リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「デヒドロエピアンドロステロンの高血糖誘導酸化ストレスに対する腱細胞保護効果」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

デヒドロエピアンドロステロンの高血糖誘導酸化ストレスに対する腱細胞保護効果

向原, 伸太郎 神戸大学

2022.03.25

概要

【目的】
整形外科領域において筋骨格系疾患は糖尿病患者に多く、糖尿病はアキレス腱炎・腱板炎等の腱障害の危険因子と考えられている。これらの糖尿病性腱障害の発症メカニズムの一つに、酸化ストレスである活性酸素種(ROS)が関与しており、高血糖条件下では二量体の膜タンパクであるNADPH oxidase (NOX)が活性化し、ROS 産生の中心的な役割を担っている。我々の研究室では腱細胞においても、高血糖条件下で NOX の発現亢進を介した ROS 産生の増加が認められることを確認しており、糖尿病性腱障害に NOX の発現が関与していることを報告してきた。しかし、糖尿病性腱障害に対して有効な予防薬、治療薬に関しては十分に確立されていないのが現状である。今回我々は、副腎皮質で産生される体内で最も多いステロイドホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に着目した。DHEA は 20 代で血中濃度が最大となった後、加齢とともに徐々に減少し、老化・加齢性疾患に関与していると報告されている。また、DHEA の補充療法が動脈硬化、骨粗鬆症、脂質代謝異常症、パーキンソン病など様々な疾患に対して有効であると報告されており、近年その抗酸化作用・抗老化作用が注目されている。しかし、腱細胞に対する有効性については報告されていない。そこで、本研究の目的は高血糖条件下のラット腱細胞およびラットアキレス腱に対する DHEA の効果を検討することとした。

【方法】
In vitro
8 週齢の Sprague-Dawley (SD) ラットのアキレス腱を採取し、単離・培養した腱細胞を使用した。

細胞増殖能
腱細胞を異なる DHEA 濃度(0, 1, 10, 20, 50µM)で 48 時間培養後、water-soluble tetrazolium salt (WST) assay を使用して細胞増殖能を評価した。(n=15)

Real-time polymerase chain reaction (PCR)・ROS・Apoptosis
培地の糖濃度を Low Glucose (LG) 群、High glucose (HG) 群の 2 群に分け、DHEA(10µM)投与の有無で 4 群(LG DHEA-群、LG DHEA+群、HG DHEA-群、HG DHEA+群)作成して腱細胞を培養した。48 間培養後、real-time PCR 法で NOX 1、NOX4、IL-6 の mRNA 発現量を定量評価し、細胞蛍光染色で ROS 産生とアポトーシスの発現を各々の陽性細胞率を評価し、4 群で比較検討した。(n=15)

In vivo
8 週齢の SD ラット (n=18) にストレプトゾトシンを腹腔内投与して作製したⅠ型糖尿病ラットを使用した。

Real-time PCR・病理組織学的評価・免疫組織学的評価
作製したⅠ型糖尿病ラットをストレプトゾシン投与後 2 週から DHEA 投与群 (n=9) と control群 (n=9) に分けて実験を開始した。DHEA 投与群は 50mg/kg を腹腔内に隔日投与し、control 群は溶媒である DMSO のみを投与した。投与開始後 4 週でアキレス腱を採取し、評価を行った。病理学的評価としてアキレス腱の HE 染色を行い、tendon pathological scores を用いて評価を行った。免疫組織学的評価としてアキレス腱における NOX1、NOX4 の染色を行い、各々の陽性細胞率を評価し比較検討した。Real-time PCR 法ではアキレス腱における NOX1、NOX4、IL-6、MMP2、TIMP-2、Ⅰ型 collagen (col1)、Ⅲ型 collagen (col3)の mRNA 発現量の定量評価を行った。

統計解析
多群間の比較はtwo-way analysis of variance (ANOVA)検定およびTukey’s post hoc testを行い、2 群間の比較は Student’s t test で統計学的に解析した。

【結果】
〈In vitro〉
細胞増殖能
細胞増殖能は control 群である DHEA 0µM と比較し、DHEA 1µM、10µM、20µM で有意に高値であった。

Real-time polymerase chain reaction (PCR)・ROS・Apoptosis
HG DHEA-群では、LG DHEA-群と比較し、有意に NOX1、IL-6 の mRNA 発現量が増加し、ROS陽性細胞率、アポトーシス陽性細胞率も有意に高かった。また、HG DHEA+群では、HG DHEA群と比較し、有意に NOX1,IL-6 の mRNA 発現量が低下し、ROS 陽性細胞率、アポトーシス陽性細胞率も有意に低下した。

〈In vivo〉
病理組織学的評価・免疫組織学的評価・Real-time PCR
HE 染色では 2 群間に有意な構造学的変化は認めなかった。免疫組織学的評価では DHEA 非投与群で NOX1 発現が増加し、DHEA 投与により有意に減少した。また、DHEA 投与群で NOX1、IL-6、MMP-2、TIMP-2、col3 の発現が有意に減少し、col1 の発現量が有意に増加した。

【考察】
今回の in vitro の実験において、高血糖条件下でラット腱細胞に生じる NOX1 発現の亢進とそれに伴う ROS 産生の増加、Apoptosis の増加を DHEA が抑制することが確認できた。また、我々の過去の研究において、糖尿病ラットアキレス腱においても NOX1 の発現が増加していることを報告しているが、今回の in vivo の実験では、DHEA が糖尿病ラットアキレス腱における NOX1発現の増加を抑制することが確認でき、DHEA が糖尿病性腱障害に有効である可能性が示唆された。さらに DHEA は in vitro、in vivo の実験においても IL-6 の抑制効果を認めており、抗酸化作用だけでなく抗炎症作用を有することが示唆された。また、正常腱の 90%はⅠ型 collagen で構成されており、炎症下・高血糖条件下ではⅠ型 collagen が低下し、Ⅲ型 collagen が増加すると報告されているが、DHEA 投与により糖尿病ラットアキレス腱におけるⅠ型 collagen の低下、Ⅲ型 collagen の増加が抑制されることが確認された。過去の報告において、糖尿病ラットアキレス腱では MMP-2、TIMP-2 の発現が増加し、腱のマトリックス合成と代謝回転が亢進されていると報告されているが、DHEA はこれらの抑制効果も認め、糖尿病ラットアキレス腱における腱のマトリックス合成と代謝回転も是正していることが示唆された。

【結語】
本研究の結果より、DHEA は高血糖条件下で腱細胞において誘発される NOX1 の発現亢進とそれに伴う ROS 産生の増加、Apoptosis の増加を抑制し、腱細胞においても抗酸化作用を示した。また、DHEA は抗炎症作用も有しており、高血糖により誘発される腱のマトリックス合成と代謝回転の亢進も改善していることから、糖尿病性腱障害に有効な薬剤となる可能性が示唆された。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る