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大学・研究所にある論文を検索できる 「鰓耳腎症候群における多様な臨床表現型と遺伝型の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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鰓耳腎症候群における多様な臨床表現型と遺伝型の検討

Unzaki, Ai 神戸大学

2020.03.25

概要

【背景】
鰓⽿腎(Branchio-oto-renal (BOR))症候群は鰓原性奇形、種々の難聴、先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract (CAKUT))を特徴とする常染⾊体優性遺伝疾患である。BOR 症候群はまれな疾患で、頻度はヨーロッパ⼈⼝では 4 万出⽣に 1 ⼈、わが国では 2010 年の全国調査で医療受療者数約 250 ⼈と推定された。BOR 症候群の原因遺伝⼦として EYA1 (8q13.3)、SIX1 (14q23.1)、SIX5 (19q13.32)が知られている。また、Townes-Brocks 症候群(TBS)の原因遺伝⼦である SALL1 (16q12.1)の病的変異を、BOR 症候群様の表現型の患者で認めることがあ る。BOR 症候群の原因遺伝⼦として EYA1 変異が最も⾼頻度である。EYA1 は腎の発⽣に重要な転写因⼦であり、第 1、第 2 鰓⼸の発⽣においても重要である。EYA1 の病的変異を持つ患者の表現型は、特に腎疾患において様々である。現在のところ、BOR症候群の遺伝型と表現型との関連は⾒いだされていない。この研究では、⽇本⼈の BOR 症候群患者において、表現型と原因遺伝⼦についての関連を検討した。

【⽅法】
2010 年 9 ⽉から 2017 年 9 ⽉に、臨床的に BOR 症候群と診断された⽇本⼈患者について、その遺伝型と表現型を検討した。BOR 症候群の診断は Chang らの診断基準を⽤いた。主症状として、①第 2 鰓⼸奇形(頸嚢胞、頸瘻を含む)、②難聴、③⽿⼩窩、④⽿介奇形、⑤腎奇形、副症状として①外⽿道奇形、②中⽿奇形、③内⽿奇形、④副⽿、⑤顔⾯⾮対称、⼝蓋奇形があり、家族歴がない患者は主症状 3 つ以上、もしくは主症状 2 つ以上と副症状 2 つ以上で BOR 症候群と診断した。家族歴がある患者は主症状 1 つ以上で BOR 症候群と診断した。中等度から重度の知的障害や運動発達遅滞、眼瞼裂開⼤、軸前多指症、鎖肛など他に特徴的な症状を認める患者は他の症候群である可能性が⾼いため解析から除外した。遺伝⼦解析は、まず EYA1、SIX1、 SALL1、SIX5 の直接シークエンスを⾏い、必要に応じて MLPA 法、アレイ CGH、次世代シークエンサーによるパネル解析を追加した。

【結果】
<遺伝⼦解析>
36 家系、51 例の患者が臨床的に BOR 症候群と診断され、26 家系 38 例の患者で原因遺伝⼦が同定された。15 例は直接シークエンス法、6 例はMLPA 法、3 例は次世代シークエンサーを⽤いた網羅的解析、2 例はアレイ CGH で同定した。このうち、22 家系 34 例の患者で EYA1 変異を認めた。内訳はナンセンス変異 6 家系、フレームシフト変異 4 家系、ミスセンス変異 3 家系、スプライスサイトの変異 3 家系、MLPA 法でエクソン単位の⽋失を 6 家系で認めた。SIX1 変異は 1 家系、SALL1 変異は 2 家系で、1 家系は 22q テトラソミーであった。10 家系 13 例の患者は BOR 症候群関連遺伝⼦の変異を認めなかった。

<臨床症状>
原因遺伝⼦の変異を同定できた患者のうち、聴⼒検査を⾏なった患者はすべて難聴を認めた。EYA1 変異患者のうち、18 家系 23 例の患者に CAKUT を認めた。EYA1 変異患者の CAKUT のうち、最も頻度が⾼かったのは低形成・異形成腎で 10 例に認めた。また原因不明の腎機能不全は 7 例に認めた。したがって EYA1 変異患者の 50%以上で低形成・異形成腎もしくは原因不明の腎機能不全を認めた。4 例が腎移植を必要とした。同じ家系内でも表現型は様々であった。

【考察】
本研究では、わが国での BOR 症候群の原因遺伝⼦と臨床症状の関連について検討した。我々は臨床的に BOR 症候群と診断された患者の 72.2%に病的変異を検出した。この検出率は我々の既報の研究より⾼かった。EYA1 は変異が最も⾼頻度に検出された遺伝⼦であり、⽇本、台湾、⻄洋諸国からの既報でも同様の結果であった。EYA1変異型と臨床症状の関連性については関連を⾒いだせなかった。

SIX1 変異は 1 例に認め、⼀般的に SIX1 変異患者は腎疾患の合併頻度が低いと⾔われており、本患者も腎疾患を認めなかった。SALL1 変異は 2 例に認め、どちらも TBSに特徴的な所⾒は認めず、臨床的には BOR 症候群と診断された。これまでにも BOR症候群の患者で SALL1 のフレームシフト変異を認めた患者の報告が 1 例存在してい る。そのため BOR 症候群で EYA1 もしくは SIX1 に変異を認めなかった場合は SALL1 の解析をすることが重要である。

腎機能障害は重症貧⾎、⾻疾患、発育不全、⼼⾎管疾患につながる。BOR 症候群にとってCAKUT は最も重要な合併症であるが、明らかな遺伝型と表現型との関連は⾒られず、EYA1 変異の有無によって、腎疾患を予測することは難しいと考えられた。これは BOR 症候群の家族歴を有する家族への遺伝カウンセリングの際に重要である。

アレイ CGH で 22 番染⾊体部分テトラソミーを検出した例が 1 例あった。22 番染⾊体部分テトラソミーは外⽿奇形、難聴、腎形成不全に加えて眼合併症を認めるが、本例も同様の所⾒を認めていた。眼合併症を認める場合は 22 番染⾊体部分テトラソミーも考慮する必要があると考えた。

SIX5 変異は今回の解析では検出されなかった。2007 年に SIX5 が BOR 症候群の原因遺伝⼦の 1 つと報告されて以降、BOR 症候群で SIX5 変異が検出されたという報告はみられていない。本研究では 10 家系 13 例の患者で BOR 症候群関連遺伝⼦に病的変異が検出されなかった。今後の研究では全エクソーム解析もしくは全ゲノム解析が必要と考えられる。

本研究は⽇本における BOR 症候群患者の遺伝⼦解析を⾏った初めての⼤規模研究である。本研究により、BOR 症候群の遺伝⼦解析において EYA1 に対する MLPA 法を⽤いた解析や、次世代シークエンサーを⽤いた網羅的な解析は有⽤であると考えられ、BOR 症候群に対する原因遺伝⼦の解析戦略を⽰すことができた。

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