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大学・研究所にある論文を検索できる 「Study on Seismic Risk Evaluation of Stability of Agricultural Reservoir Embankments」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Study on Seismic Risk Evaluation of Stability of Agricultural Reservoir Embankments

房 晨 岐阜大学

2020.03.13

概要

本論文は,農業用貯水池における安全性確保を背景として,土のため池堤体の安定解析に関わる問題に対する検討を行った成果を示している。土のため池堤体の安定性評価においては,地すべりの場合と同様の円弧すべりを対象とする安定解析が実施される。この安定解析においては,概して,釣合のために必要な堤体内応力が得られるかどうかが材料の強さとの照合によって判定されるとともに,すべりが生じる場合にはその規模の推定も行われる。昨今,構造物の安全性検討においては,従来の新規設計のみならず長期間の供用に耐えるための維持管理,さらには大規模地震を経験した最近の日本においては特に,従来想定よりも格段に増して耐震性が強調されるようになっている。土のため池堤体の安全性検討においては,新規設計,維持管理,耐震といういずれの観点からも安定解析が評価手法の主要部をなし,その具体的手法の合理性向上と精緻化は各局面で常に求められている。本論文に示された研究は,まさにこういった社会の要請に応えようとしたものである。

本論文に示された研究成果は,大きく分けて二つある。一つは,実在の農業用貯水池を対象とする堤体安定解析のケーススタディであり,特に耐震性評価により適した物性値を自身で測定した上で採用し,大規模地震における危険性を指摘するに至っている。もう一つは,この安定解析を通じて土の性状による材料物性値変化の重要性に着目して実施された実験的解析である。特に粒度の相違に対する応答を幹としながら,安定解析の入力たる土の強さそのものに加え,より簡易な実験から得られる各種指標に対する検討を合わせて行ってこれらを照合し,傾向を整理している。

論文は全 5 章で構成されている。第 1 章において研究の背景と目的を説明し,続く第2 章において安定解析および土の残留強さに関する既往研究をレビューしている。ここに,特に土の残留強さについては,続く第 3 章と第 4 章での検討に関わるその測定方法ならびに測定値そのものの特性に対する知見を整理して示している。

第 3 章では,実在する農業用貯水池 2 基を対象とする堤体安定解析のケーススタディの成果が示されている。堤体はいずれも均一型の土堰堤であり,安定解析手法としては既往事例や合理性,実用性に配慮した上で,上下流方向断面に対するニューマーク法を採用している。解析においては最近の社会の要請に応えて大規模地震を想定した耐震性を対象とし,堤体への地震動入力として最近の大規模地震 3 件における観測波を採用している。材料物性値には自身で材料を採取した上で測定したものを採用している。土の強さは,一般的には連続体力学理論との整合性に優れる三軸圧縮試験から得られるが,実のところ試験の機構上,その測定結果は無傷の材料の強さを基本とするものとならざるを得ない。本論文では,地震における繰返し挙動,あるいは長い供用期間における進行性のすべりを想定し,無傷材料の強さと比較してより低く現れる残留強さを厳密に測定し採用している。その測定はリングせん断試験によっており,同試験法は考案時期こそ古いものの現時点で普及しているとは言えない一方で,特に試験過程におけるすべり面面積の変化が生じない機構を持つことから,こと特定面の残留強さの測定には合理性を有する。解析の結果,2 基いずれの堤体についても,強震を受けた際には円弧すべりが生じ,また強震直後においてはその変形は必ずしも大きくないものの,その後期間を経てから変形が増大する危険性を指摘するに至っている。

第 4 章では,前章における安定解析を通じて材料の残留強さを精確に把握する重要性を鑑みた上で,残留強さとともに他の各種指標を照合した実験的解析の成果を示している。実事業においてため池堤体遮水材としての使用が想定された土質材料を採取し,粒径による材料分級を行った上での調整によって試料粒度に変化を持たせながら,複数指標間の関係を見出すとともに議論一般化の可能性を企図している。粒度調整は細粒分含有率によっており,既往研究に見られるよりもその変化の幅を拡大させた検討を行っている。これらの解析から,まず細粒分の増加に伴い,無傷の強さおよび残留強さがともに減少すること,無傷の強さと残留強さの差が増大することとともに,その変化の程度が細粒分含有率の規模によって異なることを見出している。また,残留強さの主成分である残留摩擦角が,細粒分含有率,液体限界,塑性限界および塑性指数のすべてと相関を持つこと,これらのうちでも特に細粒分含有率,次いで液性限界,塑性限界との相関が高いことを見出した上で,より簡便な手法から得られるこれらの値から残留摩擦角を精確に予測し得ることを示唆している。

第 5 章では,前章までの成果を要約し,総括している。

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