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大学・研究所にある論文を検索できる 「うつ病リワークプログラム利用者の休職期間と電子カルテに記載された感情語との関係」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

うつ病リワークプログラム利用者の休職期間と電子カルテに記載された感情語との関係

沓名, 一朗 名古屋大学

2023.05.17

概要

学位報告4

別紙4
報告番号



















論文題目
うつ病リワークプログラム利用者の休職期間と電子カルテに記載された
感情語との関係


名 沓名 一朗

論 文 内 容 の 要 旨
【背景】日本では 2012 年以降、メンタルヘルスに関連する労働災害の報告件数が増加
し続けている。また、労働者 1,000 人に 4 人がメンタルヘルス不調により 1 カ月以上の
休職を余儀なくされている。そこで、産業精神保健分野では、メンタルヘルスの悪化に伴
う休職後の職場復帰を促進するため、リワークプログラムを提供している。作業療法士は、
この分野でも重要な役割を担っている。一方で、再休職率の高さや復職率の低さなど、復
職支援にはいくつかの課題が残されている。さらに、リワークプログラムおいて、客観的
な評価指標が乏しいことも深刻な課題である。そこで本研究では、プログラム利用者に関
するテキストデータを大量に含む電子カルテに着目した。
【目的】電子カルテに記載されたテキストデータを、自然言語処理によって数値化し、
メンタルヘルス不調による休職中にリワークプログラムを利用した者の休職期間と感情
語の使用との関係を明らかにすること。
【方法】対象者は、メンタルクリニック 1 施設の利用者である。包含基準は、うつ病ま
たは適応障害による休職中に、1 か月以上リワークプログラムを利用し、最後のプログラ
ム終了後 1 か月以内に職場復帰した者とした。また除外基準は、他の精神障害または発
達障害の診断を有する者、休職中に離職または転職した者とした。使用するデータとして、
基本情報は、年齢、性別、診断名、併存疾患、教育歴、職場関連情報、休職回数、抑うつ
の重症度(BDI; Beck Depression Inventory-II)
、プログラム利用期間、休職期間を取得
した。テキストデータは、電子カルテに含まれるすべてのテキストデータを取得した。テ
キストはフリーフォーマットであったため、問題志向型診療録の一つである SOAP に分
類し、Subjective(以下、S)と Objective, Assessment および Plan(以下、OAP)に

学位関係

分類した。データ解析は、テキストを数値化するための自然言語処理と、その数値
と休職期間との関係を明らかにするための統計解析の 2 つに分けられる。自然言語
処理ではまず、テキストの正規化およびトークン化を実施した。テキストの正規化
とは、テキストのクリーニングを行うことである。日本語は、同じ単語に体してい
くつかの異なる表記体系が存在する。そのため、これらをいくつかのルールに基づ
いて統一した。トークン化は、テキストをトークンと呼ばれる小さなチャンクに分
割することである。この処理は RMeCab を用いて行った。その後、感情スコアの
付与を実施した。感情スコアは、単語感情極性対応表と日本語感情表現辞書の 2 つ
の辞書を使用し、各単語に対してそれぞれポジティブスコアおよび 7 つの感情スコ
アスコア(悲哀、不安、怒り、嫌悪、信頼、驚き、喜び)を割り当てた。統計解析
では、線形混合モデルによる重回帰分析を実施した。従属変数は休職期間、独立変
数はポジティブスコアまたは 7 つの感情スコアとし、切片に対象者の所属する企業
によるランダム効果を仮定した。有意水準は全て 0.05 とした。
【結果】対象者は 42 名であった。プログラム開始時の平均 BDI は 18.8(SD = 7.6)
点で、プログラム終了時の平均 BDI は 8.0(SD = 6.7)点であり、軽度の抑うつ状
態であった。プログラム利用期間は 167.2(SD = 89.2)日、休職期間は 393.7(SD
= 205.8)日であった。対象者 1 人あたりの電子カルテの記載回数は、172.8(SD =
96.6)回、単語数は 11712.9(SD = 6435.9)語であった。重回帰分析の結果、S の
ポジティブスコアは、休職期間に統計的に有意な影響を示さなかった(β = 0.22、p
= 0.163)。一方、OAP のポジティブスコアは、休職期間に統計的に有意な中程度の
負の影響を示した(β = -0.42, p = 0.005)。S の 7 つの感情スコアは、休職期間に統
計的に有意な影響を示さなかった。OAP の 7 つの感情スコアのうち、悲哀スコアは
統計的に有意な中程度の負の影響を示し(β = -0.60, p = 0.001)、怒りスコアは統計
的に有意な中程度の正の影響を示した(β = 0.52, p = 0.002)。
【考察】作業療法士を含めた専門職者の観察記録から算出された感情スコアと休職
期間に有意な関係が見られた。先行研究から、悲哀の感情は過度な自己防衛を低下
させることや刺激に対する細部への注意を促す可能性があることが報告されてい
る。また怒りの感情は、自尊心を守るための敵意として出現し、これが人的資源の
活用を妨げることが報告されている。これらは、本研究の結果を裏付けていると考
えられる。しかし、休職の理由や対象者の抑うつ状態は様々である。したがって、
この結果が再現されるかどうかを確認するために、この方法論を他の環境でも試み
る必要がある。また、臨床の場での評価や予測ツールとしての有用性を探るため、
さらなる研究が必要である。
【結論】本結果から、リワークプログラムにおける電子カルテを計量化し、評価尺
度として応用することの可能性が示唆された。

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