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大学・研究所にある論文を検索できる 「緑膿菌RND型異物排出ポンプ阻害剤の探索方法に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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緑膿菌RND型異物排出ポンプ阻害剤の探索方法に関する研究

藤原, 将祐 大阪大学

2022.03.24

概要

薬剤耐性とは,病原微生物に対し抗菌剤の効果がなくなることである。特に抗菌剤の使用に伴い多剤耐性化が起こることがある。何も対策を取らず,現在のペースで耐性菌が増加した場合,2050年には1,000万人の死亡が想定され,がんによる死亡者数を上回るとの試算もある。しかしながら耐性菌の出現により新規抗菌剤を求められてはいるものの,患者の絶対数は少ないため収益率は低く,抗菌剤の開発は停滞している。実際,新たなクラスの抗菌剤の開発はこの10年ではなく,抗菌剤全体の開発・承認数も年々減少している。

 緑膿菌をはじめとするグラム陰性菌の代表的な耐性機構として知られているのが異物排出ポンプである。薬剤排出ポンプによる耐性は,β-ラクタム系,キノロン系,アミノグリコシド系など多様なクラスの抗菌剤の共通の耐性機構であるため,この耐性機構の克服は抗菌剤共通の課題である。

 緑膿菌の中でも抗菌剤耐性の寄与が大きく臨床上問題となっているMexAB-OprM,MexXY-OprMのRND型異物排出ポンプを阻害することは,現在臨床で使用されている抗菌剤のみでなく,研究の段階で断念した排出ポンプの基質性が高いため,表的阻害効果があっても排出ポンプの影響で効果を発揮しなかった新規抗菌剤に対しても,菌に対する効果を回復することにより多剤耐性菌に対する新たな治療の選択肢となり,停滞している新規抗菌剤の開発の一端を担うことになることが期待される。

 本研究では,緑膿菌排出ポンプ阻害剤の探索を目的とし,多くの化合物をいかに早く簡易的に評価できるか,見いだされた化合物はポンプ阻害によるものか,ポンプ阻害の中でもどのような機序を有しているか,という観点で探索方法の構築を目指した。

 本研究では当研究室にて以前作成された,緑膿菌の排出ポンプ(MexAB-OprM,MexXY-OprM)を発現する大腸菌を使用した。大腸菌を用いることの利点は,緑膿菌よりも化合物の外膜からの透過性が高いため,緑膿菌では効果を示さない化合物が効果を示す可能性があることである。緑膿菌及び緑膿菌の排出ポンプを発現する大腸菌で排出能を比較するために,ポンプ発現株と欠損株で抗菌剤の抗菌活性や,既知の排出ポンプ阻害剤と抗菌剤の併用効果を評価した。その結果,多くの抗菌剤及び阻害剤で緑膿菌を用いた時と同様の効果を,緑膿菌排出ポンプ発現大腸菌でも有することを確認した。したがってこれらの株を用いたスクリーニングによって,緑膿菌排出ポンプ阻害剤を見出すことが可能と判断した。

 排出ポンプ阻害剤を探索する最も標準的な方法は,抗菌剤との併用によるMIC試験である。しかしながら抗菌剤との併用効果がある化合物であっても,化合物自身の抗菌活性など,すべて排出ポンプ阻害活性を有しているとは限らない。排出ポンプ阻害活性によるものかどうかの確認方法として,抗菌活性を指標としない蓄積性評価が排出能を直接評価できる試験として通常使用されている。蓄積性評価には,菌体外では蛍光性を示さないが菌に取り込まれた時だけ蛍光性を示す核酸染色試薬がよく用いられ,測定が容易であり定量が簡便である方法として知られている。

 本評価に最も使用されている核酸染色試薬としてEtBrが知られている一方,他の核酸染色試薬で検討した報告は非常に少ない。これまで報告例がない核酸染色試薬(SYBR safe,Atlas Sight,Gel Green)を用いて,緑膿菌排出ポンプ発現大腸菌での蓄積性を評価し,排出ポンプからの排出を確認できるか,確認が可能であった場合,既知の排出ポンプ阻害剤の効果を測定できるか検証した。その結果,既知の排出ポンプ阻害剤(ABI-PP,berberine,PAβN,CCCP)の阻害能が算出可能であることを確認したが,用いる核酸染色試薬や排出ポンプ阻害剤によって結果が変化することが分かった。

 MexBとの共結晶が取得されたABI-PPについては,当研究室でこれまで変異体を用いた阻害能評価により,結合部位の確認が行われてきた。また,ABI-PPがMexYに対し阻害能を有さない機序を解析するため,MexYでの変異体を作成し結合の妨げとなっているアミノ酸を特定するなど,作用機序解析に変異体評価は非常に重要である。

 共結晶が見いだされ結合情報が得られると,より阻害効果を向上できるような化合物の設計が可能となるが,実際阻害剤との共結晶が得られた例はABI-PPを除くとほとんどない。そのため,共結晶以外の実験によって作用部位を推定することは意義が大きい。そこでポンプ阻害剤耐性株を作製し,変異箇所を特定する方法を検討した。

 新規排出ポンプ阻害剤を見出すことは,細菌感染症治療の新たな選択肢の一つとなり非常に研究意義が高い。一方,これまで臨床で使用されるまでには至っていないため,排出ポンプの機能を解明することも重要である。新たな評価系の構築や耐性株の解析は,新規阻害剤の探索とともに排出ポンプの機能解明にも繋がるため,そのための研究を続けていきたいと考えている。

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