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大学・研究所にある論文を検索できる 「術後残胃に発生した早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の長期予後に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

術後残胃に発生した早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の長期予後に関する検討

津田, 一範 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Long-term outcomes of endoscopic submucosal
dissection for early remnant gastric cancer: a
retrospective multi-center study

津田, 一範
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8696号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485880
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Long-term outcomes of endoscopic submucosal dissection for early
remnant gastric cancer: a retrospective multi-center study
術後残胃に発生した早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の長期予後に関する検


神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
消化器内科学
(指導教員:児玉
津田 一範

裕三教授)

論文要旨

【目的】
リンパ節転移の危険性が極めて低い早期胃癌に対する標準治療として内視鏡的粘膜下層
剥離術(ESD)は広く普及している。胃切除術後の残胃に発生した早期胃癌(ERGC)に対
しても、通常胃と同様に ESD が行われている。ERGC に対する ESD は、狭い作業スペー
スや重度の粘膜下層の繊維化、縫合線上のステープルの存在などにより技術的に困難であ
ることが知られている。過去の研究では ERGC に対する ESD の良好な長期予後が報告され
ているが、いずれも先進単施設からのものであり、一般病院を含む多施設研究は報告がない。
また、日本の胃癌診療ガイドラインは 2018 年の改訂により早期胃癌に対する ESD の新た
な根治基準が提唱され、2020 年に更新された。本研究は、大規模な多施設データベースを
用いて、最新ガイドラインの根治基準に準じて ERGC に対する ESD の長期成績を調査する
ことを目的とした。

【対象と方法】
2009 年 4 月から 2019 年 3 月までに神戸大学および 11 の関連病院において ERGC に
対して ESD を施行した 256 症例 270 病変を特定した。このうち、ESD 後の局所再発や異
時性多発癌に対する ESD を行った 9 症例、術後病理検査で進行癌であることが判明した 3
症例、胃癌に対する胃切除術から ESD 後の再発までの期間が 3 年未満であった 2 症例を除
外して、242 症例 256 病変を対象とした。対象症例の臨床病理学的特徴および転帰に関する
情報を後ろ向きに調査し、Kaplan–Meier 法を用いて長期予後について検討した。
ERGC に対して ESD が施行された症例の根治度は最新の胃癌診療ガイドラインに従っ
て、術後の病理所見に基づき評価され、それぞれ A、B、C-1、C-2 に分類された。同時多発
病変の治療がなされた 12 症例は、より重度の根治度に分類された。根治度 A および B の
患者は定期的な内視鏡、画像検査による経過観察がなされた。根治度 C-1 ではリンパ節転
移のリスクは低く、再 ESD、追加手術、内視鏡的凝固療法、慎重な経過観察の中から方針
が選択された。根治度 C-2 の患者は追加手術が標準的な治療法であるが、高齢や重度の合
併症を理由に追加手術を希望しない患者には、十分な説明のもとで経過観察が行われた。
根治度と術後の管理方針に基づき、対象症例を 2 群に分類した。根治度 A/B/C-1 で経過
観察された患者および根治度 C-2 で追加外科手術を受けた患者を「ガイドライン準拠群」

根治度 C-2 であるが年齢や基礎疾患などの理由により追加外科手術を受けなかった患者を
「ガイドライン非準拠群」と定義して、両群の長期予後を log-rank 検定を用いて比較した。
さらに、胃の ESD の施行症例数に応じて、本研究の実施施設を 2 つの病院カテゴリーに
分類した。本研究では、2019 年に胃 ESD 症例を 100 例以上施行した病院を high volume

hospital、100 例未満を non high volume hospital と定義した。病院カテゴリー毎の長期予後
を log-rank 検定を用いて比較した。

【結果】
対象患者の根治度の分布は根治度 A が 167 例 、根治度 B が 7 例、根治度 C-1 が 10 例、
根治度 C-2 が 55 例であった。根治度 A と B の患者はガイドラインに従って経過観察され
た。根治度 C-1 の患者 10 例は、内視鏡所見で癌の遺残が認められなかったため、全例が経
過観察された。根治度 C-2 の症例のうち 12 名は追加手術を受け、残りの 43 例は高齢や合
併症のため追加手術は行わず経過観察された。
追跡期間中央値 48.4 か月の間に、対象 242 症例のうち 4 名が胃癌死し、35 名が他病死し
た。胃癌死した 4 症例のうち、3 例は根治度 C-2 で追加手術を受けなかった患者であり、も
う 1 例は根治度 A に分類されたが ESD 後に異時性胃癌で死亡した症例であった。8 症例に
ESD 後再発がみられ、再発形式の内訳は局所再発 6 例と遠隔転移再発 2 例であった。局所
再発症例の根治度は C-1 が 2 例、C-2 が 4 例であった。局所再発の6例のうち、5 例は追加
外科手術または再 ESD を受け、1 例は追加治療を拒否した。この 1 例のみが胃癌死した。
遠隔転移再発した 2 例の根治度はいずれも C-2 で追加外科手術を受けなかった患者であり、
2 例とも胃癌死した。
全 242 症例の 5 年全生存(OS)率は 81.3%、5 年疾患特異的生存(CSS)率は 98.1%で
あった。また、ガイドライン準拠群とガイドライン非準拠群の CSS を比較したところ、ガ
イドライン非準拠群で有意に CSS が短かった(p 値=0.0014)
。さらに、病院カテゴリー毎
に予後を比較した。5 年 OS 率および CSS 率は、それぞれ high volume hospital で 80.4%お
よび 97.6%、non high volume hospital で 87.3%および 100%であり、2 つのカテゴリー間
で患者の OS と CSS のいずれにも有意な差はなかった。
【考察】
本研究は、大規模な多施設データベースを用いて ERGC に対する ESD の長期予後を調査
し、non high volume hospital での予後が high volume hospital での予後と同様に良好であ
るかどうかを検討した初めての研究である。本研究の強みは、先進施設と一般病院の両方を
含む多施設デザインであること、過去最大の症例数での研究であること、そして最新のガイ
ドラインの根治基準に準じていることである。
本研究での ERGC に対する ESD の 5 年 CSS 率は 98.1%と非常に高く、先行研究と比較
しても同等に良好であった。一方、本研究の 5 年 OS 率は既報に比べると低かった。既報で
は重度の合併症を有する患者ほど、
胃 ESD 後の全生存率が悪くなることが報告されている。
本研究における患者の年齢中央値は先行研究と同じ(74 歳)であったが、併存疾患に関す
る詳細な情報が得られなかったためこの原因は明らかではない。

根治度 A/B/C-1 の症例および C-2 で追加手術を受けた症例に比べ、根治度 C-2 で追加手
術を受けなかった症例では有意に CSS 率が低かった。また経過観察中に局所再発をきたし
た症例に関しては、追加外科手術または再 ESD を受けることで長期生存が得られている。
これらの結果は、ERGC に対する ESD は、最新のガイドラインに従って管理すれば長期生
存につながることを示唆している。
異時性多発癌で死亡した 1 例を除くと、本研究では胃外の転移再発は 2 例で、いずれも
根治度 C-2 の症例であった。過去の報告では残胃癌の外科手術後の再発はリンパ節転移よ
りも遠隔転移として起こる傾向が示唆されている。本研究では、胃外転移の 2 例はいずれ
も遠隔転移であり、ERGC に対する ESD の非治療例でも遠隔転移を伴う再発を来しやすい
と考えられる。
本研究では、high volume hospital と non high volume hospital の間で OS と CSS のいず
れにも有意差はなかった。この結果から、ERGC に対する ESD 後にガイドラインに沿った
適切な管理を行うことで、病院の症例数にかかわらず良好な長期予後が得られることが示
唆された。早期胃癌に対する非治癒的 ESD の長期予後を病院の症例数別に調査した先行研
究では、病院の症例数は CSS 率に影響を与えないという結果であった。しかし、年間胃 ESD
症例数が 100 例未満の施設では、100 例以上の施設に比べ OS が有意に低かった。その理由
として、多数の症例を扱う病院では併存疾患を持つ患者がより多いためと推測されていた。
本研究では、high volume hospital では潰瘍所見を有する病変が有意に多かった。これらの
病変は、ESD 難度が高いと予想され先進医療機関に紹介された可能性がある。

【結論】
ERGC に対する ESD の長期予後は、
一般病院を含む多施設共同研究において良好であった。
ERGC に対する ESD は病院の症例数に関係なく広く適用できることが示され、最新のガイ
ドラインに沿った管理を行うことが長期生存につながる。

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

論文題目

甲 第 3298号

氏 名

津田一範

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術後残胃に発生した早期胃癌に対する内視鏡的
粘膜下層剥離術の長期予後に関する検討

主 査
審査委員
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副 査
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副 査
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属、と賃月
坂ロ一塁
1叶 泣 ぢ た

神戸大学大学院医学(系)研究科 (博士課程)




字程度)
(要旨は 1,000字∼ 2,000

l

【目的】
内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)はリンパ節転移の危険性が極めて低い早期胃癌に対する標
準治療として広く普及している。胃切除術後の残胃に発生した早期胃癌 (ERGC)に対する ESDは
技術的に困難であることが知られており、過去にはその良好な長期予後が報告されているが、い
ずれも先進単施設からのものである。また、日本の胃癌診療ガイドラインでは 2018年の改訂により
早期胃癌に対する ESD の新たな根治基準が提唱された。本研究は、大規模な多施設データベ
ースを用いて、最新ガイドラインの根治基準に沿って ERGCに対する ESDの長期成績を調査する
ことを目的とした。
【方法】



2009年 4月から 2019年 3月までに神戸大学および 1
1の関連病院において ERGCに対して
ESDを施行した 242症例 256病変を対象とした。対象症例の臨床病理学的特徴および転帰に関

する情報を後ろ向きに検討した。
対象症例の根治度は最新の胃癌診療ガイドラインに従って、術後の病理所見に基づき評価さ
れ、それぞれ A、B、C-1、C-2 に分類された。根治度と術後の管理方針に基づき、対象症例を 2
群に分類した。根治度A/B/C-1で経過観察された患者および根治度 C-2で追加外科手術を受
けた患者を「ガイドライン準拠群」、根治度 C-2であるが年齢や基礎疾患などの理由により追加外
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n
k検定
科手術を受けなかった患者を「ガイドライン逸脱群」と定義して、両群の長期予後を l
を用いて比較した。

さらに、胃の ESDの施行症例数に応じて、本研究の実施施設を 2つの病院カテゴリーに分類し
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0例以上施行した病院を h
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た。本研究では、 2019年に胃 ESD症例を 1

例末満を nonhi
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lと定義し、両者の長期予後を l
og
r
a
n
k検定を用いて比較した。



【結果】
6
7例、根治度 B
対象のうち ESDを完遂できたのは 239例で、根治度の分布は根治度 Aが 1

が 7例、根治度 C-1が 8例、根治度 C-2が 5
7例であった。根治度 A とBの患者はガイドライン
に従って経過観察された。根治度 C-1の患者 8例は、内視鏡所見で癌の遺残が認められなかっ
たため全例でガイドラインの推奨する方針の中から経過観察が選択された。根治度 C-2の症例の
2名はガイドラインの推奨に従い追加手術を受け、残りの 4
5例は高齢や重度の基礎疾患を

ち 1

理由に追加手術を希望せず経過観察された。
8.4か月の間に、対象 2
4
2症例のうち 4名が胃癌死し、 3
5名が他病死した。
追跡期間中央値 4

胃癌死した 4症例のうち、 3例は根治度 C-2で追加手術を受けなかった患者であり、もう 1例は根
治度 A に分類されたが ESD後に異時性胃癌で死亡した症例であった。 8症例に ESD後再発が
みられ、再発形式の内訳は局所再発 6例と遠隔転移再発 2例であった。局所再発症例の根治度
、 C-2が 4例であった。局所再発の 6例のうち、 5例は追加外科手術または再 ESD
は C-1が 2例
を受け、 1例は追加治療を拒否した。この 1例のみが胃癌死した。遠隔転移再発した 2例の根治

度はいずれも C-2で追加外科手術を受けなかった患者であり、 2例とも胃癌死した。

4
2症例の 5年全生存( O
S
)率は 81
.3
%、5年疾患特異的生存 (
C
S
S
)率は 9
8
.
1%であった。
全2
また、ガイドライン準拠群ではガイドライン逸脱群と比較して有意に CSS が長かった(p値

=
0
.
0
0
1
4
)。さらに、 hi
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o
l
u
m
eh
o
sp
i
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lの間には OSとCSSのいずれ
にも有意な差はなかった。
【考察】
本研究は、大規模な多施設データベースを用いて ERGCに対する ESDの長期予後を調査し、

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lとh
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l
u
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lでの予後を比較検討した初めての研究である。
本研究の強みは、先進施設と一般病院の両方を含む多施設デザインであること、過去最大の症



例数での研究であること、そして最新のガイドラインの根治基準に準じていることである。

8
.
1%と非常に高く、先行研究と比較しても
本研究での ERGCに対する ESDの 5年 CSS率は 9
同等に良好であった。一方、本研究の 5年 OS率は既報に比べると低かった。重度の合併症を有
する患者では、胃 ESD後の OSが悪くなることが報告されている。本研究における患者の年齢中

7
4歳)であったが、併存疾患に関する詳細な情報が得られなかったため
央値は先行研究と同じ (
この原因は明らかではない。
ガイドライン準拠群では、ガイドライン逸脱群に比べ有意に CSS率が高かった。また経過観察中
に局所再発をきたした症例は、追加外科手術または再 ESDにより長期生存が得られた。これらの
結果は、 ERGCに対する ESDは、最新のガイドラインに従って管理すれば長期生存につながるこ
とを示唆している。
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o
sp
i
ta
lの間で OSとCSSのいずれにも
本研究では、 h
有意差はなかった。この結果から、 ERGCに対する ESDは病院の症例数にかかわらず良好な長
期予後が得られることが示唆された。



【結論】

ERGCに対する ESDの長期予後は、一般病院を含む多施設共同研究において良好であった。
ERGCに対する ESDは病院の症例数に関係なく広く適用できることが示され、最新のガイドライン
に沿った管理を行うことが長期生存につながるとした点で価値ある業績である。
よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格があると認める。

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