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書き出し

Selective MRAにおける前交通動脈血流の有無は頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣と関連する

山下, 俊輔 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Absence of the Anterior Communicating Artery on
Selective MRA is Associated with New Ischemic
Lesions on MRI after Carotid Revascularization

山下, 俊輔
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8605号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482353
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Absence of the Anterior Communicating Artery on Selective
MRA is Associated with New Ischemic Lesions on MRI
after Carotid Revascularization

Selective MRA における前交通動脈血流の有無は頚動脈血行再建術後の新規梗塞
巣と関連する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
脳神経外科学
(指導教員:篠山 隆司教授)
山下 俊輔

【背景】内頚動脈狭窄・閉塞患者において Willis 動脈輪を介した側副血行路
は脳血流循環動態や頚動脈血行再建術での内頚動脈一時遮断中の灌流維持に
において重要な働きをするとされている。さらに術前の脳循環予備能(CVR)低
下や術中の内頚動脈一時遮断中の低灌流が術後の新規梗塞巣の発生と関連し
ていることが報告されている。一方で、Willis 動脈輪を介した側副血行路の
発達は前交通動脈(Acom: anterior communicating artery)や後交通動脈
(Pcom: posterior communicating artery)の有無などの Willis 動脈輪の形態
に影響を受ける。Willis 動脈輪を介した側副血行路の中で Acom を介した側
副血行路は特に重要と考えられている。しかし、Acom は細くて短い動脈であ
り、通常の magnetic resonance angiography(MRA)では Acom 血流の有無を正
確に評価することは困難なことが多い。MRA の任意血管信号の選択的除去が
可能な pencil beam 型 presaturation (BeamSAT) pulse を用いて、片側内頚
動脈(ICA: internal carotid artery)単独の”ICA-selective MRA”を作成す
ることで、内頚動脈狭窄において Acom 血流を正確に評価できることが過去に
報告されている。そこで、内頚動脈狭窄患者で Acom 血流がなければ術前脳血
流循環動態や術中内頚動脈一時遮断中の灌流が低下し、頚動脈血行再建術後
の新規梗塞巣の増加につながるという仮説を立てた。本研究では BeamSAT
pulse を用いて Acom 血流を正確に評価し、Acom 血流の有無と周術期脳血流循
環動態や術後の新規梗塞との関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】2015 年 3 月から 2020 年 12 月までに神戸大学医学部附属病院で頚部
内頚動脈狭窄に対して血行再建術が検討された患者 83 例を対象とした。
BeamSAT pulse を用いて、”ICA-selective MRA”を作成し、Acom 血流描出の
有無を評価した。片側の ICA-selective MRA で両側 ACA が描出される症例を
Acom(+)、片側 ACA のみしか描出されない症例を Acom(-)と定義した。術前の
脳血流循環動態は single photon emission computed tomography (SPECT)を
用いて、安静時脳血流(CBF)と脳循環予備能(CVR)を評価した。頚動脈血行再

建術中の内頚動脈一時遮断中に near infrated spectroscopy(NIRS)で測定し
た脳酸素飽和度(rSO2: regional cerebral oxygen saturation)の変化も評価
した。術翌日の頭部 MRI 拡散協調像(DWI)で患側 ICA 領域に新規高信号が出現
した症例を DWI high(+)と定義した。

【結果】Acom(+)群は 61 例、Acom(-)群は 22 例であった。術前 CVR は Acom(-)
群で低い傾向にあったが、統計学的な有意差は認めなかった。一方で、術前
の頚動脈エコーで収縮期最大血流速度(PSV: peak systolic velocity)>
200cm/s 以上を示した高度狭窄患者に限ると術前 CVR が Acom(+)群で 39.6%、
Acom(-)群で 25.2%と Acom(-)群で有意に低下していた。また、術中の内頚動
脈一時遮断中の rSO2 も Acom(+)群では 3.7%の低下で Acom(+)群では 8.5%の低
下と Acom(-)群で有意に低下していた。DWI high(+)群は 23 例であった。術後
DWI 高信号の予測因子の多変量解析では Acom 血流の存在(OR, 0.07;95% CI,
0.012-0.45;P=0.0046)、頚動脈ステント留置術(CAS)(OR, 12.99;95% CI,
2.09-80.86;P=0.0060)、年齢(OR, 1.14;95% CI, 1.01-1.29;P=0.039)が有意
な予測因子であった。さらに術前の頚動脈エコーで PSV>200cm/s 以上を示し
た高度狭窄患者に限ると、術後 DWI 高信号の予測因子は Acom 血流の存在(OR,
0.08;95% CI, 0.014-0.64;P=0.017)のみであった。

【考察】内頚動脈狭窄患者において Willis 動脈輪を介した側副血行路は狭窄
が進行した際や頚動脈血行再建術中の内頚動脈一時遮断中に CBF や CVR を維
持するために発達すると考えられている。一方で Willis 動脈輪を介した側副
血行路の発達は Willis 動脈輪の解剖学的形態の影響も受ける。本研究での高
度狭窄患者で術前 CVR が Acom(-)群で有意に低下していたという結果や内頚
動脈一時遮断中の rSO2 が Acom(-)群で有意に低下していたことはこれらを裏
付けている。近年では、頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣は認知機能などの
長期的な予後に関連するとされており、術前に新規梗塞巣出現のリスクを評

神戸大学大学院医学(系)研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
受付番号

論文題目

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氏 名

甲 第 3270号

山下俊輔

Absenceo
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eA
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rCommunicatingArteryon
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eMRAにおける前交通動脈血流の有無は
頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣と関連する
主 査
審査委員

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a
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Ch
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副 査

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副 査

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1
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e
x
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1
1
1
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1
1
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r
(要旨は 1,000
字 ∼ 2,000字程度)

い1




l

員咋 h
}
丁:恥/鷺ご


背景 】
内頚動脈狭窄・閉塞患者にお いて W
illis動 脈輪を介した側副血行路は脳血流循環動態や
頚動脈血行再建術での内頚動脈一時遮断中の灌流維持 にお いて重要な働 きをするとさ れて
いる。さらに術前の脳循環予備能 (
C
V
R
)低下や術中の内頚動脈一時遮断中の低灌流が術後 の
新規梗塞巣の発生と関連していること が報告されて いる。一方で、 W
illis動脈輪を介した
A
c
o
m:anterior communi
c
a
ti
ng a
r
t
e
r
y
)や 後 交 通 動 脈
側副血行路の発達は前交通動脈 (
(
P
c
o
m
: posteri
o
rc
ommu
nicatinga
r
t
e
r
y
)の有無などの Willis動脈輪の形態に影響を受け

。 Willis動脈輪を介した側副血行路の中で Acomを介した側副血行路は特に重要と考え
られて い る。しかし、 Acom は 細 く て 短 い 動 脈 で あ り 、 通 常 の mag
netic re
s
onance
angiography(MRA)では A
com血流の有無 を正確に評価することは困難なことが多 い。MR
Aの
任意血管信号の選択的除去が可能な pe
nc
i
l beam型 presaturation (
B
e
amSA
T)pulseを用
I
C
A:i
n
te
rna
lc
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t
ida
rt
e
r
y
)単独の ”!
CA-selectiveMRA" を作成
いて
、 片側内 頚動脈 (
することで、内 頚動脈狭窄にお いて Aco
m血流 を正確に評価できることが過去に報告されて
いる 。そこで、内頚動脈狭窄患者で Aco
m血流がなければ術前脳血流循環動態や術 中内頚動
脈 一時遮断中の灌流が低下し、 頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣の増加につながると い う
仮説を立てた。本研究では BeamSA
Tp
u
ls
eを用 いて Acom血 流 を正確に評価し 、Ac
om血流
の有無と周術期脳血流循環動態や術後の新規梗塞との関係を明らかにすることを目的とし
た。

方法 】
2
01
5年 3月から 2
02
0年 1
2月までに神 戸大学医学部附属病 院で頚部内頚動脈狭窄に対し
て 血 行 再 建 術 が 検 討 さ れ た 患 者 83 例 を 対 象 と し た 。 BeamSAT p
uls
e を用 い て 、

ICA
-sel
e
c
ti
veMRA"を作成し、 Acom血流描出の有無を評価した。片側の ICA
-s
el
e
c
ti
veMRA
で両側 ACAが描出される症例を Acom(

+ 、片側 ACAのみしか描出されな い症例を Acom(-)
と定義した 。 術 前 の 脳 血 流 循 環 動 態 は s
ingl
e photo
n emission co
mput
ed t
omography
C
BF)と脳循環予備能 (
C
V
R
)を評価した。頚動脈血行再建術
(
S
PE
CT
)を用 いて、安静時脳血流 (
a
ri
n
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r
a
te
d spectroscopy(NIR
S
)で測定 した脳酸素飽和度
中の内頚動脈一 時遮断中に ne
(
r
S
0
2
: regio
na
lc
ere
braloxygens
a
tura
ti
o
n
)の変化も評価した。術 翌 日の頭部 MRI拡散
協調像 (
D
W
I
)で患側 ICA領域に新規高信号が出現した症例を DWIh
ig
h(

+ と定義 した。

結果】
Acom(+)群は 6
1例
、 Acom(-)群は 22例であった。術 前 CVRは Acom(-)群で低い傾向にあ
ったが 、統計学的な有意差は認めなかった。 一方で、術前の頚動脈エコーで収縮期最大血
PS
V
: pe
ak s
y
s
t
ol
icvel
o
c
i
t
y
)>200cm/s以上を示した高度狭窄患者に限ると術前
流速度 (
CVRが Acom(+)群で 3
9
.6%、Acom(-)群で 2
5.
2

と Acom(-)群で有意に低下し ていた。ま た

2も Acom
(+)群では 3.
7
%の低下で Acom(+)群では 8.
5
%の低
術中の内頚動脈一時遮断中の rS0
m()群で有意に低下して いた。 D
WIh
ig
h(

+ 群は 2
3例であった。術後 DWI高信号
下と Aco
com血流の存在 (
O
R
, 0.
07;95% CI
, 0.012
-0.45;P=0.0046)、
の予測因子の多変量解析では A
C
A
S
)(
O
R
,1
2.
9
9
;95
%C
I
,2
.09-8
0.
8
6
;P=O
.0060)、年齢 (
OR
,1
.14;95
%
頚動脈ステン ト留置術 (
C
I
,1
.
0
1-1.29;P
=0.
0
3
9
)が有意な予測因子であっ た
。 さらに術前の頚動脈エコーで PSV>
W
I高信号の予測因子は Aco
m血流の存
200cm/s以上を示した高度狭窄患者に限ると 、術後 D

在(
O
R
, 0.08;95%C
I
,0
.
0
1
4
0
.
6
4
;
P
=
O
.0
1
7
)のみであった。

考 察]
illis 動脈輪を介した側副血行路は狭窄が進行した際や頚
内頚動脈狭窄患者において W
動脈血行再建術中の内頚動脈一時遮断中に CBFや CVRを維持するために発達すると考えら
l
l
is動脈輪の解剖学的形
れている 。一方 で Willis動脈輪を介した側副血行路の発達は Wi
態の影轡も受ける 。本研究での高度狭窄患者で術前 CVRが Acom()群で有意に低下してい
S02が Acom(-)群で有意に低下 していたことはこれ
たという結果や内頚動脈一時遮断中の r
らを裏付けている。近年では、頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣は認知機能などの長期的
な予後に関連するとされており 、術後の新規梗塞巣出現リスク評価は重要である。術前 CV
R
低下や内頚動脈一時遮断中の低灌流が頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣と関連しているこ
とは過去に報告されている 。 しかし、 Aco
m血流の有無は通常の MRAで正確に評価すること
mの有無と頚動脈血行再建術後の新規梗塞巣との関連を検討した
は困難なことが多く、 Aco
研究は今までなかった。本研究の結果から Acomを介した側副血行路は頚動脈血行再建術中
の内頚動脈一時遮断中の灌流維持、さらに術後の新規梗塞巣発生において特に重要な役割
を果たしていることが示された。

結論 】
本研究は、内頚動脈狭窄において、 Aco
m血流の存在は周術期脳血流循環動態に影孵を与
CA-selectiveMR
Aで Acom血 流
え、術後 DWI高信号発生に関連していた。 BeamSATによる I
を評価する こ とが周術期管理や治療方針の決定の一助になる可能性について研究したもの
であるが、重要な知見を得たものと評価できる 。よって、本研究者は、博士(医学)の学位を
得る資格があると認める。

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