地球磁気圏における磁気リコネクションの磁気流体的研究
概要
研究目的 (Research Objective):
昼側地球磁気圏における磁気リコネクションは、太陽風磁場と地球双極子磁場の境界で起こるため、電流層に対して物理量が非対称な、いわゆる非対称磁気リコネクションとなる。これまでの2次元MHDシミュレーションにより、非対称磁気リコネクションは対称磁気リコネクションとは大きく異なる構造を持ち、また、非対称度が大きくなるにつれて磁気リコネクションレイトも小さくなることを示した。本研究では、2次元MHDシミュレーションを3次元に拡張し、2次元シミュレーションで得られた結果を検証することを目的とする。
計算手法(Computational Aspects):
これまでのxy 平面における 2次元シミュレーションと同様に簡単のために全領域温度一定を仮定した等温平衡電流シートを 3次元空間に初期状態として設定し、電流シート内に存在する原点付近のz方向に有限な領域に初期擾乱を与え、時刻に24では、電流駆動型の異常抵抗を仮定することで自発的高速磁気リコネクションをシミュレーションする。この初期擾乱の方向の長さェをパラメータとして、拡散領域の三次元方向の長さに対する非対称磁気リコネクションを調べる。数値計算には有限差分法である2step-Lax-Wendroff法を用いて磁気流体方程式を解く。x,y方向には2次元計算と同じ空間解像度で計算し、2方向の空間刻みはz方向磁場強度に応じて解像度を設定する。
研究成果(Accomplishments):
Fig.1は、3次元 MHD シミュレーションで得られたプラズマ圧力の空間分布を示している。カラー等高図はxy 平面(2=0)における圧力分布を示し、水色が圧力P=1.2の等値面を示している。大小2つのプラズモイドが形成され、x方向に広がりながら伝搬していることが分かる。これは、拡散領域(x-line)が分裂し、2つのプラズモイドの間に存在することを示している。また、この図は磁場強度非対称度 4=2, 初期擾乱のz方向長さ 1=2のケースの計算結果であり、その初期擾乱の4-0.001 の等値面を赤色で示している。初期擾乱の幅よりもプラズモイドが広がりながら成長していることが分かる。図の計算では、2方向のシア磁場を入れていないため、プラズモイドは2方向に対称な形状で成長している。初期擾乱、つまりx-lineの2方向長さの非対称磁気リコネクション依存性をFig.2に示す。Fig.2は、1:-2,4,6の3つの計算によるxy平面におけるプラズマ流速のx方向成分のカラー等高図を示している。すべてのケースにおいてリコネクションジェット内の2層構造、低Bサイド(下側)プラズモイドへの高6サイドプラズモイドの流入が見られ、これまで示してきた2次元計算の結果と一致している。一方、初期擾乱のz方向長さ以外の条件が同一であるにも関わらず、リコネクション構造の成長速度が著しく違うことが分かる。この成長速度の違いは、拡散領域へのz方向からのプラズマの流入によるリコネクションレイトの成長の遅れを示しており、もっとも著しい三次元効果であることが示された。