忘れられない一枚の心電図 : カルモジュリン病
概要
長らく遺伝子診断にかかわっていると,「忘れられない心電図」との出会いが,新たな病気の発見につながることがある.しかし,このためには,最新の論文やケースレポートに目を通して常にアンテナを張っておかなければならない.たとえば,Andersen-Tawil症候群という病態がある.この病気は,QT(U)時間の延長があり,安静時に心室期外収縮が多発しており,周期性四肢麻痺と顎が小さいなどの骨格異常を3徴とする遺伝性疾患である.その原因遺伝子が,心筋において,その深い静止膜電位を決定する内向き整流カリウムチャネルをコードするKCNJ2遺伝子の変異による機能低下であることが,Plasterらにより報告された.この論文がCell誌に報告されたのは2001年1)であったが,これを読んですぐに,以前ご紹介のあった周期性四肢麻痺を伴う心室不整脈の兄妹症例を思い出した.QT延長症候群ではないか,ということで遺伝子診断を依頼されていたので,すぐにこの遺伝子についても調べたところ,果たしてKCNJ2の新規変異が同定され,カエル卵母細胞を用いた機能解析を行って,Plasterらによる報告の翌年の2002年に論文発表することができた2)