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Relative power integral bases for cyclic extensions

関川 隆太郎 Ryutaro Sekigawa 東京理科大学 DOI:info:doi/10.20604/00003696

2022.06.17

概要

本論文では,代数体の幕整基底について,3次巡回体の場合の既知の存在条件に改良を加え,より高次の素数次巡回拡大における相対幕整基底の存在条件へと拡張した.さらに,希少とされる相対幕整基底を持つ巡回拡大が無限に多く存在することを示した.

有理数体の有限次拡大体を代数体という、代数体の元を代数的数といい,代数的数が最高次の係数が1である整数係数多項式の根となるとき,代数的整数という、代数体に含まれる代数的整数全体のなす部分環を,その代数体の整数環という.有理数体は代数体であり,その整数環は有理整数環と一致する.代数体の体拡大に対し,整数環は環拡大を与える.特に,代数体の整数環は有理整数環の環拡大である.

与えられた代数体の整数環が,有理整数環上1元生成できるとき, 箒整基底をもつ,もしくはmonogenicであるという、代数的整数論において,代数体や代数体に付随する様々な不変量の研究は根源的な問題であり,とりわけ与えられた代数体が幕整基底を持つかどうかの判定は古典的な重要問題である. 1960年代にHasseは證基底を持つ代数体を数論的に特徴づけることは可能か問題提起しており, 現在ではHasseの問題とも呼ばれる. 一方で,幕整基底の有無は,代数体に付随する不変量の一つである判別式に関する方程式の整数解の有無と同値である.すなわち, Diophantus問題ともみなせる.歴史的に見ると,幕整基底に関する研究は,Diophantus方程式の解法の研究との関連がある.例えば,3次体の幕整基底を判定する手法が, Thue方程式の解法の応用として得られている.また,幕整基底の直接的な応用も多数ある.簡単な例としては,n次代数体の幕整基底の生成元を具体的に求めることで,整数環の一般元がその生成元のn-1次以下の整数係数多項式として一意的に表せる点がある.さらにその結果,整数環における演算,とくに乗法が明示的に計算できることも重要である、代数体が有理数体上Galois拡大であれば,Hilbertの分岐理論より,幕整基底の生成元の最小多項式の有限体上での分解を調べることで,任意の有理素数の分解法則を得ることもできる.

数論において古典的に重要である2次体や円分体,円分体の最大総実部分体などは全て幕整基底を持つことが,それぞれの判別式を計算することで示されている.幕整基底を持たない最初の例はDedekindによって与えられた.そして, 現在に至るまで様々な結果が得られている. 特に,有理数体Q上アー-レ拡大体に関しての研究は盛んである.先行研究をいくつか紹介する.先に述べたように,2次体は常に幕整基底を持つことはよく知られている. 3次巡回体に関する研究は, ArchinadやGrasによるものがある. 特に, Grasは3次巡回体が幕整基底を持つための必要十分条件を,ある単数が満たすべき性質として書き表した.また, 2次体とは異なり,3次巡回体は幕整基底を持つものと,持たないもののどちらも無限個存在することがDummitとKisilevskyによ、って示されている.彼らの手法は, Bakerの手法などを活用した不等式の評価である. 5次以上の素数次巡回体については, Grasが円分体の最大実部分体以外は幕整基底を持たないことを証明した.4次巡回体に関してはGrasや中原の研究がある. 中原は, Galois群がKleinの4元群となる4次体の幕整基底の研究や,幕整基底を持たない6次巡回体に関する研究も行っている. 近年では,有理数体上だけでなく,代数拡大の(相対)幕整基底に関しても研究が行われている.例えば,円分体のアナロジーとみなせる虚2次体のHilbert類体上のray class fieldは,多くの場合に幕整基底を持つことが,Schertzによって示されている.ただし,Schertzの手法が使えない幾つかの例外型の存在もする.その例外型においては, 高々有限個の具体例が知られているに過ぎず,幕整基底を持たない場合が有限個か無限個かも未解決のままである.一般に,幕整基底を持つ場合の証明に比べて,持たないことの証明は複雑であり, CougnardとFleckingerの与えた例などが有名である.現在までの幕整基底に関する研究で多く用いられている手法はBakerの手法などの解析的手法と特定の条件下での代数的手法である.これらは拡大次数の限界や適用条件の厳しさから汎用的ではないという問題点がある.そのため,拡大次数の大きさに影響されずに幕整基底を判定できる汎用的な手法が求められている.本研究は,そのような汎用的な手法を目指し,特に代数的な観点から行われたものである.

第1章において,幕整基底問題に関する基本的な事柄と,歴史的背景や既知の結果をまとめ,本論文における主結果の内容や意義を紹介した.

第2章では,3次巡回体の幕整基底に関する研究結果をまとめた.Grasによって与えられた,3次巡回体が幕整基底を持っための必要十分条件は,ある性質を満たす単数の存在とい5,実際の判定には不向きな定式化であったが,今回,より明示的で判定がしやすい条件を得ることに成功した.まず始めに,幕整基底を持つ3次巡回拡大体は,整数tでパラメータ付けされるShanksの3次多項式x3 -tx2 —(t+3)x-1の分解体(simplest cubic field)となる
必要があることを示した.その後,simplest cubic fieldが幕整基底をもっことの必要十分条件を,パラメータtに対する明示的な条件として書き表した. 証明は,単数群のGaloisコホモロジーや,多項式のNewton多角形など,代数的整数論において普遍的に用いられている道具立てで行われている.また,明示的な必要十分条件が与えられた応用の一つとして,具体的な数値実験の結果を表にまとめた.今回与えた結果の一部はGrasが与えた特徴付けからも,簡単な計算により復元することができる.しかしGrasの手法は,3次巡回体の単数論の上に成り立っていることから,判定の難しさのみならず,一般化への道筋が捉えにくい.これに比べて,本章における議論は見通しがよく,普遍的な手法が用いられている.他の場合の幕整基底問題への拡張も考慮した場合,大変意義が結果であると考える.実際に,次章において,本章の結果の一部ではあるが,大幅に一般化できたことを紹介する.尚, 第2 章の内容は東京理科大学の加塩朋和氏との共同研究である.

第3章では, 第2 章で得た条件の一般化とその応用を考えている. Shanksの3次多項式は,そのパラメータtを有理数まで広げると,任意の3次巡回体を生成することが知られている.この一般化として, 陸名は1の原始n 乗根ζを用いて, Q(ζ+ζ-1)を含む基礎体k上のn次巡回拡大を生成する多項式を発見した.この多項式は陸名の巡回生成多項式と呼ばれ, Shanksの3次多項式と同様に,基礎体kの元sによるパラメータ付けがなされている.本章では, nは奇素数で,パラメータsは基礎体kの整数環に値を取る場合を扱う.このとき, Q(ζ+ζ-1)上の奇素数次拡大が幕整基底を持っための十分条件を,パラメータsに対する明示的な条件で与えることに成功した.証明は第2章と同様,Newton多角形などの代数的な道具立てによって展開される.実際, nが3の場合は,この条件は必要十分条件となり, 第2 章で得た3次巡回体が幕整基底を持つ必要十分条件と一致する.加えて,その条件を用いて,Q(ζ+ζ-1)上奇素数次巡回拡大で幕整基底を持つものが無限個存在することを, 5以上の各素数に対して証明した.ここでは,まずDummitとKisilevskyの手法を拡張することで,パラメータsの満たすべき条件を,あるイデアルの満たすべき条件へと書き換えた.その後,その条件を満たすイデアルを数え上げた.一般にイデアルの数え上げは重複の可能性があるため難しい問題である.そこで新谷の基本領域を活用した評価を導入することで,元の数え上げの問題へと帰着させた.更にprime zeta functionの類似物の値の評価へと帰着させ,紹介した結果を得ることができた.先行研究から,幕整基底を持つことは基本的には希少なことであるとされている、例えば,先に述べた,有理数体上5次以上の素数次巡回拡大は例外を除き,幕整基底を持たないというGrasの結果がある.今回明らかとなった,基礎体を拡張することで幕整基底を持つ素数次巡回拡大が無限個構成できる現象は,Grasの結果と比較して興味深い結果であると考える.

参考文献

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