リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Generation of non-toxic equinatoxin-II unveiled intracellular distribution and function of sphingomyelin in the cytosolic leaflet of biomembranes」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Generation of non-toxic equinatoxin-II unveiled intracellular distribution and function of sphingomyelin in the cytosolic leaflet of biomembranes

仁木, 隆裕 東京大学 DOI:10.15083/0002002534

2021.10.15

概要

【序論】
 我々の体を構成する細胞は、形質膜やオルガネラ膜といった多彩な膜構造を有する。これら⽣体膜は脂質の⼆重層から構築されるが、各々の膜は多様でかつ特徴的な脂質組成・分布を有することで、シグナル伝達の場やオルガネラ固有の機能等を提供していると考えられている。このことはすなわち、細胞現象をタンパク質のみの作動機序から理解するのではなく、タンパク質が機能する脂質膜環境をも包括した枠組みの中で理解する必要性を⽰している。そのためには、⽣体膜脂質の時空間的分布および制御基盤の理解は不可⽋であり、脂質を可視化する技術が必要になる。
 ⽣体膜を作る多様な脂質の中でも、スフィンゴミエリン(SM)は約1割を占める主要なリン脂質であり、情報伝達の場の構築あるいは神経の髄鞘形成など⽣命活動に必須の役割を担うことが知られている。⾚⾎球膜の研究からSMは⼀般的に形質膜の表層(脂質⼆重層の外葉)に存在していると考えられており、細胞内、特に細胞質側の脂質層でのSMは、技術的制約もあるためほとんど注⽬されていなかった。そこで、私は、博⼠後期課程において、SMに特異的に結合するタンパク質性毒素であるエキナトキシン-II(Eqt-II)を無毒化することで、⽣細胞の細胞質に発現できるSMプローブの作製を⾏い、⽣細胞内でのSMの可視化、および細胞内、特に細胞質側のSMの機能の解明を⽬指した。

【⽅法と結果】
1. 無毒化Eqt-IIの創出と細胞質側SMの局在解析
 SMの検出には、シマミミズ由来毒素であるライセニンが広く利⽤されてきたが、ライセニンはクラスター化したSM(脂質ラフト内のSMなど)を選択的に認識するプローブであり、分散して膜に存在するSMを検出できない短所がある。⼀⽅、Eqt-IIは、分散したSMにも結合することができ、⽣体膜での会合状態の異なるSMを可視化できると考えられている。実際、固定細胞においてライセニンが標識できないSMも、Eqt-IIにより検出可能であった(R. Yachi et al., Genes to Cells 17(8): 720-7(2012))。しかし、Eqt-IIは、⽣体膜に結合すると速やかにporeを形成する毒素であり、⽣細胞に対して強烈な毒性を⽰すというプローブとしての脆弱性があった。また、Eqt-IIは全⻑でSMを認識すると考えられており、SM結合ドメインのみを抽出するような無毒化⼿段を取れず、そのことが⽣細胞内のSMの解析を困難にしていた。
 そこで、私は、Eqt-IIの⽴体構造予測から毒性発揮に関与しうるアミノ酸残基をアラニンに置換するスクリーニングを⾏い、SM結合特異性を維持しつつ、細胞毒性を軽減させる変異を探索した。その結果、⼆箇所のアミノ酸残基をアラニンに置換することで、Eqt-IIの無毒化に成功した。この無毒化Eqt-II(以下、SMプローブと表記)に蛍光タンパク質を付与したものを⽣細胞の細胞質に発現させることで、細胞質側を向くSMの動態を可視化することが可能となった。発現させたSMプローブは主に核近傍部に局在したが、バクテリア由来のSM分解酵素を細胞質にマイクロインジェクションすると直ちに細胞質中に散在化したことから、このプローブは⽣細胞内のSMを認識していると考えられた。以上のことから、⽣体膜脂質層の細胞質側にもSMが存在することが強く⽰唆された。また、免疫染⾊法により詳細なオルガネラ局在を解析したところ、SMが⼀部の細胞内オルガネラ(リサイクリングエンドソーム、リソソーム、トランスゴルジ)に局在していることがわかった。

2. 細胞質に発現させたSMプローブを散在化させるタンパク質の同定
 次に私は、上記SMの細胞内局在を可能とするタンパク質の同定を⽬指し、細胞質に発現させたSMプローブの局在異常を指標に、脂質輸送、およびSM合成・代謝に関連するタンパク質群(85種検討)のRNAiを⾏った。その結果、とあるコレステロールの細胞内輸送に必須なタンパク質の発現抑制により細胞質に発現させたSMプローブのオルガネラ局在が失われることを⾒出した。このタンパク質の機能阻害剤処理によっても、SMプローブの散在化が⾒られた。また、発現抑制時に⾒られる細胞内コレステロールの局在異常を解消させても、SMプローブの散在化はほとんど回復しなかった。以上のことから、上記同定したタンパク質による細胞質SMプローブの散在化は、コレステロールの異常が直接的な要因ではないことが⽰唆された。現在、コレステロール輸送以外の機能により細胞質側脂質層のSM局在化に機能している可能性を考えている。

3. 細胞質側脂質層に存在するSM近傍の候補タンパク質の同定
 細胞質側に存在するSMの機能を知るためには、SMに結合するタンパク質や近傍に存在するタンパク質群の情報が重要である。そこで、私は、SMプローブとビオチン化酵素とを融合させたものを細胞質に発現させることで、細胞質側脂質層SMのごく近傍に存在しSMと相互作⽤が予想されるタンパク質を網羅的にビオチン化した。その結果、LC-MS/MS解析により約500種類のタンパク質をSM近傍の候補分⼦として同定した。予想に即し、シグナル受容体や脂質修飾化タンパク質といった、脂質ラフトに存在するとされる膜タンパク質が多く含まれていた。⼀⽅、注⽬すべきことに、細胞内膜輸送を制御するタンパク質が数多く同定された。このことから、細胞質側脂質層に存在するSMは膜輸送の制御に関与している可能性が⽰唆された。

【まとめ】
 本研究において私は、⽣細胞に応⽤可能な新規SMプローブを作製することで、細胞質側脂質層にSMが存在すること、およびその詳細な細胞内分布を明らかにした。また、細胞質側SMの局在に必要なタンパク質を同定し、SM近傍に存在すると予想される候補タンパク質を網羅的に同定した。すなわち、これらのタンパク質の阻害・⽋損を⾏うことで、細胞質側脂質層に存在するSMの機能、およびSMが関わる現象を探索できるようになった。今後は、他に数多く同定されたSM近傍の候補タンパク質の解析などを通じ、SMの新たな機能、新たな内膜ドメインの存在を提唱するとともに、SMの局在変化が細胞内現象にどのように関わるか、などの点も解明していきたい。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る