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大学・研究所にある論文を検索できる 「硬骨魚類のCD8陽性T細胞の寄生虫に対する自然細胞傷害性の特性評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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硬骨魚類のCD8陽性T細胞の寄生虫に対する自然細胞傷害性の特性評価

助田, 将樹 SUKEDA, Masaki スケダ, マサキ 九州大学

2021.03.24

概要

魚類における細胞傷害性T細胞(CTL)は、哺乳類と同様に獲得免疫において重要な免疫細胞であり、細菌やウィルス等の様々な病原体に感染した宿主細胞を認識・殺傷する能力を有する。事前に抗原感作されたCTLは病原体に感染した自己細胞表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と抗原ペプチドの複合体をT細胞受容体(TCR)によって認識することが知られている。しかし、近年、抗原感作されていない魚類CTLがTCRを介さずに宿主細胞外の細菌を直接殺傷することが報告されており、魚類CTLが自然免疫においても重要な働きを持つ可能性が提示されている。

 寄生原虫Ichthyophthirius multifiliisを原因する白点病などの寄生虫感染症は観賞魚産業や養殖産業において魚の大量斃死をもたらしているもの、魚類の寄生虫に対する生体防御機構は未だ不明な点が多い。特に魚類CTLが寄生虫に対してどのような役割を持つかは未だ解明されていない。そこで本研究では、魚類CTLが自然免疫様の傷害活性を寄生虫に対して示すかを調査すると共に、その細胞傷害機構の解明に取り組んだ。

 本研究では、淡水魚であるギンブナ(Carassius auratus langsdorfii)と淡水性寄生原虫であるI. multifiliisを用いた。ギンブナの腎臓と鰓から磁気細胞分離法(MACS)を用いてCD8陽性CTLを分離し、I. multifiliisを96-wellplate内で混合した後にトリパンブルー染色によって死亡したI. multifiliisの個体数を測定し、CTLの寄生虫に対する細胞傷害活性を評価した。その後、その細胞傷害機構を解明するため、CTLとI. multifiliisの間に双方が通過することが出来ない孔径0.4μmのメンブレンフィルターを設置した際のI. multifiliisの死亡数を測定することで、CTLが寄生虫を殺傷するには接触する必要があるのかを調査した。次にCTLがI. multifiliisを殺傷する際に使用している細胞傷害因子を探索した。CTLをパーフォリン阻害剤コンカナマイシンA(CMA)またはセリンプロテアーゼ阻害剤3,4-ジクロロイソクマリン(DCI)で処理することで、I. multifiliisに対する細胞傷害活性に影響を及ぼすのかを調べた。更にCTLがI. multifiliisの認識に使用している受容体を探索した。アメリカナマズの非特異的細胞傷害性細胞(Non-specific cytotoxic cell: NCC)が寄生虫に対する傷害活性を有することが報告されていることから、Non-specific cytotoxic cell receptor(NCCRP-1)がギンブナCTLsによるI. multifiliisの認識に関与しているのではないかと考えた。まず、NCCRP-1がギンブナCTLsにmRNAレベルで発現していることをRT-PCRで確認した。過去の研究によりNCCRP-1を介したNCCの活性化には、細胞内の非受容体型チロシンキナーゼの一つであるヤヌスキナーゼ2(JAK2)を介したJAK/STAT経路が関与していると考えられている。よってCTLをJAK1/2阻害剤であるBaricitinibまたはTCRを介した細胞の活性化に関与するSrcファミリーキナーゼの阻害剤であるDasatinibでの処理による、I. multifiliisに対する細胞傷害活性への影響から、どちらの受容体が寄生虫の殺傷に関与しているかを検討した。その後、ギンブナNCCRP-1のアミノ酸配列から抗原性の高いペプチドを免疫原として、抗ギンブナNCCRP1ウサギ抗体を作製した。これまでにT細胞でNCCRP-1が発現しているのを示した証拠は無い。よってウェスタンブロット解析により、CTLがNCCRP-1をタンパク質レベルで発現しているかを調べた。次にギンブナNCCRP-1のアミノ酸配列から抗原認識部位と考えられる配列を推測しその部位を含む3種類のペプチドを合成し、I. multifiliisを合成ペプチドで処理した後にCTLと接触させた際のI. multifiliisの死亡率から、CTLにおける寄生虫の認識にNCCRP-1が関与しているかを評価した。

 単離したCTLはI. multifiliisに対する高い傷害活性を示した。また、CTLとI. multifiliisの接触を阻害するとI. multifiliisに対する傷害率が大きく減少したことから、CTLは直接寄生虫を認識し、接触することで寄生虫を殺傷することが示された。CMAとDCIを用いた試験では、両阻害剤によりI. multifiliisの死亡率が減少したことから、パーフォリンとセリンプロテアーゼを使用することで寄生虫を殺傷すると考えられる。Baricitinibで処理するとCTLのI. multifiliisに対する傷害率が有意に減少した。ウェスタンブロット解析により、CTLはNCCRP-1を発現しているのを確認した。合成ペプチドを用いた阻害試験では、3種類の合成ペプチドのうち抗原認識部位と推定したペプチドのみでI. multifiliisの死亡率が減少した。よってギンブナCTLの寄生虫に対する細胞傷害機構にNCCRP-1が関与していることが示された。以上から、CTLは、魚類の寄生原虫に対する防御機構において重要な細胞であり、NCCRP-1で寄生虫を認識して、複数の細胞傷害因子によって殺傷するという哺乳類ではみられない新規の細胞傷害メカニズムを有していることが考えられる。

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