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大学・研究所にある論文を検索できる 「Detection of serum/salivary exosomal Alix in patients with oral squamous cell carcinoma」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Detection of serum/salivary exosomal Alix in patients with oral squamous cell carcinoma

中道, 瑛司 名古屋大学

2021.04.06

概要

【緒言】
 日本では年間7, 000人以上報告される口腔がん新規症例の9割を口腔扁平上皮癌(Oral squamous cell carcinoma, OSCC)が占め、死亡率も高いため診療成績改善が求められている。通常OSCCの診断は試験採取した腫瘍組織パラフィン切片の病理組織学検査で下される。本法がOSCCを確定診断する力は強いが、同時に組織採取術者・病理診断医の熟練への依存度が高く侵襲性や医療コストも高い。そのため、侵襲性が低く簡便に高い特異度と陽性的中率が得られる腫瘍マーカーが待ち望まれている。腫瘍マーカーは、悪性細胞によって直接産生されるか悪性細胞に応答して他の細胞によって生産される物質である。腫瘍マーカーは、疾患のスクリーニング、早期発見、診断確認、再発のモニタリングすべてができることを理想とするがそのような腫瘍マーカーは少ない。エクソソームはあらゆる体液から回収可能な直径30-100nmの細胞外小胞であり、起源となる細胞の細胞質や細胞膜を反映したタンパク質、脂質、mRNA、miRNAを含有している。Human Alix/Programmed cell death 6-interacting protein(PDCD6IP)は全身に発現する細胞質タンパクである。AlixmRNAはあらゆるヒトがん組織に発現し上部消化管癌や前立腺癌の腫瘍マーカーの候補として選抜されたことがある。しかしOSCC患者の体液から得られたエクソソームでAlixが測定されたことはない。今回、血清および唾液中のエクソソームに含まれるAlix(exoAlix)がOSCCの診断マーカーとして利用できる可能性について検討した。

【方法】
 2017年11月から2019年7月の間に当科を受診し手術を行ったOSCC患者31例(OSCC群)とOSCC以外の疾患患者26例(HC群)から血清および唾液を回収した。血清は、OSCC群から術前1回と術後2週後に1回ずつそれぞれ1mL、HC群からは1回1mLを回収した。唾液はOSCC群から術前に1回1mL回収し、HC群から1回1mL回収した。血清および唾液1mLから超遠心分離法によりエクソソームを回収し、粒径測定、電子顕微鏡、ウェスタンブロット法にて評価した。ELISA法にてエクソソーム中のAlix濃度(exoAlix値)を測定した。測定したexoAlix値をもとにReceiver operating characteristics(ROC)曲線を作成し血清および唾液のexoAlix値のカットオフ値を決定した。切除OSCC組織におけるAlixの発現を免疫組織化学染色により評価した。本研究は名古屋大学大学院医学系研究科・医学部附属病院生命倫理審査委員会の承認を得た上で行った。

【結果】
エクソソーム抽出法の検定
 OSCC群およびHC群の内訳を示す(Fig 1A, B)。OSCC群およびHC群の血清および唾液から超遠心分離法にて回収した微小粒子はエクソソームであることが確認された(Fig 1C-G)。
血清exoAlixの測定
 OSCC群とHC群の血清exoAlix値を比較したところexoAlixはOSCC群において有意に高値を示した(Fig 2A)。OSCC群を各Stageや頸部リンパ節転移の有無で分類したところStage Ⅲ群や頸部リンパ節転移を認めた群ではHC群と比較し血清exoAlixが有意に高値であることがわかった(Fig 2B, C)。一方、OSCCの原発発生部位別の血清exoAlix値にHC群との差は認めなかった(Fig 2D)。同一血清サンプルによるexoAlixのELISA法とウェスタンブロットのデンシトメトリー法は同様の定量結果を示した(Fig 2E)。OSCCの手術前後での血清exoAlixを比較したところ、血清exoAlixは術後に有意に低下した(Fig 2F)。
唾液exoAlixの測定
 OSCC群ではHC群と比較し唾液exoAlixが有意に高値を示すことがわかった(Fig 3A)。しかし血清で示されたような各Stageや頸部リンパ節転移との関係は得られなかった(Fig 3B, C)。また血清同様、唾液exoAlixと原発発生部位との関係は得られなかった(Fig 3D)。唾液exoAlixにおいてもELISA法とウェスタンブロット法は同様の定量結果を示した(Fig 3E)。
切除組織でのAlix発現
 免疫組織化学染色にてAlixが癌本体に発現していることを確認したが、Alixは健常な舌の重層扁平上皮においても発現が確認された(Fig 4A)。癌本体での発現と血清exoAlixと唾液exoAlixの発現量に相関は得られなかった(Fig 4B)。測定したexoAlix値を用いてROCカーブ解析を行い、検査の優秀性判定と最適なカットオフ値の設定を行った。ROCカーブの曲線下面積(Area under the curve: AUC)は、血清exoAlixでは0.685、唾液exoAlixでは0.712であった。カットオフ値での(感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、有意差)は血清exoAlixが(0.345, 1.000, 1.000, 0.525, 0.027)、唾液exoAlixは(0.348, 1.000, 1.000, 0.5714, 0.0176)であった。以上より、血清exoAlixおよび唾液exoAlixは中等度の検査能力(AUC~0.7)を示し、感度は0.35付近とそれほど高く無かったが、高い特異度(1.000)と陽性的中率(1.000)を示した(Fig 4C, D)。

【考察】
 本研究は、血清/唾液exoAlixがOSCCの新規腫瘍マーカーになり得る可能性を示唆している。血清/唾液exoAlixはカットオフ値での感度は35%付近と低いため早期発見やスクリーニングには適さないが特異度と陽性的中率に優れ、さらに血清exoAlixは術後に有意に低下することから治療効果判定に応用できる可能性が示唆された。OSCCは再発率が高い疾患であるため今後再発モニタリングマーカーとして利用できる可能性がある。全てのOSCC切除組織にAlixの発現を確認したことから、大部分のAlixはOSCC組織からエクソサイトーシスにより直接的に血液あるいは唾液中に放出されていると考えられるが確定には更なる検討が必要である。今後exoAlixが臨床応用されるためには、exoAlixと性別、年齢、全身状態(飲酒、喫煙、肝疾患、腎疾患、肥満等)、口腔以外の扁平上皮癌や他の悪性腫瘍との関連や生物学的半減期を検討する必要がある。
 本研究において血清/唾液exoAlixをOSCCの新規腫瘍マーカーとして同定した。血清/唾液exoAlixはOSCCのスクリーニングや早期発見には適さないが、このうち血清exoAlixは治療効果の予測に適している可能性が示された(Fig 4E)。

【結語】
 本研究は血清/唾液exoAlixが高い特異度や陽性的中率を持つOSCCの新規腫瘍マーカーである可能性を示した。

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