リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「地球外固体粒子の付着力に関する実験的研究: 微小重力場における役割」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

地球外固体粒子の付着力に関する実験的研究: 微小重力場における役割

長足, 友哉 神戸大学

2022.03.25

概要

固体粒子の付着力は重力の影響が小さい環境ほど重要である。惑星は、星の周りを取り囲むダストと呼ばれるサプミクロンサイズの固体微粒子とガスの円盤で形成される。惑星形成の最初のステップであるダストからキロメートルサイズの微惑星への凝集過程では、ダストの付着力が重要となる。また、固体粒子の付着力は、ラブルパイル小惑星の強度やその天体表面での粒子の可動性、大気を持つ天体上での粒子の移動限界風速にも影響を与える。自然界の粒子は非球形であるにもかかわらず、ミクロンサイズの球形粒子の付着力の測定結果や理論に基づき、粒子径に比例する付着力を仮定した理論・数値研究が多く行われている。また、凝集体の引張強度測定に基づく間接的な付着力測定の結果から、大気中での吸着水分子を除去するための加熱をすることで付着力が10倍程度増加する可能性が指摘されている。本研究では、付着力に対する、粒子の形状やサイズ、および、粒子への水分子吸着の効果を調べるために、測定前に吸着水分子を除去するための加熱を行った場合と行わなかった場合の大気圧および減圧下での隕石破片の付着力を測定した。

第2章では、その測定手順を示した。粒子の形状、上記の条件における滑らかな平板に対する粒子の付着力、および、常温常圧条件下での水分子吸着量を測定した。数十ミクロンサイズまたは数ミクロンサイズの隕石破片を異なる粉砕方法で作成して測定に用いた。また、比較として、数十ミクロンサイズのガラス粒子、シリカサンド粒子、サブミクロンサイズのアモルファスシリカ球からなる凝集体を測定に用いた。

3章、第4章では、その測定結果を示し、その結果について議論を行った。本研究でミクロンサイズ以上の粗さに相当する円形度は、不規則形状粒子の測定付着力が小さいことに影響し、また、本研究でサブミクロンサイズ以上の粗さに相当する算術平均粗さは、より粗い表面を持つ隕石破片の測定付着力が小さいことに影帯する。しかし、それらが同様の値である隕石や凝集体間に6倍の付着力の違いがあり、電子顕微鏡を用いてより高解像度で確認される細かい表面構造をもつ隕石や、細粒のマトリックスに富む隕石は付着力が小さい傾向がみられた。一方、数ミクロンサイズの隕石破片の測定付着力は、数十ミクロンサイズの数分の1の値だったが、その小さい粒子を塑性変形が起こらない程度の圧力で測定前に平板に押し付けた場合、両者の付着力はおおよそ一致した。このことは、地球重力下では、数十ミクロンサイズの粒子はおよそ3点で平板と接触するが、数ミクロンサイズの粒子は1点で接触する可能性が高いことを示している。これは、凝集体の測定付着力が、その構成球粒子のサイズから理論的に推定される付着力の数倍であったことからも裏付けられる。加えて、これらの結果は、隕石破片や凝集体の付着力が、塑性変形が起こらない限り、その表面構造、つまり、その構成粒子サイズによって決定され、粒子全体のサイズに依存しないことを示している。一方、本研究で確認された加熱による吸着水分子の除去による付着力の増加は3-4倍であった。これは、同様の加熱条件であったとしても、間接的な手法である粒子凝集体の引張強度測定に基づくおよそ10倍の推定値よりも小さかった。一方、本研究の水分子吸着量を用いて、吸着分子間の引力を無視した先行研究の単純なモデルに基づいた計算も、より大きな付着力の増加を予測する。このことは、これまでの吸着水分子除去の効果の見積もりが過大評価だった可能性を示唆する。

第5章では、この結果と議論で得られた知見をもとに、小惑星表層の粒子の可動性について議論した。また、原始惑星系円盤におけるダスト凝集過程への応用も検討した。本研究で確認された吸着水分子除去による付着力の3-4倍の増加は、10倍の表面エネルギー、つまり、付着力の増加を仮定した先行研究で指摘されていたほどではないものの、常温常圧条件での表面エネルギーをもとに推定されるよりも高速度衝突でのダスト凝集体の成長が可能であることを示唆している。一方、平板と粒子の接触点の数と吸着水分子除去の効果を考慮し、測定付着力から小惑星粒子のサイズに依らない接触点当たりの粒子間付着力を推定した。この推定値に基づき、先行研究による天体表面を移動しやすい粒子サイズを再検討した。天体表層での接触点の数や塑性変形の可能性を考慮したとしても、粒子サイズに比例して増加する付着力を仮定した先行研究による推定よりも、数十cm以下のサイズの粒子は表面を動きやすく、最も移動しやすい粒子サイズは先行研究の推定よりも桁で小さいおよそ1cmと予測される。この推測は、小惑星探査によって確認された、その表面における物質移動の痕跡の存在や、小惑星Itokawaの低地を覆う粒子サイズおよび小惑星Bennuから放出される粒子サイズがミリメー-トルからセンチメートルサイズであることと調和的である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る