磁場配向を利用した固体NMR解析手法の開発

概要

令和 4 年度

京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
磁場配向を利用した固体 NMR 解析手法の開発

Applications of magnetic orientation techniques to solid-state NMR spectroscopy
京都大学大学院 農学研究科 森林科学専攻

久住 亮介

研究成果概要
固体 NMR で化学シフト（CS）テンソルを解析すれば、原子核周りの電子状態につい
て精密な情報を得ることができる。しかしながら、CS テンソルを完全に決定するため
には数 mm サイズの巨大な単結晶が要求される。そこで我々はこれまでに、μm サイズ
の微結晶でも CS テンソルの解析が可能な、磁場配向微結晶懸濁体（Magnetically Oriented
Microcrystal Suspension, MOMS）の in situ 固体 NMR 法の開発に取り組んできた（Kusumi
et al., J. Magn. Reson. 309, 106618 (2019)）
。この MOMS-NMR 法を利用すれば、従来は
CS テンソルの解析が不可能であった試料においても、精密かつより容易な解析が可能
になると期待される。
本研究では、13C 選択ラベル化されたセルロース II 板状結晶での MOMS-NMR を想定
し、固体 NMR スペクトルのシミュレーションを行った。シミュレーションに必要な
CS テンソルには、
京都大学化学研究所スーパーコンピュータシステムの Materials Studio
2018（Dassault Systems）に内包の CASTEP モジュールによる量子化学計算の結果を使
用した。その結果、セルロース II 板状結晶を MOMS-NMR に供した際に得られる単結
晶振動パターンをシミュレートすることができた。 ...