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大学・研究所にある論文を検索できる 「放射線治療における画像変形技術の品質管理用動体可変型肺ファントムの開発に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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放射線治療における画像変形技術の品質管理用動体可変型肺ファントムの開発に関する研究

菅原 康晴 東北大学

2021.03.25

概要

近年、放射線治療において、ハードウェアの発展にとどまらず、非剛体画像レジストレーション(deformable image registration:DIR)機能を含む画像変形技術を搭載したソフトウェアの普及および発展を遂げている。肺の画像についても、DIR技術を基にした輪郭作成、線量分布の合算、肺換気機能画像作成等のアプリケーションが臨床現場で用いられている。DIRに基づく全てのアプリケーションの信頼性は、画像レジストレーションの精度に影響を受けることが知られている。画像レジストレーション精度は、DIRのアルゴリズム、工程、症例により変化することが報告されており、画像レジストレーションの品質を確保する必要がある。画像レジストレーションに係る全工程に渡る検証を可能にする物理的ファントムの開発が求められている。そこで本研究の目的は、DIRに関するソフトウェアの検証を可能にする動体可変型肺ファントムを開発することである。また、開発したファントムを用いて、複数の商用のDIRソフトウェアの画像レジストレーション精度について比較評価した。

 ファントムは、アクリル外筒、モータ駆動のピストン、および円盤状のスポンジ等で構成されている。ファントムのベースは、内部直径180mmのアクリル製の円筒型ファントムである。また、肺を模擬した内部の軟質部は、直径175mm、厚さ20mmの円盤状のスポンジ、血管および気管壁を模擬したマーカから成る。また、ファントム制御用ソフトウェアを開発し、ファントムの動作を制御できる仕様とした。ファントムを総合して評価するために質的特性(CT値の分布等)および動的特性(マーカの動作の再現性および変位量)について評価した。

 また、DIRに基づく画像レジストレーション精度を検証した。DIRの実施については、3種類の商用のソフトウェア(MIM Maestro、Ray Station、Velocity AI)を使用して、ファントム、マーカおよびDIRパラメータの設定を変化させ、検証を実施した。本検証において、ファントムの設定として、ファントム動作部の変位量を10、20および30mmと変化させ、マーカ設定として、クロスマーカおよびポイントマーカの個数をそれぞれ70-60、100-30、120-10と変化させた条件を対象にした。画像レジストレーション精度の検証にあたり、各マーカの特徴点をランドマークとして、目標レジストレーション誤差(target registration error:TRE)を算出した。これらの検証から、実臨床において本ファントムを導入することの可否について検討した。

 ファントムの質的特性に関する検証より、ファントムCT画像の平均CT値は、-969HUであった。動的特性に関する検証より、マーカの位置再現性はいずれの条件も1mm以下であった。また、ファントムの動作部より遠位、中位および近位における三次元的な変位量は、0.50、3.53および9.05mm(動作部変位量:10mm)、0.62、5.70および18.01mm(動作部変位量:20mm)、0.66、9.23および26.52mm(動作部変位量:30mm)であった。さらに、1年以上の期間を空あけて取得した、再現性およびファントム内部の軟質部の動作の結果は同等であった。

 ファントム設定とマーカ設定が異なる場合、平均TREの範囲は、0.63–15.60mm(MIM)、2.28–12.84mm(RayStation)および1.26–12.64mm(Velocity)であった。また、DIRパラメータ設定が異なる場合、平均TREの範囲は、0.73–7.10mm(MIM)、8.25–8.66mm(RayStation)および8.26–8.43mm(Velocity)であった。

 ファントムの特性に関する評価より、CT値の分布はやや低値を示し、マーカの変位量については先行研究における肺野の動作より大きな変位量を示した。これらの差は、様々な臨床的条件で撮影されたCT画像においては、許容範囲内の差異である。画像レジストレーションの精度(TRE)は、ファントム設定、マーカ設定およびDIRパラメータ設定により変化し、肺の画像に対する多施設試験の結果と類似する結果となった。ファントムが想定できる条件に応じてプロトコルの妥当性を検証できることを示した。

 当ファントムは、その質的および動的特性から、DIRの検証用ファントムとしての意義を十分発揮でき、臨床導入前の試運転、定期的な品質管理およびソフトウェアのバージョンアップ等に伴う品質管理用ファントムとして使用できる可能性を示した。

 本研究では、新たな動体可変型肺ファントムを開発し、DIRに基づく画像レジストレーション精度の検証を実施した。本ファントムの物理的特性は、肺野の動作およびCT画像におけるCT値の分布の点で類似した。また、画像レジストレーション精度の検証は、多施設試験の検証結果と類似した。ファントムの構成および設定により異なる結果の傾向を示したことから、臨床条件に則した条件下での検証が可能である。また、不規則な臨床的状況にも対応できる多様性を示した。この新たなファントムは、DIRソフトウェアを臨床現場で使用する際に、ソフトウェアの導入前の試運転および品質管理に有効なツールになり得る可能性を示した。

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