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大学・研究所にある論文を検索できる 「ハイブリッド型人工神経の効果に関する実験的研究:ホットドッグ法」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ハイブリッド型人工神経の効果に関する実験的研究:ホットドッグ法

Tamura, Ryosuke 神戸大学

2021.09.25

概要

(諸言)
外傷や腫瘍切除後などさまざまな要因で生じる比較的大きな神経欠損に対しては、これまで自家神経移植により、機能改善が図られてきた。自家神経移植は、異物反応や免疫反応の問題がなく、組織学的・解剖学的にも末梢神経独自の構造を有する同種組織を用いた神経欠損部の架橋であるため、現在も神経再建術のgold standardである。しかし、自家神経移植の欠点、制限として、採取部位の神経損傷・知覚麻痺・断端神経腫・神経サイズの不適合といった様々な問題があり、いまだ解決されていない。 そこで自家神経移植に代わる環状構造を有する神経導管に関する研究および開発が行われてきた。神経導管は神経欠損部を架橋し、再生軸索の足場を提供する無細胞な移植材料であるが、その有用性については、Mackinnonらが3cmまでの欠損を有する指神経の修復にNeurotubeⓇを使用し良好な知覚回復を獲得できたことを報告して以来、多くの使用報告がある。それと同時に効果の限界についても徐々に明らかとなり、適応は知覚神経に限り、欠損の長さは3cmまでとされてきた。その後、4cmの正中神経のgapに対して、スライスした自家神経を2本のNeurotubeⓇ内に置いて再建し、知覚機能、運動機能において良好な回復が得られたとする症例報告をはじめとして、神経導管内に、培養シュワン細胞やさまざまな幹細胞 (脂肪幹細胞、iPS 細胞など) の移植、または bFGF を含むゼラチンマイクロスフェアを神経導管に追加するなど様々な方法でその限界を超えようとする試みがなされている。ただし、移植された細胞の生存率や安全性などの問題により、臨床応用へのハードルは高く、克服す るにはいまだ長い時間がかかると考えられている。われわれは自家神経から一部の神 経束のみを単離し、神経導管に付加するハイブリッド型人工神経を移植することで、これまで報告されてきた神経導管の効果の限界を突破することが可能になると同時 に、従来の自家神経移植で問題であった神経採取部の犠牲を軽減することができるの ではないかと考え、実験的研究を行った。本法を、ハイブリッド型人工神経の形態か らHot dog法と呼称する。本研究の目的は、本法で神経移植を行った結果、神経移植部 において機能がどの程度改善し、神経採取部においてどの程度機能が温存できるかを、ラットを用いた動物実験で検証することである。

(方法)
ラットの坐骨神経を10mm切離し、欠損モデルを作成した。切離した自家神経を180°反転して縫合する群(I群、自家神経移植群)、切離した坐骨神経から10mmの神経束を単離し神経縫合を行った後、神経導管を付加した群(II群、Hot dog群)、欠損部を神経導管のみで架橋する群(III群、神経導管移植群)、切離した坐骨神経から10mmの神経束を単離し架橋する群(IV群、神経束移植群)を作成した。さらに、坐骨神経を露出しそのまま閉創する群(V群, sham control群)、神経上膜を切開し、神経束のみを10mm単離して、神経上膜を縫合閉鎖する群(VI群、神経束単離群)を作成した(全て n=8)。全ての群で、ラットの下肢機能を足跡分析(Walking track analysis)による坐骨神経機能の評価を継時的(手術後4,8,12週)に行い、坐骨神経機能指数(sciatic nerve function index, 以下SFI)を算出し、さらに各群の平均値を算出し、手術後12週の各グループの平均SFI値を算出した。手術後12週で腓腹筋重量比の計測を行い、各群の平均値を算出した。手術後12週ですべての群で神経再建部中央の横断切片を作成し、組織学的評価を行った。すべての群において神経再建部の遠位で横断切片を作成し、神経細胞マーカーである抗neurofilament protein抗体による免疫染色を行い、染色された再生神経軸索数の定量評価を行った。以上のデータについて、Jonckheer-Terpstra検定による統計学的解析を行った。統計解析にはR statistical package (version 4.2.0, R Foundation for Statistical Computing)を使用した。

(結果)
術後 12 週の各グループの平均 SFI が、V 群> VI 群> I 群> II 群> IV 群> III 群の順序で有意に減少する傾向があった(p<0.001)。術後 12 週における各グループの腓腹筋湿重量比が、V 群> VI 群> I 群> II 群> IV 群> III 群の順序で有意に減少する傾向があった(p<0.001)。II 群の術後 12 週目の神経再建部中央部の切片において、抗neurofilament protein 抗体陽性の再生軸索が神経導管内の神経束周囲で確認された。術後 12 週の抗 neurofilament protein 抗体陽性細胞の平均数が、V 群> VI 群> I 群> II 群> IV 群> III 群の順で有意に減少傾向を示した(p<0.001)。

(考察および結論)
本法は、機能改善と神経再生効果において自家神経移植には劣るものの、神経導管のみや神経束のみで架橋する場合と比べて良好な結果が得られる可能性が示唆された。また神経束のみを採取する方法は、自家神経移植よりも機能改善と神経再生効果において良好な結果となった。本法は、自家神経から神経束を採取して、欠損部に架橋し、神経導管を付加するという比較的簡便な方法であり、培養細胞や幹細胞などを付加するハイブリッド型人工神経と比較して、安全性の観点からも臨床に応用しやすく、新たな神経再建法として有用である。さらに今後、本法が自家神経移植と遜色のない効果を得るために、外筒が collagen からなる神経導管をはじめとした他素材の神経導管を用いた本法の効果の比較検証、神経導管内への神経束の付加方法の違いによる効果の比較検証、またハイブリッド型人工神経内の神経軸索の再生様式の解析が必要である。

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