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大学・研究所にある論文を検索できる 「低強度粗粒レゴリスで覆われた小惑星表面の衝突クレーターと衝突励起振動に関する実験的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

低強度粗粒レゴリスで覆われた小惑星表面の衝突クレーターと衝突励起振動に関する実験的研究

山本, 裕也 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

低強度粗粒レゴリスで覆われた小惑星表面の衝突ク
レーターと衝突励起振動に関する実験的研究

山本, 裕也
(Degree)
博士(理学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Date of Publication)
2024-03-01

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8590号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482338
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。



(別紙様式 3
)

論文内容の要旨

氏 名

山本裕也

専 攻

惑星学

論文題目(外国語の場合は,その和訳を併記すること。)
低強度粗粒レゴリスで覆われた小惑星表面の衝突クレーターと衝突励起振動に関
する実験的研究

指導教員

荒川政彦教授

氏名:山本裕也 N0.1

要旨
衝突クレーターは固体天体表面に普遍的に存在する地形である.天体同士の衝突は
速度数 kmS-lから数 1
0kms
汀こまでおよぶ高速度衝突から,数 m s

1を下回る低速度
衝突も存在する.衝突クレーターのサイズは直径 1
00km以上の巨大なものから,数

cmサイズの小さなクレーターまで存在する.大気が非常に薄<,地質活動が極めて少
ない天体では表面地形の更新が起こりにく<,比較的長期にわたって表面状態が保存さ
れる.そのため,固体天体表面の衝突クレーターからは衝突体のサイズや衝突速度,天
体表層の強度などの多くの情報を得ることができると期待される.一般的な条件下での
衝突現象を理解するためには,スケーリング則を確立する必要がある.広く用いられて
いるクレーターサイズスケーリング則として,次元解析を用いた 7
tスケーリング則と呼
ばれるスケーリング則が構築され,衝突実験の結果を基に確立されてきた.
小惑星などの小天体表面は一般にレゴリスと呼ばれる粒子層やボルダーと呼ばれ
る大きな岩塊に覆われている.近年の惑星探査により,小天体表面の詳細な状態が観測
されるようになった.小惑星表面のボルダーは数 100mから lm以下まで大小様々な
サイズを持ち,力学的強度が小さく高い空隙率を持つボルダーも存在することがわかっ
てきた.また,これまで観測された小惑星の表面は多くの衝突クレーターに覆われてい
て表面画像から各天体のクレーターサイズ頻度分布が得られており,比較的最近衝突ク
レーターが形成された若い地域を除いてクレーター数は飽和している.クレーターサイ
ズ頻度分布を基にこれらの小惑星の表面年代が推定されている.しかしながら,小惑星
I
t
o
k
a
w
aではクレーター数がこれまでの小天体に比べて少なく,クレーターが不明瞭な
形状をしていた.クレーターサイズ頻度分布から, I
t
o
k
a
w
aでは直径 10m以下のクレ
ーター数が少ないことがわかった.同様の傾向が小惑星 E
r
o
sでも確認された. I
t
o
k
a
w
a
やE
r
o
sでの小サイズのクレーター数の欠乏の要因として以下が挙げられる.( l
)ボルダ
ーの衝突破壊による衝突エネルギーの散逸(アーマリング効果),(2)衝突励起振動による
小さなクレーターの消失,(3)小さいサイズの衝突天体のフラックス不足である.
アーマリング効果は,衝突点近傍に大きなボルダーが存在する時に衝突によってボ
ルダーが破壊されることによって,衝突エネルギーが散逸される現象で,砂地に形成さ
れるクレーターサイズよりも小さくなるか,クレーターが形成されなくなる.室内実験
により,ボルダーのサイズが衝突体のサイズに比べて同程度以上の大きさである時,ま
たはボルダーの力学的強度が十分に小さい時にアーマリング効果によってクレーター
形成効率が低下しうることが確認されている.一方で,小惑星探査機はやぶさ 2で実施
した宇宙衝突実験では,小惑星 Ryugu表面が様々なサイズかつ低強度のボルダーに覆
われていたにもかかわらず,形成されたクレーターは,砂地に形成されるクレーターと
変わらないサイズのクレーターが形成された.ボルダーのサイズや強度がクレーター形

氏名:山本裕也 N0.2

s上
o
r
成効率に及ぼす影響(アーマリング効果)を系統的に調べる必要がある.小惑星 E
CIクレーター周辺の観測から,レゴリスやボルダーの移動
のクレーターや Ryuguの S
が確認されており,衝突励起振動により引き起こされた可能性が考えられる.特に小天
体では比較的小規模の衝突であっても,全球的に衝突励起振動の影響を受ける.小クレ
ーターの緩和や消失過程を理解するために,衝突励起振動の物理的特性を明らかにする
必要がある.そこで本研究の目的は,(!)ボルダーのサイズや強度がクレーター形成効率
に及ぼす影響を調べ,アーマリング効果を定量化すること,(2)クレーター形成時に起こ
る衝突励起振動の物理的特性を明らかにすること,である.
サイズと強度の異なる粒子で構成された 2種類の模擬小惑星表面試料を用いてク
レーター形成実験を実施した同時に,試料内部に加速度計を設置することで,衝突


4cm
(細粒,平均直径 3mm)と 1
励起振動を計測した.模擬試料には直径 l-4mm

3cm)の 2種類の風化凝灰岩粒子を用いた.これらの凝灰岩粒子の圧
.
玉,平均直径 1
3kPaで,平均空隙率は 77%と 85%とわか
壊強度を計測し,それぞれ約 60kPaと 1
った.衝突実験は一段式,二段式の縦型軽ガス銃を用いて行った.一段式ガス銃を用

1の範囲
いた場合は直径 3 m mの密度の異なる 5種類の弾丸を,衝突速度 50-220m s
まで加速した.二段式ガス銃を用いた場合は直径 2 m mの密度の異なる 8種類の弾丸

1まで加速した.
5kms
.
4
を,衝突速度 1
第 3章では,形成されたクレーターの形状やサイズについて報告する.実験によ

り形成されたクレーター形状を調べたところ,細粒標的では,お椀型クレーターが形
成されて弾丸密度が大きくなるほど深さ直径比が増加していたが,大玉標的では,歪
な形状のクレーターが形成され,クレーター深さが構成粒子サイズと同程度であった
ため,深さ直径比のばらつきが大きく,クレーターリムが不明瞭だった.高速度カメ
ラで衝突前後の衝突点付近の様子を観察すると,衝突後すぐに細かい砂煙が発生し放
出されたのち,標的粒子が放出されていることが確認でき,衝突点近傍で弾丸が標的
粒子を破壊していることがわかった.形成されたクレーターのサイズを運動エネルギ
ー(且)で整理すると,細粒標的と大玉標的ともに,全体の傾向として運動エネルギーに

6Jの範囲でクレーター半径が増加しないオ
.
<且<0
1J
.
対して右肩上がりだったが, 0
フセット領域が存在した.また,標的粒子のサイズの違いによるクレーターサイズの
違いも見られ,大玉標的に形成されるクレーターは細粒標的に形成されるクレーター

8倍程度の大きさだっ・た.クレーターサイズを冗スケール則で整理する
.
に比べて 0
と,細粒標的に関して,オフセットを挟んで二つのトレンドがあり,大玉標的に関し
て,同じ元での細粒標的の Jl'Rと比較して,

Rが小さくなることがわかった.このこ
'
l
J

とから従来の重力支配域のクレーターサイズスケール則では,空隙が大きく,強度が
小さい粒状標的に形成されるクレーターサイズをスケーリングできないことがわかっ


加速度計によって計測された衝突励起振動の加速度や伝播速度,持続時間につい

氏名:山本裕也 N0.3

て報告する.衝突地点から距離の異なる位置に加速度計を設置することで衝突励起振
動の伝播速度を計測した.伝播速度は標的粒子のサイズによって異なるが,衝突速度
や弾丸の密度に依存しないことがわかり,細粒標的で4
9
.
7士1
2
.
3m s
1
, 大玉標的で

6
7
.
0土2
3
.
7m s
1とわかった.これは,先行研究である Matsuee
ta
l
.
(
2
0
2
0
)の石英砂
での衝突励起振動の伝播速度と同じような速度を持つ.また,標的の受けた最大加速
度(
g
m
a
x
)とクレーターリム半径で規格化した衝突点距離(
x
)の関係を調べた結果,標的粒
子のサイズや弾丸の種類,衝突速度に依らず最大加速度は規格化距離が増加すると指
数関数的に減少することがわかり,最大加速度の距離減衰に関する経験式

g
m
a
x
=1
0
1

5
x(
x
r
R
r
i
m
戸を得た.得られた経験式から,クレーターリムにおける g
m
a
xを
3
5
.
9m/s2と推定でき,また, g
m
a
x
=
lG となるのは x
/
R
r
i
m
=
6
.
6となる地点であること
から,衝突点からこの範囲以内の標的粒子は衝突励起振動によって振動し移動してい
る可能性があることが示唆された.先行研究の Y
a
s
u
ie
ta
l
.
(
2
0
1
5
)や Matsuee
t

a
l
.
(
2
0
2
0
)のガラスビーズ標的や石英砂標的での衝突励起振動と比較すると,距離減衰
率がガラスビーズと同程度で,クレーターリムにおける g
m
a
xは約 0
.
2倍の大きさしか
ないことがわかった.
第 4章では,クレーターサイズスケーリング則を改良し,ボルダーのサイズや強

度によるアーマリング効果の定量化を行った. M
i
z
u
t
a
n
ie
ta
l(
1
9
8
3
)で提案されたス
ケーリング則を改良して,終段階有効エネルギー 1が衝突点付近での標的粒子の破壊と
クレーター孔を形成するため粒子の放出の両方に使われていると仮定し,アーマリン
グ効果を含んだクレーターサイズスケール則を構築した.衝突の際に破壊された標的
粒子の数aを考慮することで,標的粒子の破壊に使われるエネルギーとし,クレーター





直径 D と 1
, 標的粒子の半径 dに関して以下の関係が得られた. I=k
3{
P

a&)

( .}



pは標的バルク密度,&は標的粒子密度, D;は典型的なクレーター直径,

柘は定数.本研究のオフセットは aを変化させることで表現でき,実験結果から 1とa
の関係を求めたところ, a=A・I
叫Aは定数, n~ 0
.
9
8,だった. これらの関係から,アー
マリング効果によるクレーターサイズ減少係数 fを含んだ冗スケーリング則が以下の

1
{k
3
A
1
n
1
8
t)
信}

ように表現できた.咋=柘 f巧

.2
1冗g

2
0
,f=

3,1/4

...(*).本研究

で求まった nの値がほぼ lであったことから,衝突速度が大きくなるほど (
7
t2が小さ
くなるほど), aが大きくなるが,壊れた標的粒子の数によらず一定の割合でクレータ
ー形成効率が低下することがわかった.

(別紙 1)

論文審査の結果の要 旨

〗レゴリスで覆われた小惑星表面の衝突クレーターと衝突励起振動に関する実験的

題目

研究

区分




職名



主査

教授

荒川政彦

副査

教授

金子克哉

副査

准教授

中村昭子

副査

講師

保井みなみ



/‘‘

副査






本論文は、小惑星表 面を模擬した標的へ の高速度衝突実験を 実施し、クレーター 形成効率と衝突励起 振動
に対する標的構成粒 子の強度と空隙率及 び粒子径の影響につ いて新しい実験的知 見を得たものである 。
本論文は、 5章からなる。第 1章は本論文の背景や 目的がまとめられて いる。衝突クレータ ーは固体天
体表面に普遍的に存 在する地形であり、 この固体天体表面の 衝突クレーターを調 べることで、衝突体 のサ
イズもしくは天体表 層の構造や強度の情 報を得ることができ る。特にクレーター のサイズ頻度分布か ら再
現した衝突体のサイ ズ頻度分布は、天体 の表面年代を決める クレーター年代学に 利用される。クレー ター
サイズから衝突体の サイズを推定するた めには、クレーター 形成効率の情報が必 要であり、クレータ ーサ
イズスケール則(こ の後スケール則と呼 ぶ)から推定できる 。代表的なスケール 則としては冗スケー ル則
がある。しかしなが ら、対象とする天体 表層の強度や空隙率 、そして、構成粒子 の粒径に適したスケ ール
則を用いないと年代 推定には 1桁以上の差異が生ず る。小惑星はレゴリ ス(岩石粒子)やボ ルダー(岩塊)
で覆われているが、 そのボルダーは最大 で 100mを越えるものもあり 、ベキ乗のサイズ頻 度分布を持つこ
とが知られる。小惑 星イトカワやエロス ではクレーターサイ ズ頻度分布から、直 径 1
0m 以下のクレータ
ーの数が少ないこと がわかっており、ク レーター数の欠乏の 原因として次の 2つが重要である。 (
1
) 衝突
体が比較的大きなボ ルダーに衝突して破 壊するとエネルギー を散逸し、クレータ ーができなかったり 、サ
イズが小さくなった りする(これを装甲 効果という)、( 2
) 衝突時に発生した振 動(衝突励起振動) が全
球を揺らすことでレ ゴリスが移動し、小 さなクレーターが消 失する。一方、小惑 星リュウグウでは衝 突励
起振動に起因する全 球的なレゴリス移動 は確認されておらず 、はやぶさ 2が実施した宇宙衝突実験では、
装甲効果がほとんど 確認されなかった。 リュウグウのボルダ ーはく 3
00kPaと低強度で 50%以上の高い
空隙率を持つことが 分かっており、この ようなボルダーの特 徴がイトカワ・エロ スとリュウグウの間 で装
甲効果や衝突励起振 動の効率に影響を及 ぼした可能性がある 。そこで本研究は、 ボルダーの強度や空 隙率、
そして衝突体とボル ダーのサイズ比がク レーター形成効率に 及ぼす影響を調べて 、低強度・高空隙率 ボル
ダーの装甲効果を定 量化することを研究 目的とした。更に、 クレーター形成時に 起こる衝突励起振動 の伝
播・減衰過程に対す る低強度・高空隙率 ボルダーの影響を明 らかにし、リュウグ ウ上で起こる衝突励 起振
動による再表面化を 検討することも研究 目的としている。
第 2章では、実験に利 用した標的の準備方 法と標的構成粒子の 物性及び高速度衝突 実験の手法を述べて
いる。実験には、粒 径、強度、空隙率の 異なる粒子からなる 2 種類の標的を準備し た。この標的を直径

>27cmのタライに入れて、 表面を平らにならし 、その表面に対して 垂直に弾丸を衝突さ せてクレーター形
成実験を実施した。 また、衝突点からの 距離が異なる標的表 面に一軸加速度計を 複数個設置すること で、
衝突励起振動の伝播 ・減衰過程も調べた 。構成粒子には直径 1-4m m(細粒と呼ぶ、平均直径 3mm)と 1
-4cm(大玉と呼ぶ、平均直径 1.3cm)の 2種類の風化凝灰岩粒 子を用いた。これら 粒子の圧壊強度を計 測
したところ、それぞ れ 6
0kPaと 1
3kPaとなり、平均空隙率 は 7
7%と 85%であった。高速度 衝突実験
は、一段式縦型ガス 銃と二段式縦型軽ガ ス銃を用いて行った 。一段式縦型ガス銃 を用いた実験では、 直径

3mm、密度 1
.
1-7
.9gc
m
3の異なる 5種類の弾丸を衝突速 度 39-220ms1まで加速して衝突さ せた。ニ
段式縦型軽ガス銃を 用いた実験では、直 径 2m m
、密度 1
.
1-15.6gc
m
3の異なる 8種類の弾丸を衝突速
度 1
.
2
4
.
3kms
1まで加速して衝突さ せた。クレーター形 成過程は高速カメラ で 1
0
3-1
0
6コマ毎秒で撮影


し、実験後の標的は 回収してクレーター の形状を 2次元レーザー変位 計やノギスで計測し た。

氏名

山本裕也
I

第 3章では衝突クレータ ーの形状やそのリム 直径、そして加速度 計で測定した衝突励 起振動とその距離減
衰の特徴について述 べている。細粒標的 上に形成されたクレ ーターの形状はお椀 型であり、衝突速度 の増加
と伴にリム直径は大きくなる。しかしながら、弾丸が同じ場合はリム直径で規格化した形状は相似形である。
弾丸密度が大きくな ると深さ直径比が増 加して相似形から外 れる。大玉標的のク レーター形状は、リ ムが不
明瞭なすり鉢形状で あり歪な形状をして いた。クレーター深 さが構成粒子サイズ と同程度から数倍で あった
ため深さ直径比のば らつきが大きかった 。高速カメラで衝突 前後の衝突点付近の 様子を観察すると、 衝突後
すぐに細かい砂煙が あがった後,無傷の 構成粒子が放出され ることが確認できた 。これは衝突点近傍 で弾丸
が構成粒子を破壊し 、その後、クレータ ーが成長している証 拠である。リム直径 と弾丸運動エネルギ ー(且)
の関係を調べると、 細粒、大玉標的とも に概ね運動エネルギ ーのベキ乗でリム直 径は増加する。しか しなが

]の範囲でリム直径が 増加しない範囲が発 見された。また、大 玉標的で
6
.
]<且く 0
1
.
ら、今回の研究では 0
8倍となった。
.
はクレーター形成効 率の減少が見られ、 その直径は細粒標的 に形成されるクレー ターの約 0
リム直径を冗スケー ル則で整理すると、 細粒標的ではオフセ ットを挟んではっき りと二つの関係に分 かれる
ことが分かった。構 成粒子の破砕の有無 により、それぞれ別 の関係となる。大玉 標的では細粒標的と 比較し
tスケール則は、低強 度・高
て、クレーター形成 効率が系統的に下が ることが分かった。 細粒標的の結果から 1
空隙率粒子の標的に 対して適用できない 場合があることが分 かった。一軸加速度 計で標的表面に垂直 な方向

7
.
3
0士2
.
7
, 大玉標的で 6
1

3m s
.
2
7土 1
.
9
の加速度を計測した 結果、衝突励起振動 の伝播速度は細粒標 的で 4
)の関係を調
x
)とリム半径で規格化 した衝突点距離 (
x
a
m
g
1となった。また、標 的表面が受けた最大 加速度 (

ms
0乗で減衰す
.
2
べたところ、標的粒 子のサイズや弾丸の 種類、衝突速度に依 らず最大加速度は規 格化距離の xが lG以上ではパルス波形が観測され、 lG以下では弾性
a
m
ることが分かった。加速度波形を整理すると、 g
2と求まったが、これ は先行研究の砂

2m s
.
0
xは 3
a
m
振動波形が確認され た。なおクレーター リムにおける g
とから、表面の粒子 が流動化す
となる地点であるこ
8
.
/凡im=l
lG となるのは x
=
x
a
m
5である。 g
/
標的の約 1
る領域はクレーター 孔の極近傍であるこ とが確認できた。更 に、今回の結果とは やぶさ 2の宇宙衝突実験で
起きたリュウグウ上 の衝突励起振動の領 域を比較したところ 、衝突励起振動の加 速度がリュウグウ表 面重力
を越える領域はクレ ーター半径の約 7倍となり、観測結果 と矛盾しないことが 分かった。
第 4章では、既存のクレ ーターサイズスケー ル則を改良し、構成 粒子の粒径、強度、 空隙による装甲効果
)を用いたスケール則を改良した。 Iが衝突点付近の
I
の定量化を行ってい る。まず、終段階有 効エネルギー (
構成粒子の破壊と構 成粒子の移動による クレーター孔の拡大 に使われていると仮 定し、クレーターサ イズと
Iの関係を求めた。装 甲効果を考慮するた め、衝突の際に破壊 された標的粒子の数aを導入し、標的粒子 の破
壊に使われるエネル ギーを考慮した。実 験結果のクレーター サイズと Iの関係は、 aを変化させることで 再
現可能であり、細粒 標的のオフセット領 域は a =1 10 で再現できた。実験結果から Iとaの関係を求めたと
・I となりヽ細粒標的では A=19、大玉標的では A 5 であつた〇なぉヽ 1/Aはー粒子を破壊す
: A
ころ、 a :
るために必要なエネ ルギーである。この 結果から、低強度・ 高空隙率粒子の標的 では、衝突条件に関 わらず、




粒子破壊に消費さ れるエネルギーと クレーター掘削に 消費されるエネル ギーの比率は常に 一定であること
が分かった。次に、 この装甲効果による クレーター形成効率 の減少係数を冗スケ ール則に導入したと ころ、
7程度の値と
.
その減少係数は、 Iに関係なく A と粒子密度により決 まる定数となり、細 粒・大玉標的共に 0

0%クレーターサイズが小さくなることが分かった。
なった。すなわち粒 子破壊の効果により 約 3
第 5章は論文のまとめである。
本研究は、小惑星表 面を覆うボルダーの 強度、空隙率、粒径 がクレーター形成効 率と衝突励起振動の 伝播・
) 低強度・高空隙率粒 子からなる標的のク レーター形成効
減衰に及ぼす影響を 次のように明らかに した。( 1
) 粒子破壊によるクレ ーター形成効率の減 少
2
率は、粒子破壊が起 こるかどうかで異な る関係で表される。 (

)を用いた理論に破砕 した粒子数を導入す ることで記述できる 。破砕粒子数は I
I
は、終段階有効エネ ルギー (
)衝突励起振動による 加速度
%程度となった。(3
に比例し、破砕によ るクレーター形成効 率の減少は常に 30
5とな
/
xは砂標的の 1
a
m
0乗となった。一方、 リムでの g
.
2
xは砂標的よりも距離 減衰率が小さ m
の最大値 g
った。これらの結果 は、小惑星イトカワ 、エロス、リュウグ ウのようなボルダー で覆われた小惑星表 面に形
成されるクレータ ーやそれに伴う衝 突励起振動につい て重要な知見を得 たものとして価値 ある集積である
と認める。よって,学位申請者の山本裕也は,博士(理学)の学位を得る資格があると認める。

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