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大学・研究所にある論文を検索できる 「小胞体における不良膜タンパク質の選択的オートファジー分解機構の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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小胞体における不良膜タンパク質の選択的オートファジー分解機構の解析

林, 裕輝 東京大学 DOI:10.15083/0002005180

2022.06.22

概要

小胞体は膜タンパク質の合成の場で、新たに翻訳された膜タンパク質の前駆体はまず、小胞体においてフォールディングを受ける。正常な立体構㐀を獲得したタンパク質は小胞体から搬出されて様々なオルガネラで機能する一方、フォールディングに失敗したものは不良膜タンパク質として小胞体に蓄積する。ユビキチン-プロテアソーム系依存的なEndoplasmic reticulumassociated degradation (ERAD)は小胞体における不良膜タンパク質の重要な分解経路であり、その詳細は解明されつつある。近年ではERADに加え、オートファジーも小胞体においていくつかの不良膜タンパク質の分解を担うことが報告されている。しかし、その分子メカニズムはほぼ未解明である。

そこで本研究においては、小胞体の不良膜タンパク質がオートファジー分解へとターゲティングされる詳細な分子メカニズムを解明することを目的とした。まず、解析を容易に進めるため、シンプルな構㐀を持つartificialな小胞体膜局在モデルオートファジー基質の作成を試みた。その結果、細胞質オートファジー基質であるα-synucleinのパーキンソン病関連A53T変異体を、小胞体膜タンパク質Extended synaptotagmin1(E-Syt1)由来のhairpin領域を用いて小胞体膜に繋留することで、細胞質側にフォールディング不全を持つモデル基質A53T-HPの作成に成功した。A53T-HPはnativeな小胞体膜タンパク質E-Syt1と比べて㏿やかに、かつ基質ユビキチン化を介して不良膜タンパクとして選択的にリソソーム分解された。また、A53T-HPのリソソーム分解にはオートファジーレセプターToll-interacting protein (TOLLIP)が必要で、かつTOLLIPは基質のユビキチン鎖を認識するcoupling of ubiquitin to endoplasmic reticulum degradation (CUE)ドメイン依存的にA53T-HPのリソソーム分解を促進した。以上の結果より、小胞体において不良膜タンパク質がユビキチン化され、TOLLIPによりオートファジーへとターゲティングされるという新たなタンパク質品質管理機構の存在が示唆された。さらにA53T-HPの分解には、小胞体の断片がオートファジー分解されるER-phagy機構に関わるERphagyレセプターcell-cycleprogression gene1(CCPG1)が必要であった。現在のところTOLLIPによるユビキチン化不良膜タンパク質の選別とCCPG1依存的なER-phagyとの関連性は未解明であり、本論文ではこの点に関する仮説を詳細に議論する。

重要なこととして、TOLLIPはartificialな基質A53T-HPのみならず、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症においてみられるgonadotropin-releasing hormone receptor (GNRHR)E90K変異体の小胞体膜上凝集体のリソソーム分解を促進した。小胞体膜上での変異膜タンパク質の凝集は様々な疾患の原因となりうることが報告されているため、TOLLIP依存的なリソソーム分解の促進は疾患の新たな治療戦略となりうると考えられる。

以上の通り、本研究では小胞体において不良膜タンパク質がユビキチン化やTOLLIP、CCPG1を介して分解されるという新たなタンパク質品質管理機構の一端を明らかにした。特にユビキチン認識因子TOLLIPは、A53T-HPとGNRHR変異体という複数の機能的に無関係の基質のリソソーム分解を促進できることから、小胞体膜の細胞質側にフォールディング不全を持つ様々な不良膜タンパク質を認識してリソソーム分解へターゲティングする品質管理経路を形成していると考えられる。そこで、本論文ではこのユビキチン化およびTOLLIPを介した分解経路をERLAD-C(ER-to-lysosome-associated degradation-cytosolic)と定義し、その生理的意義を議論する。

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