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大学・研究所にある論文を検索できる 「急性A型大動脈解離術後の自己弁温存大動脈基部置換術の治療成績」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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急性A型大動脈解離術後の自己弁温存大動脈基部置換術の治療成績

Abe, Noriyuki 神戸大学

2021.03.25

概要

目的:日本胸部外科学会の調査によると急性A型大動脈解離の成績は改善しており、早期死亡率は11.3%と報告されている。しかしながら、遠隔期に大動脈弁逆流や大動脈基部拡大、吻合部仮性動脈瘤が問題となる。このような症例において、近年、急性A型大動脈解離術後に大動脈基部置換術を行った症例が散見される。大動脈弁尖の性状が良好な症例においては自己弁温存術式を検討することができる。急性A型大動脈解離術後の大動脈弁逆流や基部拡大、吻合部の仮性動脈瘤症例においても自己弁温存術式を検討することができる。今回、われわれは急性A型大動脈解離術後の大動脈基部再手術症例における自己弁温存術式の治療成績について検討する。

方法:本研究は後ろ向き研究である。2000年1月から2019年3月までに急性A型大動脈解離術後の近位大動脈再手術を行った症例は59例であった。その中で自己弁温存大動脈基部置換術を行った26例を対象とした。初回手術を当院で行った症例は11例であった。同時期に行った再手術の術式はBentall手術(n=9)、大動脈弁置換術(n=11)、STJ plication(n=7)、partial remodeling(n=4)、その他(n=2)であった。初回手術から再手術までの期間は69.3±51.6ヶ月であった。大動脈基部の再手術は近位側吻合部の脆弱な大動脈壁や大動脈基部拡大のために必要とされ、大動脈弁逆流を制御するために大動脈基部を安定化させることを目的とした。手術適応は大動脈基部拡張(50mm以上; n=13)、前回手術の際の近位側吻合部の仮性動脈瘤(n=11)、および大動脈弁閉鎖不全症(n=4)であった。術前の経食道心エコー検査とCT検査にて大動脈弁及び基部の状態を評価した。大動脈弁尖の性状が良好な症例は耐久性があるものと判断し本術式を積極的に施行した。再手術時の平均年齢は54±15歳(25-73動であり、男性22例(84.5%)であった。大動脈弁逆流は経胸壁心エコーにて評価し、None、Trace、Mild、Moderate、Severeに分類された。術前の大動脈弁逆流はNoneが0例(0.0%)、Traceが2例(7.7%)、Mildが13例(50.0%)、Moderateが7例(26.9%)、Severeが4例(3.8%)であった。中等度以上の逆流を認めていた症例は11例(42.3%)であった。大動脈基部の解剖は弁輪径25±2.7(20.4-33.0)mm、バルサルバ洞径44±8.5(30.0-65.0)mm、STJ径34±7.4(22.7-49.5)mmであった。

手術方法:胸骨再正中切開にてアプローチし、前回の人工血管からの動脈送血を行い、送血困難な症例は大腿動脈送血(n=5)を行った。人工心肺を確立した後、前回の人工血管を遮断し、逆行性心筋保護にて心停止が得られた。前回の近位側人工血管吻合部を切断し、大動脈基部を露出、バルサルバ洞を切除した。各交連の高さを計測し、人工血管を選択した。全例においてGelweave Valsalva Ante-Flo Gelatin Impregnated Woven Dacron Graft(Terumo Aortic, Tokyo)を使用した。人工血管の大きさは24mmが5例(19.2%).26mmが12例(46.1%).28mmが8例(30.8%), 30mmが1例(3.8%)であった。1層目をマットレス縫合にて人工血管を逢着し、2層目をcrown shapeに連続縫合として吻合した。弁尖修復が必要な症例においてはCusp repair(n=9)を行った。Central Plicationを4例に行い、Reinforcementを5例に行った。心筋保護液により大動脈基部圧を確認し、大動脈弁逆流の評価を行った。冠動脈入口部を再建し自己心拍を確認した。最終的には術中の経食道心エコーにて大動脈弁逆流の評価を行った。併施手術は弓部大動脈人工血管置換術(n=7)、僧帽弁形成術(n=2)、三尖弁形成術(n=2)、心房中隔欠損孔閉鎖(n=1)であった。人工心肺時間は277±57(183-388)分、心筋虚血時間198±44(137-299)分であった。

結果:周術期死亡は認めなかった。入院期間は21±6(15-40)日間であり、ICU滞在期間は3±1(2-5)日間であった。追跡期間は49±47ヶ月(4-161ヶ月)であった。遠隔期死亡は3例であり、術後8か月、2.8年、5.8年であった。死亡原因は下行大動脈瘤破裂、老衰、敗血症であった。3年、5年、および10年生存率はそれぞれ88.9%±7.4%、88.9%±7.4%、および77.8%±12.2%であった。追跡期間は40±45ヶ月(0-149ヶ月)であった。3、5、および10年間での中等度以上の大動脈弁逆流の再発6ない症例はそれぞれ86.5%±8.9%、86.5%±8.9%、および86.5%±8.9%であった。大動脈弁逆流はNoneが6例(23.0%)、Traceが7例(26.9%)、Mildが11例(42.3%)、Moderateが1例(3.8%)、Severeが1例(3.8%)であった。大動脈弁閉鎖不全症の再発症例は自己弁温存大動脈基部置換術の15か月後に大動脈弁置換術を行った。術後の経胸壁心エコー検査にて大動脈弁機能の評価を行った。術後の有効弁口面積の平均は2.7±0.4cm2であった。すべての症例において2.0cm2より大きい有効弁口面積を示し、最高圧較差は6.7±3.6mmHgおよび平均圧較差は3.0±1.6mmHgであった。吻合部仮性動脈瘤においてGRF glue使用症例(n=4)で大動脈壁の壊死所見を認めた。また、Bioglue使用症例(n=5)においては残存接着剤の遺物反応による炎症性変化と中膜の裂傷に結晶が認められた。

結論:急性A型大動脈解離術後の自己弁温存大動脈基部置換術の中期成績は満足のいく結果であった。また、術後の中期成績における大動脈弁機能は良好であった。

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