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書き出し

高齢MRP4欠損マウス網膜における遺伝子発現プロファイリングと表現型の変化

金, 景佑 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Changes in Gene Expression Profiling and
Phenotype in Aged Multidrug Resistance Protein
4-Deficient Mouse Retinas

金, 景佑
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8602号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482350
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

学位論文の内容要旨

Changes in Gene Expression Profiling and Phenotype in Aged
Multidrug Resistance Protein 4-Deficient Mouse Retinas
高齢 MRP4 欠損マウス網膜における遺伝子発現プロファイリングと表現型の変化

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
眼科学
(指導教員:中村
金 景佑

誠教授)

一般に、老化は様々な生理学的、病理学的プロセスを介して全ての臓器に影響を与える
が、酸化ストレスは臓器機能不全における主要な修飾因子で加齢に伴う様々な疾患に関連し
ている。既報では、酸化ストレスは、細胞膜上の ATP 結合カセット(ABC)トランスポータ
ーのサブセットの発現を調節することが示されている。多剤耐性タンパク質 4 (Multidrug
Resistance Protein 4, MRP4) は、ABC トランスポーターの C サブファミリーに属し、排出
ポンプとして機能することによって細胞環境を維持している。MRP4 欠損実験動物は、さまざ
まな種類のストレスに対して異常な反応を示すことから、老化と酸化ストレスの関係におい
ても MRP4 が重要な役割を果たしている可能性がある。
近年、MRP4 は薬物の細胞外排出作用だけでなく、いくつかのシグナル伝達分子の恒常性
にも寄与することが認識されるようになってきた。MRP4 阻害作用を持つ FDA 承認薬には、
非ステロイド性抗炎症薬、脂質低下薬、抗血栓薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬など臨
床で一般的に使用される薬剤が含まれており、全身疾患を有する高齢者の中にはこれらの薬
剤に長期間曝露されている患者が存在する。
酸化ストレスの影響を受けやすい網膜は中枢神経系 (CNS) の一部であり、動物実験では
MRP4 が網膜の血管内皮細胞で主に発現していることが確認されている。加齢に対する MRP4
欠乏の影響は未だによく理解されていないことから、我々は、MRP4 欠乏と CNS 老化の共効果
についての見識を得るために、老化マウス網膜の遺伝子発現プロファイルと表現型の変化を
調査し、これらのパラメーターを野生型 (WT) マウスと Mrp4 欠損マウスの間で比較した。

方法
1. マウス
C57BL / 6J の遺伝的背景を持つ Mrp4 ノックアウトマウスが使用された。
2. 遺伝子発現マイクロアレイ
マウスの遺伝子型ごとに 4 つのサンプルを用意した(WT および Mrp4-/-)
。網膜組織は、45
〜55 週齢の 3 匹のマウスから採取され、RNA 抽出と DNA マイクロアレイおよび KEGG
pathway 解析を行った。次に、発現変動遺伝子群の生物学的な特徴を調べるために遺伝子オ
ントロジー(Gene Ontology)解析を追加した。
3. 免疫組織化学および H&E 染色
網膜フラットマウントの免疫染色、網膜切片の免疫染色、網膜切片の H&E 染色を行っ
た。 定量的解析には Image J ソフトウェアを使用した。各網膜層の厚さは、H&E 網膜切片
の視神経乳頭から 100μm の網膜層を手動で測定することによって定量化した。
4.網膜電図記録
すべての実験動物(マウス)は網膜電図(electroretinogram, ERG)記録の前に一晩暗順応
され、すべての手技は薄暗い赤色光の下で実行された。マウスに麻酔をかけ、体温を 37°C
に維持する内蔵の加熱パッド上に静置した。2.5% フェニレフリンと 1.0%トロピカミド点眼

薬を使用して瞳孔を散大させた後、金線を埋め込んだコンタクトレンズ電極を感電極として
角膜に配置した。ERG は、Ganzfeld ドーム を備えた市販の機器を使用して記録された。暗
所視閾値応答(scotopic threshold response, STR)(網膜内層の機能を反映する)の記録に
は、-6.1、-5.5、-5.1、-4.6、および-4.1 log sc td の連続的に増加する発光強度を使用
した。1.5 log sc td の背景光強度で 5 分間の光順応間隔の後、明所視閾値応答の記録を
行った。

結果
① 高齢 Mrp4 欠損マウスの網膜における遺伝子発現プロファイルの変化
高齢 Mrp4 欠損マウス網膜に関する包括的なトランスクリプトーム情報を調べるために、
DNA マイクロアレイ解析を行った。WT マウスとの比較で 186 個の発現変動遺伝子が高齢(約
50 週齢)Mrp4 欠損マウス網膜において同定された。Gene Ontology 解析では、生物学的プ
ロセス、分子機能および細胞成分のいずれにおいても有意な変化があり、lens development
in the camera-type eye, intrinsic component of autophagosome membrane, structural
constituent of eye lens を含む Gene Ontology term が抽出された。その後の KEGG
pathway 解析では発現変動遺伝子が主に「代謝経路」、「グリセロリン脂質代謝」、「単純ヘル
ペスウイルス 1 型感染」

「カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス感染」に関与していることが明
らかになった。
② 網膜厚の変化
高齢 Mrp4 欠損マウスの網膜で発現変動遺伝子が認められたため、網膜構造との関連の有
無につき網膜層(神経線維層/神経節細胞層複合体、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆
粒層、視細胞層)の厚さの変化を評価した。若年(8〜12 週)WT マウス、高齢(45〜55 週)
WT マウス、若年 Mrp4 欠損マウス、高齢 Mrp4 欠損マウスの網膜層の厚さに有意な変化は認
められなかった。
③ 各網膜細胞タイプの形態と分布
網膜層厚に有意な差が認められなかったことから、老化と MRP4 欠乏が網膜に及ぼす変化
を細胞レベルで調べるために、各網膜細胞種の形態と分布を確認した。網膜切片を用いた免
疫組織染色では、血管内皮細胞、アストロサイト、ミュラー細胞、水平細胞およびアマクリ
ン細胞、双極細胞、視細胞光受容体について若年/高齢 WT マウスおよび若年/高齢 Mrp4 欠
損マウスの間で細胞の形態および分布に明らかな変化はなかった。次に、網膜フラットマウ
ントでの免疫染色による網膜血管およびアストロサイトの二次元的評価を行ったが、網膜血
管およびアストロサイトに関して、若年/老齢 WT マウスおよび若年/老齢 Mrp4 欠損マウス間
で明らかな変化は認めなかった。(一部の層では、血管面積、総血管長、またはその両方に
わずかながら統計学的に有意な差を認めた。)
④ 網膜の電気生理学的機能

高齢 Mrp4 欠損マウスの網膜が WT マウスと比較して同様の網膜機能を有するかを調べるた
めに、電気生理学的解析を実施した。高齢 Mrp4 欠損マウスに対して行われた ERG 検査は、a
波と b 波の振幅と潜時、および陽性 STR の振幅に関して、高齢 WT マウスと有意差を認めな
かった。

考察
本研究では包括的なトランスクリプトーム解析を実行し、高齢 Mrp4 欠損マウスで発現が
変動する 186 遺伝子を同定した。これらの遺伝子は血液網膜関門(blood retinal barrier,
BRB)の機能障害に影響している可能性がある。その理由として MRP4 が網膜の血管内皮細胞
で主に発現していること、内皮細胞は BRB の主要な構成要素であること、MRP4 は経細胞輸送
を制限していることなどが挙げられる。Gene Ontology 解析でこれらの遺伝子の中に生物学
的プロセスとして水晶体、眼の発生と視覚に関連する遺伝子が含まれていた。網膜と水晶体
はまったく異なる組織タイプであるにも関わらず、レンズ関連の Gene Ontology において豊
富に発現していることは驚くべきことである。分子機能または細胞成分の Gene Ontology 解
析では構造分子活性、液胞膜の固有成分、シナプス小胞膜の成分など、CNS における MRP4
の細胞バリア機能と関連している可能性が示された。高齢マウス網膜が MRP4 欠乏によって
影響を受けるシグナル伝達経路には、「代謝経路」
、「グリセロリン脂質代謝」、「単純ヘルペ
スウイルス 1 感染」
、および「カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス感染」が含まれた。最初の
2 つの経路と MRP4 との関係は不明だが、抗ウイルス薬は MRP4 の基質であることから、この
2 つの経路は排出型トランスポーターとしての MRP4 機能に関連している可能性がある。
次に、網膜における老化と Mrp4 欠損の影響を調べた。特定の網膜層の厚さの変化は、網膜
変性の良いマーカーであることから、若年/高齢 WT マウスと若年/高齢 Mrp4 欠損マウスの網
膜層の厚さを測定し比較を行ったところ、各網膜層の厚さには有意な差は認められなかった。
さらに、免疫組織染色では、4 つの年齢/遺伝子型マウスグループ間で、細胞の形態または分
布に明らかな変化が確認できなかった。一方、網膜の中間層または深層で観察された血管表現
型の違いは、Mrp4 欠乏、加齢、またはその両方に起因する可能性がある。なぜなら我々は以
前に、新生仔マウスにおいてフォルスコリン投与後に Mrp4 欠乏マウスで網膜血管表現型が変
化することを報告しているからである。電気生理学的解析においても高齢 WT マウスと高齢

Mrp4 欠損マウスの間に潜時、振幅ともに有意な ERG 応答の差がなかったことは今回の組織学
的解析の結果を裏付けている。以上の実験結果から、Mrp4 欠損マウス網膜に損傷を与えるに
は、加齢はストレスとして不十分であると考えられる。
高齢 Mrp4 欠損 マウスが網膜において多くの発現変動遺伝子を有するにもかかわらず明ら
かな網膜表現型を示さない理由を説明することは難しいが、我々は以下のとおり推察してい
る。
(1)マウスは適切に管理され特定の病原体のない条件下で飼育されていたため、蓄積され
た内因性および外因性のストレスは網膜障害を引き起こす閾値を下回っていた。(2) 網膜で

発現する他の排出型トランスポーターファミリータンパク質が、MRP4 の欠如を補填した。(3)
MRP4 機能の損失の多面的効果は、網膜機能不全を引き起こす分子経路をキャンセルした。
本研究から、Mrp4 欠損マウスの網膜にいくらかの損傷を引き起こすストレスとして加齢の
みでは不十分であることが判明した。今後は、MRP4 欠乏と他のタイプのストレス(高血糖や
炎症)との共効果を調べるためのさらなる研究が必要であると考える。

神戸 大 学 大 学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 声 査 の 結 果 の 要 置
甲第

3267号





受付番号

金景佑

高 齢 MRP4欠損マウス網膜における遺伝子発現プロファイリングと

論文題目

1

表現型の変化

T
i
t
l
eo
f
Changesi
nGeneE
x
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s
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D
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f
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c
i
e
n
tMouseRetinas

審査委員

Examiner

C
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1
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r








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、 I乃
)
I

和応冠応

(要旨は 1,000字 ∼ 2,000字程度)


緒言 】老化 は様々な生理学的 、病理学的プロセスを介 して全ての臓器に影響を与え 、ま
た酸化 ス トレ スは臓器機能不全における主要な修飾因子であり、 加齢 に伴う様々な疾患に
M
u
l
t
i
d
r
ugRe
si
st
a
n
c
eP
r
ot
ei
n4
,M
R
P4
)は
、 A
BC
関連している。多剤耐性タンパク質 4 (
トランスポーターの Cサブファミリーに属 し、排出ポンプとして機能することによって細
R
P4欠損実験動物は、さまざまな種類のスト レスに対して異常な
胞環境を維持している。 M
R
P4が重要な役割を果た
反応を示すことから、老化 と酸化ス トレ スとの関係においても M
している可能性がある。

R
P4欠乏と C
N
S老化 の共効果を調査するために 、老化マウス

方法 ・結果 】本研究では、M
網膜の遺伝子発現プロファイ ル と表現型の変化 を調査し、これらのパラメ ーター を野生型
(
W
T
) マウスと Mrp4欠損マウスの間で比較した。
D
N
Aマイクロアレイ解析では、町マウスとの比較で 1
8
6個の発現変動遺伝子が高齢 Mrp4
欠損マウス網膜において同定された。 G
e
n
eO
nt
ol
o
g
y解析では、生物学的プロセス、分子

e
nsd
e
v
el
o
p
me
nti
nt
he
機能および細胞成分のいずれにおいても有意な変化があり、 l
c
am
er
a-t
y
pee
y
e, i
nt
r
i
nsi
cc
o
m
p
o
ne
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g
o
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meme
m
br
a
ne
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tr
uc
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al
c
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it
u
e
n
to
fe
y
el
e
nsを含む Ge
n
eO
nt
ol
o
g
yt
e
r
mが抽出 された。その後の K
E
G
Gp
at
h
w
a
y
解析では発現変動遺伝子が主に 「
代謝経路」、 「
グ リセロリン脂質代謝

、 「
単純ヘルペスウ
イルス 1型感染」、「カポジ 肉腫関連ヘルペスウ イルス感染」 に関与していることが明らか
になった。

2週
) 町 マウス、高齢 (
45-55週

次に各網膜層の厚さの変化 を評価した。若年 (8-1
f
rp4欠損マウス、高齢 Mrp4欠損マウス間で比較したが、網膜層の厚さ
町 マウス、若年 A
に有意な変化 は認められなかった。続いて網膜における各細胞腫の形態と分布を確認する
ために、 網膜切片を用いた免疫組織染色で評価 したが、 血管内皮細胞、 アストロサイト 、
ミュラー 細胞、水平細胞およびアマクリン細胞、双極細胞、視細胞光受容体について若年/

f
rp4欠損マウスの間で細胞の形態および分布に明らかな
高齢町マウスおよび若年/高齢 j
変化はなかった。網膜フラットマウン トでの免疫染色による網膜血管およびアストロサイ

f
rp4欠損マウス 間で
トの二次元的評価 においても 、若年/高齢町マウスおよび若年/高齢 A
明らかな変化 は認められなかった。

rp4欠損マウスの網膜が町マウスと 比較して同様の網膜機能 を有するか
さらに、高齢 M
rp4欠損マウスで記録された網膜電図
を調べるために電気生理学的解析を実施し た。高齢 M



a波と b波の振幅と潜時および陽性暗所閾値電位の振幅に関して高齢町マウス との比

較で有意差を認めなかった。


考察】本研究では、高齢 j
f
r
p
4欠損マウスが網膜において多くの発現変動遺伝子を有す
るものの網膜表現型に明らかな差は認められなかった。その理 由として( l
) マウ スは適切
に管埋され特定の病原体のない条件下で飼育されていたため、蓄積された内因性および外
因性のストレスは網膜障害を引き起こす閾値を下回っていた。 (
2
) 網膜で発現する他の排
出型トラ ンスポーターファミリータンパク質が、 M
R
P
4 の欠如を補填した。 (
3
)M
R
P
4機能
の損失の多面的効果は、網膜機能不全を引き起こす分子経路をキャンセルしたなどが考え
られる。本研究から 、J
f
r
p
4欠損マウスの網膜にいくらかの障害を引き起こすスト レスとし
て加齢のみでは不十分であることが判明した。今後は、 M
R
P
4欠乏と他のタイプのストレス
(高血糖や炎症)との共効果を調べるためのさらなる研究が必要であると考える。
本研究で、 M
r
p
4欠損マウス網膜において、加齢により 1
8
6個の発現変動遺伝子を同定し、
これらが代謝経路やウイルス感染などに関与するものであることがわかった。病原体がな
く、またストレス変動の少ない動物施設の環境下では、網膜の機能・形態異常を描出する
には至らなかったが、今後の M
R
P
4の生理学的、病理学的探索研究の基盤となる堅固な実験
結果であり、価値ある業績と認める。よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資
格があると認める。

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