Adipose tissue-resident macrophages skew towards lipid-associated macrophages after high-fat diet administration
概要
〔目的〕
非肥満状態の脂肪組織Macrophageは, 抗炎症作用をもつM2-like Macrophageがその大多数を占める. 高脂肪食を負荷することで炎症作用をもつM1-like Macrophageが骨髄から誘導され, インスリン抵抗性を引き起こす原因となるというのがこれまでの定説である. しかし, 脂肪組織に常在しているM2-like Macrophageが高脂肪食負荷によりM1-like Macrophageに変化するかについては不明であった. 本研究ではM2-like Macrophageを蛍光標識できるレポーターマウスを作成し, M2-like Macrophageが M1-like Macrophage に変化するか否か を検討した . また , この変化した Macrophageの遺伝子プロファイルや肥満病態における役割について検討した.
〔方法並びに成績〕
脂肪組織常在性 M2-like Macrophage のマーカーである CD206 を蛍光標識可能なレポーターマウスを作成した. 高脂肪食負荷前にタモキシフェンを投与することにより, その時点で CD206 陽性である Macrophage を蛍光標識することが可能である. CD206 陽性 Macrophage を蛍光標識した後に高脂肪食を負荷し, 4 週後, 20 週後に免疫染色, フローサイトメトリーで評価した. いずれの週数においても蛍光標識された細胞の一部が M1-like Macrophage の代表的なマーカーである CD11c 陽性へと変化していた. CD11c は炎症マーカーであるというこれまでの通説に反し, CD11c 陽性へ変化したそれらのMacrophage では炎症関連遺伝子発現レベルが低下していた. また, 細胞内に脂質を取り込んでおり,脂質代謝関連遺伝子発現レベルが上昇していた.
〔総括〕
脂肪組織常在性M2-like MacrophageがCD11c陽性へと変化することを見出した. CD11cは炎症マーカーとされているが, M2-like MacrophageからCD11c陽性へと変化した脂肪組織常在性Macrophageは炎症惹起というよりはむしろ, 肥満病態で過剰となる脂質の取り込み・代謝を主な役割としていることが示唆された.