Dopamine D1 and D2 receptors in the nucleus accumbens regulate generalized conditioning and discrimination learning
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名
澤田
健
本研究は、側坐核ドーパミン1型・2型(D1・D2 受容体)の生体における機能を明ら
かにするため、マウス行動実験において光遺伝学・光測定法および薬剤局所投与を活用
し、下記の結果を得ている。
1. マウスに対して、感覚刺激(CS+)と報酬を連合させる報酬条件づけを行うと、条件づけ
時に提示されていない感覚刺激(CS—)に対しても報酬を予測するようになる、汎化が見
られた。こうした汎化的条件づけは、側坐核のドーパミン1型受容体(D1 受容体)依
存的であることが、薬剤局所投与実験により示された。
2. 報酬を伴わない CS—の呈示を繰り返すと、マウスは徐々に CS+, CS—を弁別することが
できた。アデノ随伴ウイルスを用いてドーパミン神経に蛍光カルシウムセンサー
GCaMP を発現させ、投射先である側坐核外側に挿入した光ファイバーを通して光計
測することで、弁別学習中、CS—呈示後の報酬除去に際し、ドーパミン神経活動の一
過性低下(ドーパミン dip)が生じることが分かった。
3. ドーパミン神経に、GCaMP および赤色光反応性陽イオンチャネル CsChirmsonR を
導入し、光計測による軸索活動モニター下に、光遺伝学的にドーパミン神経を活性化
することで、弁別学習中のドーパミン dip を相殺すると、弁別学習が阻害された。一
方、赤色光反応性クロライドポンプ eNpHR3.0 により、ドーパミン dip を増大する
と、弁別学習は促進された。以上よりドーパミン dip は弁別学習を機能的に制御する
ことが分かった。
4. 脳切片を用いた先行研究から、ドーパミン dip は D2 受容体により検出されシナプス
可塑性を調節することが分かっている。こうしたシナプス可塑性調節に必要な
CaMKII シグナルやアデノシン 2A 受容体シグナルが、弁別学習にも必要であること
が、CaMKII 阻害ペプチド発現や薬剤局所投与により示された。
5. 覚せい剤メタンフェタミンを投与したマウスでは、弁別学習が障害されていた。この
とき、側坐核に発現させたドーパミンセンサーGRAB-DA の光計測により、弁別学習
中のドーパミン dip が縮小していることが分かった。一方、抗精神病薬として用いら
れる D2 受容体阻害剤を側坐核に局所投与すると、弁別学習は促進された。
以上より、本研究は、側坐核 D1・D2 受容体がそれぞれ汎化的条件づけ・弁別学習を制
御するという学習原理を明らかにし、D2 受容体の関与が知られる、覚せい剤使用者や統
合失調症患者における精神症状の病態理解に寄与すると考えられる。
よって本論文は博士( 医
学 )の学位請求論文として合格と認められる。