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大学・研究所にある論文を検索できる 「セルロースナノファイバー及びアクリル樹脂エマルションブレンドを用いた木質材料の接着性向上と振動制御に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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セルロースナノファイバー及びアクリル樹脂エマルションブレンドを用いた木質材料の接着性向上と振動制御に関する研究

藤代, 薫 岐阜大学

2022.03.14

概要

木質材料は、建築部材、家具、楽器、音響機器など様々な用途がある。木質材料に求められる性能は、一般的には機械的・物理的性質である。その中で、近年では、Cross Laminated TimberやMass Ply Panelの発展により木造の中高層集合住宅が増加しており、振動を伝達しやすい木造では、室内の床衝撃音対策が重要になると考えられる。そして、床衝撃音は、床材の損失正接(tanδ)に強い影響を受ける。一方で、楽器や音響機器では、音源を効率的に放出するための適切なtanδを持つ木質材料が求められている。この様な観点から、本研究では、木質材料の更なる可能性を追求するため、近年注目を集めるセルロースナノファイバー(CNF)を用いた接着性能と振動伝搬特性の向上を試みると共に、ガラス転移点(Tg)の異なるアクリル樹脂エマルジョン(AE)ブレンドを用いた接着性能と制振性の向上について検討した。振動伝搬特性と制振性は、相反する項目であるが、この両特性を検証することは、木質材料の利用拡大を目指す上で非常に有用であると考えられる。

 第2章では、振動特性評価のスクリーニングとして、水性接着剤の振動特性をより正確に評価できる木質材料のエレメント形状を撓み振動特性の観点から検討した。その結果、木質材料のエレメントが小さいほど接着剤の特性を正確に評価できることが分かった。加えて、様々な水性接着剤の振動特性についてフィルム物性とパーティクルボード(PB)の両端自由撓み振動特性の観点から検討した結果、フィルムの動的粘弾性から得られたマスターカーブと撓み振動のtanδに強い相関があることを確認された。

 第3章では、CNFを添加した水性高分子イソシアネート系接着剤のモデル配合であるポリビニルアルコール-ジフェニルメタンジイソシアネート(PVA-pMDI)接着剤の木材接着性能とフィルム物性について述べると共に、CNFとPVAを用いたPBの撓み振動特性について述べた。その結果、PVA-pMDIに対するパルプ機械解繊から得られたCNFディスパージョン(CNF-d)の添加は、フィルム物性を向上させるが、接着強度を低下させることが分かった。そこで、タイプの異なるCNF-dの配合検討や示差走査熱量測定(DSC)による反応性調査により接着強度低下の原因究明を行った。その結果、CNF中にリグニンを含むリグノCNF-dで接着強度の向上が認められた。さらに、DSCより得られた硬化反応の活性化エネルギーから、CNF添加によるPVA-pMDI間の反応阻害が示唆された。その対策として、凍結乾燥したCNFを接着剤に再分散させたところ、PVA-pMDIの接着強度が向上することを突き止めた。さらに、CNFの添加は、PVAで作製したPBの撓み振動におけるtanδを低下させ振動伝搬性能を向上させることが分かった。

 第4章では、Tgの異なるAEとそれらにアセトアセチル化ポリビニルアルコール(APVA)にpMDIを添加したブレンド(APVA-pMDI)の木材接着性能とフィルム物性を検討した。さらに同接着剤を用いたPBの撓み振動特性と強度特性について調査した。まず、制振性と接着強度の両立を目指し、各種AEとそれにAPVA-pMDIを添加したAEの接着強度を検討した。AEのみの接着強度は、Tgが室温付近で最大を示し、Tgが室温から離れるにつれて低下した。そしてAPVA-pMDIの添加は、AE樹脂分に対して4割程度の添加で、どのAE対しても煮沸試験に耐えられる高い接着性能を発現させた。続いてその振動特性を調査するため、同AEフィルムの動的粘弾性におけるマスターカーブとPBの両端自由撓み振動を比較した。その結果、PBのtanδは、マスターカーブのtanδと類似した傾向を示したが、APVA-pMDIの添加は、どちらのtanδも低下させた。さらにPBの機械的性質を評価したところ、曲げ強度や剥離強度は、APVA-pMDIの添加よりもAEのtanδに強い影響を受けることが確認された。

 以上の結果は木質材料の振動特性を検討する上で重要な基礎データとなり、今後様々な研究開発に応用できる有用な知見であると判断する。

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