 Nem1、Hrd1、Djp1 を全て欠損
した酵母では、小胞体に局在する Psd1 は 15 倍の量に増加していることを明らかにした。
以上より本研究では、小胞体及びミトコンドリアに局在する Psd1 量の調節には、PA 合成、遺伝
子発現、タンパク質分解、ミトコンドリアへのタンパク質局在機構といった様々な細胞内プロセス
がそれぞれ協調して関与していることを明らかにした。

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