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書き出し

周産期におけるドコサヘキサエン酸含有リン脂質の役割に関する研究

叶谷, 愛弓 東京大学 DOI:10.15083/0002007042

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名

叶谷 愛弓

本研究は、胎仔期から新生仔期のいわゆる周産期の時期における DHA 含有リン脂質
(DHA-PLs) の役割および母仔間の輸送について、DHA 含有リン脂質を合成する主となる
酵素であるリゾフォスファチジン酸アシル転移酵素 3 (LPAAT3) を欠損させたマウスを用
いて検討を行い、下記の結果を得ている。
1. LPAAT3 欠損型マウス (LPAAT3 KO) では野生型 (WT) のコントロールマウスと比
べて、脳、褐色脂肪、白色脂肪、肝臓における DHA-PLs の割合が著しく低下してい
た。さらに、体重、脳重量、肝臓重量もコントロールマウスと比べて LPAAT3 KO マ
ウスで有意に減少しており、DHA-PLs の低下が各臓器の成長発達を阻害する可能性が
示唆された。
2. 比較的簡便に行える Tail suspension test および Rotarod test の 2 種類の行動試験を
LPAAT3 WT、ヘテロ型 (HZ) 、KO のマウスに行った。LPAAT3 KO マウスでは、
Tail suspension 試験では他のコントロールマウスと比べ有意に点数が高く、Rotarod
test では落下するまでの時間が有意に短かった。両者共に小脳変性疾患モデルマウス
によく用いられる行動試験であり、LPAAT3 KO マウスが何らかの神経学的な異常を
持つ可能性が考えられ、DHA-PLs は正常な神経機能に必要であることが示された。
3. DHA を含めた脂肪酸は、一般的には母獣の肝臓で合成され血液中にのって胎盤へ送ら
れ、胎盤から臍帯血を通じて胎仔側の臓器へ送られる。野生型メスマウスの肝臓にお
ける DHA-PLs 割合は非妊娠時に比べて妊娠時に高くなり、妊娠経過と共に増加した
後、出産後に低下する。その傾向は DHA-PLs に特異的であり、その他の分子種には
見られなかった。野生型妊娠マウスの血清、胎盤、胎仔肝臓における DHA-PLs も妊
娠経過と共に増加傾向にあった。
4. LPAAT3 HZ と KO 母獣マウス血清中の DHA 含有脂質について調べたところ、
LPAAT3 KO マウスにおいて DHA-PLs および DHA 含有コレステロールエステル
(DHA-CE) の著明な低下を認める一方で DHA 含有トリグリセリド (DHA-TGs) やト
リグリセリド (TG) の定量値に変化は見られなかった。また、LPAAT3 HZ オスマウ
スと LPAAT3 HZ メスマウスおよび LPAAT3 KO メスマウスの交配により得られた、
4 種類の胎仔 (①母 HZ 仔 HZ、②母 HZ 仔 KO、③母 KO 仔 HZ、④母 KO 仔
KO) における、胎盤、胎仔血漿、胎仔肝臓、胎仔脳における DHA-PLs について調べ
たところ、胎仔自身の LPAAT3 のジェノタイプの影響に加えて、母獣の LPAAT3 のジ

ェノタイプも影響することがわかった。すなわち、胎仔の DHA 量を規定する要因と
して、母獣血液中の DHA-PLs の影響も大きいと考えられた。そのため、これら 4 種
類の胎仔肝臓や脳における DHA-PLs の割合は異なっていたが、同時期の体重や脳重
量は 4 者で変わりなかった。
5. LPAAT3 HZ 新生仔脳の DHA-PLs の割合は成長と共に増加する一方で LPAATA3 KO
新生仔では変化なく、③母 KO 仔 HZ の新生仔ではむしろその割合が減少した。生後
1 週間では母獣のジェノタイプの影響は完全に消失し、新生仔自身のジェノタイプの
影響のみ見られた。母乳中の DHA の割合は LPAAT3 HZ と LPAAT3 KO で変わりな
く、母乳から等しい量の DHA が供給されるからこそ生後 8 日目で母獣の影響が消失
したと考えられる。新生仔期における体重、脳重量は生後 1 日、8 日目では変化なか
ったが、生後 28 日目で母獣のジェノタイプによらず、KO 新生仔が有意に低い結果と
なった。
以上、本論文は DHA-PLs が成長発達に重要であり、正常な神経機能の構築にも不可
欠であることを明らかとした。さらに、母仔間の DHA 輸送において母獣血液中の
DHA-PLs が大きな役割を担う可能性が示唆された。今回の研究は、ω-3 脂肪酸欠乏
食摂取による過去のモデルとは異なり、遺伝子操作による DHA-PLs の特異的な減少
をきたす新たなモデルであり、今までの研究では届かなかった部分への研究ができる
ようになったという点で新しいと考える。それにより、母仔間の DHA 輸送はトリグ
リセリドの形として運ばれるとした過去の多くの報告とは異なる、リン脂質によって
運ばれるという新たな輸送メカニズムを提言することができ、新規性のある報告とな
った。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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